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アオイ達の作戦

 試合の開始とともに、恐竜ゴーレムから放たれた強力なブレス攻撃。開幕でほとんどの挑戦者を倒すべくはなったその攻撃が、挑戦者達を襲う。


「カリン殿! エリカ!」

「ええ」

「はい!」


 アオイ、カリン、エリカの3人は、グラジオラス、シクラメン、ローズのそれぞれの前に素早く移動して、防御魔法を展開する。3人の狙いはもちろん、自身とともに、グラシクローの3人を守るためだ。協力こそ得られなかったものの、グラシクローの3人の強力な魔力は、間違いなくこの戦いのカギを握る存在だ。ここで失うわけにはいかなかった。


「くう、なんっつう威力だよ」

「お手伝いします」


 一方グラジオラスは、恐竜ゴーレムのブレスを見て、すでに諦めモードに入っていた。息を吸い込むだけという、それだけの動作で放たれた高威力のブレス。魔力を十分に溜めてからならまだしも、こんな短時間では、グラジオラスに防ぐ手立てがなかったからだ。そして、あきらめ、石像になるのってどんな感じなのだろうと思っていたグラジオラスの目がとらえたのは、必死に自身を守るアオイと、ナノハナの姿だった。


「アオイさん? ナノハナさん? なぜ、ですの?」

「うるせえ黙ってろ!」

「ですが、私をかばったところで、何の意味があるんですの? 私には、こんな化け物と戦う力なんてないですわ」

「グラジオラスさん。確かに以前の貴方はそうだったかもしれません。ですが、いまの貴方の力は、こうしたランク8のモンスターとの戦いに勝つには必須なのです。理解してください」

「ですが、私は・・・・・・」

「素早く強大な力を使う訓練は、これから致しましょうね。ですが今は、今出来る範囲でやりましょう」


 アオイが、自身とグラジオラスを守るように、半球状の防御魔法を展開し、それをナノハナが強化する。だが、そんな2人の防御魔法をもってしても、恐竜ゴーレムのブレスを完全に止めるのは不可能だったようだ。アオイのはった防御魔法には、あっさりとひびが入り、すでにいつ砕けてもおかしくない状態になっていた。


「団長、このままじゃもたねえ!」

「アオイさん、後のことは任せますね」

「いや、俺より団長が残ったほうが」


 アオイの提案に、ナノハナは黙って首を振る。


「ああ、わかったぜ」


 アオイの返事を満足そうに聞くと、ナノハナは力を振り絞って、全力でアオイの防御魔法を強化する。アオイの防御魔法のひび割れは止まり、それどころか徐々に修復されていく。だが、強引に力を絞り出したナノハナは急速に弱りはじめた。


「グラジオラスさん、ハピさんの農業のお手伝いの時には、ハピさんをかばうために、3人でこのゴーレムよりも強い相手に立ち向かったそうですね」

「それはそうですが・・・・・・、私達は結局なにも出来ませんでした。あれもハピさんが自力で対処しただけです。私達は・・・・・・」

「あなた達に実績がないのは事実です。その結果、あなた達が自信を失ってしまったのも。ですがそれは、上司である私の責任でもあります。本当に申し訳ございません。ですがどうか、今度は私達妖精の国のために、力を貸してくれませんか? あなた方には、それを成し遂げられる力も、勇気も、あるはずなのです」

「私は・・・・・・」


 グラジオラスも思うところがあるのだろう、だが、それ以上は言葉にならなかったようだ。そして、ナノハナは、ついに飛ぶこともできなくなるほど衰弱し、落下、ブレスに飲み込まれた。


「ナノハナさん・・・・・・」

「心配すんな。一定以上のダメージを受けると、石化して無敵になるってぷうが言ってたろ? ま、仮にそんな条件のない本番だったとしても、あいつはこうしただろうがな」


 すると、ブレスの勢いが急速に弱まり、消滅した。


「ふう、なんとか防ぎ切ったか。カリン殿とエリカは無事かな~」


 アオイがカリンとエリカを探すと、二人はすぐに発見できた。エリカはアオイの右側で、ローズと一緒に空を飛んでいた。そして、カリンはシクラメンと地面にいた。他の参加者たちがほとんど石化している中、どうやらみんな無事だったようだ。それだけじゃない、その他にも運がよかったのか、防御魔法によほどたけていたのか、ランク6以下のメンバーの生き残りもぽつぽついた。


「カリン殿、エリカ、無事だな」

「ええ。ですが、私一人ではとても防ぎきれませんでした。多くのランク6以下のハンター達が、少しでも役に立てればと、私達の壁になってくれましたから」

「私もです。妖精軍のゆき将軍がカバーに入ってくれていなかったら、やられていたかと思います」

「そうか、俺もだ。ナノハナ団長に助けられた」


 3人が無事を確かめ合っていると、遠くではわんがお~の面々が恐竜ゴーレムに攻撃を仕掛けていた。


『ピヨ、そっちは無事か?』

『ああ、あたしは予定通り上空にいたからね。影響はなかったよ。それより、そっちは大丈夫だったかい? 凄まじい攻撃だったけど』

『無傷とは言えないが、予定通りやるぞ』

『わかったよ』


 アオイは上空にいたピヨに通信魔法で連絡を取る。ピヨも無事だったようだ。


「ふう、被害は甚大だったが、なんとか恐竜ゴーレムを倒せるだけの戦力は残ってくれたようだな」

「そうですね。あとは私達が上手く導くことが出来ればいいのですが」


 そして、恐竜ゴーレムのブレスをものともせずに突撃をしていたわんがお~のメンバーは、恐竜ゴーレムとの本格的な戦いに突入しようとしていた。


「エリカ、頼むぞ」

「はい!」

『ピヨ、いきますよ』

『ああ、任せな』


 今からピヨとエリカがやることこそ、アオイ達の考えた勝ち筋のその1だ。上空を飛ぶピヨの視界の情報を、エリカが支援魔法で戦場の味方へと共有する。それにより、前線で戦うが故に視野の狭くなりがちなわんがお~のメンバーへ、常に上空視点での情報を提供でき、戦いやすくなるというものだ。単純な強化等の補助魔法では、近くで戦うことの出来るわんこ大臣に任せたほうがいいが、この手の補助魔法は後方にいるエリカとピヨのほうが都合がいい。


 わんがお~のメンバーと打ち合わせはしていないが、大ベテラン揃いのわんがお~のメンバーに、この程度の作戦なら打ち合わせなど不要だろう。実際、エリカのもとにはわんこ大臣から通信魔法にてお礼の一報が届いていた。


 一方、グラシクローの3人も、3人で話し合っていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 いや、アイコンタクトのみの会話? だった。何を通じ合っているのかは、その表情でしか伺えしれない。悲しそうな顔をしたり、あきらめたような顔をしたりしていたが、どっちかというと負の表情の顔を3人で繰り返していた。そして、しばらく百面相ごっこが続いたが、ついに3人の顔が、なにかを決心したような顔になった。


「アオイさん」

「アオイちゃん」

「アオイ」


「どうした?」


「もう、手遅れかもしれませんが、私達3人は、みなさんに協力いたしますわ。何をしたらいいんですの?」


 どうやら、3人ともやる気になってくれたようだ。


「んったく、やっとやる気になったか、手間かけさせてくれるぜ」


「申し訳ございません」

「うん、ごめんね」

「悪かったな」


「いやいや、普通になれや普通に! こういうピンチの時ってのはさ、気張っても気負ってもダメなんだ。いろいろ思うところはあるだろうが、そういうの全部分かったうえで、無理して平常心で振舞うんだよ! お前ら、ハピのピンチを救おうとしたとき、そんな表情だったか?」


「いえ、違いますわね」

「うん、そうだね!」

「ああ、そうだな!」


「わかりましたわ。では、何をすればいいのか、さっさとおっしゃりなさい。せっかく協力してあげると申してあげてるんですよ」

「そうそう、このあたしが手伝ってあげるって言ってるんだから、感謝してよね~」

「そうだぞ。俺様の気が変わらないうちに、さっさと話しな」


「んったく、ほんとに世話焼けるぜ。じゃあ言うぜ。今チームわんがお~の連中が接近戦を仕掛けてる。とはいえ、倒し切るのは難しいだろう。俺達はぷうと一緒に修行してたからわかるんだが、あのゴーレムはわんがお~の連中ですら、倒し切れる代物じゃねえ。それどころか、時間がたてばダメージがどんどん溜まってくのはわんがおの連中のほうだ。そこで、お前らの出番ってわけだ。わんがおの連中が倒れる前に、お前らの魔法で倒す。特にグラジオラス、お前の大火力魔法が最大の鍵だ。目一杯全力の一撃を頼むぜ」


「わかりましたわ。もう魔力をため始めていいかしら?」

「ああ、構わねえ。だが、魔力の圧縮に関しては俺も手伝える。だから、俺と一緒に撃つぜ」

「わかりましたわ。せいぜい私の足を引っ張らないようにしてくださいね」


「あたしは何したらいいの?」

「シクラメンはゴーレム作って突っ込め。んで、こっちがぶっぱなす時に合図するから、その時は無理やりにでも動きを止めてくれ!」

「おっけ~、まっかせといて!」


「俺様にはなにさせようってんだ?」

「ローズは削りと目くらましだ。とにかくお前のお得意の連射魔法で撃ちまくれ。敵の視界を奪うくらいの密度で頼むぜ」

「しゃ~ね~な。やってやるぜ! わんがおの連中との連携はどうする?」

「気にしてられっかよ。視界情報は提供してやってるんだ。あとは勝手によけるだろ。だから、気にせず撃ちまくれ」

「単純でいいな。わかったぜ」


「うおっしゃあ、じゃあお前ら、作戦開始だ! あ、カリン殿と、生き残ってるくたばりぞこないどもは、いざというときの防御を頼むぜ」

「承知!」

「「「「「おう!」」」」」



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