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速さの追求

 お昼ご飯を食べたぷうとアオイとカリンとピヨとエリカは、しばしリラックスモードだ。午前中はカリンのせいで必要以上に急ぎすぎてしまった。なので、魔力回復のためにも、休養は必須だ。消化吸収を促進する魔法を使いながら、まったりする。


「予定よりだいぶ早いですし、しばらくのんびりしましょう」

「「「「は~い」」」」

「ふう~、いっぱい食べたね~」

「おう、もう腹いっぱいだぜ!」

「ああ、あたしももう動けないよ」

「もう、ピヨは食べすぎですよ」

「でもよ、あんな美味いもんはじめて食ったし、おまけにあの肉が持つ魔力量。あれは食えば食うだけ強くなる、魅惑の食材だぜ」

「それは、そうですが、淑女の嗜みというものもあります」

「ふ、あんただってお上品ぶっていたけど、いつもりがっついてたじゃない。長い付き合いだからわかるよ」

「も~!」


 エリカはピヨとの会話を切り上げて、アオイへ質問する。


「アオイ様、あの技はなんという技なのですか?」

「羽根の形状を変える魔法か?」

「はい、そうです」


 アオイの羽根はいつの間にか元通りになっていた。永続的に変わるのではなく、魔法を使っているときだけの一時的な変化のようである。だがこの技、同じ妖精族としては、かなり気になる技だったようだ。


「俺も人から教えてもらっただけで、名前は知らないんだよな。しかも、教えてもらった当時は、こんな羽の形かえるだけなのに、難易度だけは高い技、何の役にたつんだよって、まじめに教わりもしなかったしな」

「そうなのですね。ずうずうしいお願いで申し訳ないのですが、私に教えていただくことは出来ないでしょうか?」

「ああ、もちろんいいぜ。いろいろ学ぶための特訓ツアーだからな。俺自身も、もっと使いこなせるようになりたいしな」

「ありがとうございます!」

「ただ俺も、この技がどんな理屈で動いてるのか、よくわかんないんだよな。ぷうやカリン殿はこの技どう思う?」


 そういってアオイは羽をオオタカの羽根に変えてみせる。


「そうですね。妖精族の羽については、よくわかっていないことが多いですが、命の魔法によって出来ていると言われていますよね。ですので、その関係だと思います。念のためお聞きしますが、元の羽は壊されると、多少痛みを感じますよね?」

「ああ、実際の体が傷ついたときほどじゃないけど、ちょっとは痛いと思うな」

「では、変化させた羽根は痛みを感じそうですか?」

「ああ、この感じ、たぶん痛みは感じそうだな」

「でしたら、変化後の羽根も命の属性で出来ているようですね。私のつたがそうなのですが、他の属性技というのは、破壊されても痛みを感じることはありません。弱くとも痛みを感じるのは、命の属性だけといわれておりますので。間違いないでしょう」

「そうか、だが、命の魔法か、あんまりよくわかんない魔法なんだよな」

「そうですね、食事や呼吸などで取り込んだ自然界の魔力を、個人の魔力に変換したりといった、生命維持に関わる分野から、身体強化魔法のようなものまで、かなり幅の広い魔法ですが、解明されていない部分も多い魔法ですからね」

「そうだ。この魔法って、人から教えてもらったって言ってたけど、どんな人に教わったの?」

「ああ、ぷうも知ってるやつだぜ。ナノハナさんだからな。俺に教えてくれたのは」

「なるほど、あの回復魔法が得意な妖精さんね。本人に聞くのが一番だと思うけど、いないもんね。ところで、回復魔法が得意な妖精さんは使いこなしてたんだよね?」

「ああ、けっこう自在に羽の形や大きさを変えてたな」

「他にも使いこなしてる人はいた?」

「ん~、俺が知る限り居ないな。例の3人組も、俺と一緒に教わってたんだが、俺と一緒で上手く出来てなかったからな」

「なるほど。あの妖精さんだけっていうなら、キーは回復魔法かもだね。回復魔法の中には、命の属性を強化して回復するタイプの魔法があったから。それを使えば、感覚がつかみやすくなるかも」

「そうですね、それはいい考えかもですね」

「なるほど、確かに最近の俺は昔より今のが身体強化魔法が上手くなってるからな。命の属性の魔法の熟練度っていみじゃあ、確かに言えてるな」

「じゃあ、いまから命の属性を強化させて回復させるタイプの回復魔法をかけるから、その状態で、羽の形を変えれないか、試してみよ」

「おっしゃ、やってやるぜ!」

「はい、がんばります」

「ピヨは2人がイメージしやすいように、羽根を広げてそこにいてあげて」

「ああ、お安い御用だ」


 ぷうは回復魔法を発動する。やさしい光がアオイとエリカを包み込む。アオイとエリカは目の前で羽根を広げているピヨを真剣に見つめる。すると、エリカの羽が淡い光に包まれ始めた。そして、光がはじけると、そこにはオオタカの羽根を手に入れたエリカの姿があった。アオイも1人で変化させるときよりもはるかに素早く変化させることが出来ていた。さらに、羽根の大きさまで自在に変えられるようになるなど、回復魔法の影響下では、この技の使いやすさは大幅に増すようだ。とはいえ、大きくしすぎると、バランス等に問題を抱えるようになるはずなので、最適なサイズに出来れば十分であろうが。


「すごいです。簡単に成功しました。ありがとうございます」

「ああ、こりゃすごいな。やりやすさが段違いだった」

「どういたしまして」

「エリカ、おめでとう!」

「ピヨもありがとう」

「これでアオイとエリカがスピードアップ間違い無しだね」

「ええ、私も負けていられないですからね。なんとか移動速度上昇手段を考えなければいけませんね」

「あのつたの鎧みたいなのはもうやめちゃうの?」

「そうですね。あれ以上の大型化は魔力消費が激しいですし、純粋に速度面を考えても重くなりすぎてメリットがあまりありません。かといって、今のままでは実用性が低いですからね。元はいざという時の、接近戦用の技として考えたのですが、結局私は、接近戦は立ち回りで避けて、遠距離のみで戦ったほうがいいという結論になり、めったに使わなくなりましたね」

「なるほど~、でもね、変な技を考えるより、その技を極めたほうがいいと思うよ」

「そうでしょうか?」

「じゃあ、私が似たような技を使ってみるね。それを見てからでも遅くないでしょ?」

「ええ、そうですね」

「あとピヨも呼ぼう。ピヨの技も、本質的には同じような技だから」

「ん? なにか呼んだかい?」

「あのね、ピヨが最後に使った炎に包まれる技なんだけど、あれって必殺技?」

「ああ、そうだよ。あたしの取っておきってやつさ。ただ、体温の上昇やら魔力消費の激しさの関係で、ここぞって時にしか使えないんだけどね」

「カリンのつたの鎧と、ピヨの火の鳥は、属性こそ違えど似たような技だからね。一緒に練習しよう」

「ほほう、そうなんですか?」

「うん、あとはボス牛の雷を纏う技も似たような技だよね」

「あ~、あの最後の攻撃か、あたしとしては、けっして避けれない攻撃じゃないと思ってたんだけどね、想像以上にボス牛が速かったんだよね。怒ったからって、あそこまで速度があがるとは、ちょっと想定外だったよ」

「それはちょっと違うよ。あのボス牛の雷を纏う技は、ピヨの炎の鳥と同じような技なの。つまり、ピヨが炎の鳥になって速さがますように」

「まさか、雷を纏う事で速度があがってたっていうのかい?」

「うん、そうだよ。ボス牛のあの技は、体に纏った雷の力を利用して、筋肉を通常より強い力で動かして、普段以上の力を得られるっていう技だったよ。近くにいると見づらかったかもしれないけど、遠くから見てると、すごいよくわかるよ。アオイと戦ってたときなんか、お尻の筋肉とかが、通常じゃありえないくらいびっくんびっくんしてたもん」

「お、なんだ。ボス牛の話か?」

「うん、カリンとエリカの技が、ボス牛の雷を纏った技に似てるって話をしてたの」

「ほう、そういうもんなのか?」

「言われてみればそうですね。アオイ様がボス牛と戦っているのを見学させていただきましたが、確かに魔法をその身に纏うという点では、ピヨの火の鳥と同類の技のようにも感じました。もっとも、出力は違いすぎましたが」

「うん、そうなの。だから、いまからカリンとピヨのつたの鎧と、火の鳥の練習をしようと思ってね」

「へえ、面白そうだな。俺も見てていいか?」

「私も見学させて下さい」

「ううん、2人も参加して」

「おう」

「はい!」


 こうして、なんだかんだ全員参加で魔法を纏う系の技の練習をすることになった。


「じゃあまずは、ボス牛の技ね」


 そう言うとぷうは、カリン達4人にボス牛の使っていたような、電気の力で筋肉の動きを補強する魔法をかける。ぷうとぴぴはハピとは違い、実戦で使えるような強化魔法は持っていないが、お遊び程度のレベルでならなんとかなる。


 みんなはジャンプしたり走ったり、飛んだりと魔法の効果を確かめる。


「面白いなこれ、最大値があがったっていうより、反応速度がすっげえ上がってるかも。ちょっとぴりぴりするが、まあ許容範囲内だしな」

「ええ、普段よりも動きが速いですね。ただ、必要以上に動く感じがしますね」

「そこはごめんね。わたし、他者にかける強化魔法は苦手なんだ」

「いえ、技を体験するという意味では十分です。ありがとうございます」

「これはすごいですね。この技を覚えるだけでも、1段階ステップアップできる気がします」

「ああ、すごいね。ちょっと羽ばたいただけで、一気に最高スピードに乗れるよ。それに、反応速度だけじゃなくて、最大パワーもけっこうあがってるんじゃないかい?」

「うん、反応速度も最大パワーも上がってるはずだよ。特にピヨはもともとの筋力が強い種族だからね。他の3人より、効果が実感しやすいかも。細かいことを言えば、反応速度に関しては、普通は繰り返しの練習で早く筋肉が動くように訓練するけど、そういうのを無視していきなり最速で動くようにしたからね。それと、最大パワーは、いわゆる体のリミッターを無視して魔法で筋肉が動くから、鍛冶場の馬鹿力っていうやつを、強制的に引きだせるからね」

「これはすごいね。あたし、気に入ったかも」

「他にも応用わざとして、特定の動作を最大効率で出来るようにしたりもできるよ。例えば投擲動作だったら、足、腰、腕という連続動作を、電気魔法の力で最大効率で動くようにプログラムするとかね」

「なるほどね、そういう使い方も、面白そうだね」

「それじゃあ、次の技にいってみよう」

「「おう!」」

「はい!」

「お願いします」


 雷を纏うこの技は、ピヨが気に入ったようだ。そして次は、カリンの技である植物魔法だ。ぷうが強化魔法を使うと、みんなの体をつるが覆い尽くす。先ほどと同じように、ジャンプしたり走ったり、飛んだりと魔法の効果を確かめる。


「うん、これはこれで面白いな。さっきの電気は筋肉が無理やり動く感じだったが、これは俺の動きをつるの鎧がサポートしてくれるみたいなんだな」

「私にはこちらのほうがパワーが出るように感じますね。これは、電気の場合、妖精族の筋肉が弱いからでしょうか?」

「ああ、そうだろうな。周囲のつるの持ってる力が、明らかに俺らのパワーより上だな」

「あたしにはちょっと使いにくいかな。あたしは電気でも十分なパワーがでるし、植物だと、つるがちょっと邪魔になるね」

「これは、私のつるの鎧そのままですよね?」

「ふっふっふ~、ここからが本番だよ!」

「まずは、アオイからね。ううううううううう、うにゃ~!!」


 ぷうは気合をこめて魔法を発動させる。すると、アオイの体のつるが更に変化する。いままでのウッドゴーレムっぽい姿から一転。木で出来たケンタウロスのような姿になる。


「うお! なんじゃこりゃ、俺が馬みたいになっちまったぜ」

「は~、けったいな姿になっちゃってるな」

「これはまるで、別人ですね」

「これは・・・・・・」


 アオイは飛ぶのではなく、地面を走り回る。そんなアオイの姿を見て、カリンはなにやら悩んでいるようだ。


(なにかカリンのいいアイデアの元になってくれればいいんだけどな)

「すげえな、俺の脚で走るより、何倍も速く走れるぜ!」

「確かにすごい速いです。こんなに速く走れる妖精族は見たことありません」

「う~ん、確かに速いし面白そうだけど、あたしは遠慮しとこうかな」

「・・・・・・」


 カリンは無言で、アオイのマネをして、ケンタウロスエルフになる。流石はカリンだ。元の魔法技術がすばらしいのだろう。あっさりと再現した。そしてその辺をぐるっと一周して戻ってくると、ぷうに質問した。


「ぷうさん、つるではなく、木で作った理由を教えていただけますか?」

「うん。つるだと強度が足りないと思って。つるは柔らかくて操作しやすいし、本体の動きを少しサポートするっていう意味では便利だけど、強度がないからパワーは出しにくいでしょ。頑丈な木だったら、動かすのに力が必要だし、その分小回りも効かなくなるけど、パワーは出しやすいよ。馬の形にしたのは、やっぱり2足歩行よりも4足歩行のほうが、構造的にパワーを出しやすいからね」

「ありがとうございます。ふう、いけませんね。年のせいでしょうか、考えの柔軟性がなくなっていますね。自らの強化なのだから、自らの動作の邪魔になってはいけないとばかり考えていましたよ。この馬の足で距離を制する事が出来れば、へたな接近戦の想定はますます不要になりますね」

「でもよ、本場である魔族のケンタウロスなんかと比べると、遅いんじゃないのか?」

「その通りです。いくら植物魔法を駆使しても、元々その体を持って生まれた馬やケンタウロスには勝てないでしょう。ですが、問題はそこではないのです。いままでエルフが森の住人といわれていた理由は、森の中でないと、モンスターから距離を取れなかったためです。特にウッドエルフは、弓と魔法のおかげで遠距離戦を得意としておりましたが、非力なために接近戦は苦手でした。そのため、どうしても距離を取りながら戦う必要がありましたが、森の中以外では、けっして足の速くないエルフでは、距離を取り続けることが難しかったのです」

「なるほど、平地とかでは戦えないってことか、確かに不便だな」

「平地対策が無いわけではないのです。いままでですと、筋力に優れたハイエルフや、ウッドゴーレムの魔法に長けたエルフに、前衛をお願いする形で戦ってきました。ですが、この馬の体の速度があれば、森以外での戦い方が広がるのは間違いないでしょう」

「速さを使って一方的に遠距離から攻撃するってわけか、けっこうつよそうじゃん」

「あたしからすれば、集団でそこそこの速さで空を移動して、空から圧倒的な魔力量で一方的に魔法攻撃をして、飽きたら撤収する。あんたら妖精族の軍隊のほうがよっぽどずるい気がするけどな。平地も森も山も、あんたら一切関係ないじゃん」

「ええ、本当ですね」

「「あはは・・・・・・」」


 アオイとエリカはお互いの顔を見て、苦笑いするのだった。



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