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自信家な彼

1.お前、彼氏いないだろ?


住む世界の違う人。きっと、同じ場所にいたってすれ違ったって、見える景色も吸っている空気さえも違うんだろう。そう思えるような空気感を持つ『彼』に高校生活の初日に目を奪われてしまったのだ。

「先輩、おおおはようございますっ!」

「……あぁ、おはよう」

朝一番、校門前。学年も違えば部活も違う、委員会も何もかも接点のない私が唯一彼に近づけるこの一瞬を逃してたまるか!というやつです。登校時間に待ちぶせとかキモい?いいのだ。なんとでも言ってくれたまえ。第一、この瞬間だって私が独り占めできるようなものじゃないのだから、多少キモかろうが問題ない。ないったらないのだ!

「キャー!生徒会長おはようございますぅ」

「今日も素敵です!あ、教室までご一緒させてください!」

「もー今日は私と一緒に行くんだから。そうでしょ?」

くぅっ……!押すな押すなこの女豹共め!この時間帯だけ正門前の人口密度が激増する原因は今ここにあるこの人のせいだ。少女漫画も真っ青な光景が日常なのだから私の存在なんて宇宙の塵と同じ。だから多少行動があれだろうが、そんなことは一々気にするほうが負けなのだ。


それにしても、今日は人がやけに多、い……っ?


どん、と背中に衝撃を受けたと思った瞬間、ぐらりと体が傾いだ。あ、と思う暇もなくコンクリートの地面に膝が擦れるずりっとした嫌な感覚とともに突っ伏した。


「おい、立てるか」


え……?


地面と仲良しになっていたところに、見慣れた制服のスラックスがしゃがみこむのが見えた。顔を上げればそこには憧れのその人が。


「はいぃぃぃぃ……!!!!立て、立てますっ!余裕です!」


もしかしたらこの瞬間の私の動きは、野生の地を駆ける動物とタイマン張れるぐらいの素早さだったかもしれない。それぐらい勢い良く跳ね起きて思わず後ずさった。顔が火照る。やばい。やばい。まじでやばい!


「お前さ、彼氏いないだろ」

「…………は?」

「下着見えてっぞ」

「は!?」


咄嗟にスカートの裾を抑えて小さくなった私を、ヤンキー座りのまま上目遣いに見上げていた彼がニヤリと口角を上げた。その口元が小さく動く。




『ア◯パンマン』




そうだ、死のう。




今日に限って、なぜか友人からネタでもらったキャラクターパンツ履いてきた自分を考えうる限りの呪詛で呪いながら、某陸上世界記録保持者も真っ青なフォームで、私は逃げ出した。







2.俺を惚れさせてみな


3.見惚れてんじゃねえよ


4.俺を選ぶ、違うか?


5.正直に、好きって言えよ


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