ここが新しい職場!?
登場人物紹介
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細野孝太郎
本作の主人公。
池巣自動車営業所に入社した新人路線バス運転士。
真面目で責任感が強く、何事にも全力で向き合う性格。
しかし新人時代は、失敗を恐れるあまり何でも自分一人で抱え込むところがあった。
初めての一人乗務の日。
出庫前点検で車両のタイヤ異常を発見し、予定時間より遅れることを恐れながらも報告する。
その経験から、
「時間よりも安全が大切」
という運転士として最も大切なことを学んだ。
その後、事故対応、台風運行、雪の日の運行など様々な経験を積み、一人前の運転士へ成長していく。
5年後には後輩から頼られる存在となり、かつて自分が受け取った教えを次の世代へ伝えている。
恋愛では、西園寺美月と藤崎彩という二人の女性から想いを寄せられる。
しかし、その答えはあえて描かれず、読者に委ねられている。
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山下恒一
細野の同期であり、親友。
明るく、お調子者な一面を持つ営業所のムードメーカー。
冗談を言って周囲を笑わせるが、実は誰よりも仲間を見ている。
細野が悩んだ時には、さりげなく声を掛け支える存在。
新人時代から苦楽を共にし、細野にとってかけがえのない同期。
既婚者。
5年後も変わらない明るさで営業所を盛り上げている。
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大森恒一
細野の同期。
冷静沈着で、時間管理や確認作業を得意とする。
感情に流されず、常に状況を分析するタイプ。
一見厳しく見えるが、仲間への思いやりは人一倍強い。
山下の暴走を止めるツッコミ役でもある。
既婚者。
営業所の安定した存在として、仲間を支えている。
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川村健吾
細野の同期。
大柄な体格を持つが、性格は非常に優しい。
学生時代から続けている柔道が特技。
東都交通局の柔道大会では池巣営業所代表として出場し、ベスト16まで勝ち上がる。
普段は穏やかだが、大切なもののためには強い意志を見せる。
恋愛では新人営業担当の桜井と出会い、交際へ発展する。
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池巣自動車営業所
金城恒一
池巣自動車営業所を代表するベテラン運転士。
長年無事故無違反を続け、国土交通大臣賞を受賞した経験を持つ。
普段は冗談も言う気さくな人物。
しかし、安全に関わることだけは一切妥協しない。
細野たちの最大の師匠。
新人教育では、
「運転士の仕事は、バスを動かすことじゃない。人を安全に届けることだ」
という信念を伝える。
後に新新人5人の教育も担当する。
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寺島主任
細野たちを育てた指導役。
厳しさの中にも温かさを持つ人物。
新人時代の細野を見守り、運転士としての心構えを教えた。
タイヤ異常を発見した細野へ、
「お客様を危険から守ったことが、お前の最初の仕事だ」
と伝えた人物。
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矢野誠
事故担当、安全管理担当。
事故が起きた時の対応だけでなく、再発防止にも力を入れている。
運転士へ安全意識を伝える重要人物。
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所長
池巣自動車営業所をまとめる責任者。
厳格ながら、部下への信頼は厚い。
細野たちへ、
「時間は取り戻せても、事故は取り戻せない」
という言葉を伝え、安全運行への意識を植え付けた。
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女性キャラクター
西園寺美月
営業担当として池巣営業所と関わる女性。
仕事ができ、落ち着いた性格。
熱海旅行などを通して、細野たち同期4人との距離を縮めていく。
細野の優しさや成長を近くで見てきた人物。
23話で細野へ想いを伝える。
その後、本社へ異動。
ただし月に一度は池巣営業所へ顔を出し、仲間との繋がりを大切にしている。
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藤崎彩
池巣自動車営業所の職員。
営業所の中から細野たちを支えてきた存在。
真面目で責任感が強い。
過去に人との距離を取ってしまう時期があったが、細野や仲間との出会いによって変化していく。
23話で細野へ想いを伝える。
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桜井
新人営業担当。
川村の優しさや真っ直ぐな姿勢に惹かれる。
自分から積極的に距離を縮め、川村と交際する。
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新人運転士
佐伯直人
中途採用で入社。
物流業界経験者。
真面目で責任感が強い。
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高木亮
中途採用で入社。
接客経験を持つ。
お客様対応を大切にするタイプ。
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村上拓也
中途採用で入社。
大型車両の経験を持つ。
運転技術への向上心が高い。
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木村悠真
新卒で入社した新人運転士。
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小林蓮
新卒で入社した新人運転士。
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池巣自動車営業所という場所
この営業所は、ただバスを運行する場所ではない。
新人が成長する場所。
失敗した仲間を支える場所。
先輩から後輩へ、大切なものを受け継ぐ場所。
仕事が終わった後も、
「また帰ってきたい」
と思える場所。
3月の終わりとは思えないほど、空気は冷たかった。
時刻は午前6時5分。
ここは東都交通局池巣自動車営業所。
まだ夜明けの名残を残す空の下、青と白のバスが静かに並んでいる。
その光景を前に、一人の男が深呼吸をした。
「・・・ここが新しい職場かぁ」
細野孝太郎 30歳。
今日から東都バス運転手として、新しい人生を歩み始める。
スーツ姿で会社に通っていた頃とは違う。
新品の制服。
少し硬い革靴。
まだ袖になじまない制帽。
鏡の前では似合っていると思った制服も、営業所を前にすると急に自信がなくなってきた。
「緊張するなぁ……。」
そう呟いた瞬間だった。
「おはようございまーす!」
後ろから勢いよく声が飛んできた。
振り向くと、大きな紙袋を抱えた男性が笑顔で立っていた。
「今日からですよね? 新人さん!」
「あ、はい!」
「俺もです!」
その男はニッと笑って頭を下げた。
「山下恒一です! 三十歳! 元営業マンです!」
「細野です。よろしくお願いします。」
「いやぁ、安心しました!」
「え?」
「自分だけ若い人ばっかりだったらどうしようって思ってたんですよ!」
「……いや、俺も同じこと考えてました。」
二人は思わず笑った。
すると今度は営業所の門から、眼鏡をかけた男性がスマホを見ながら歩いてきた。
「集合時間まで、あと七分あります。」
第一声がそれだった。
山下が小声で言う。
「真面目そう。」
「聞こえてます。」
「うわっ!」
「大森恒一です。」
軽く会釈する。
「元IT企業勤務です。」
「よろしくお願いします。」
「よろしく。」
必要最低限の会話。
しかし悪い人ではなさそうだ。
その時だった。
「す、すみません!」
営業所の坂を全力で駆け上がってくる大柄な男性がいた。
「ま、間に合いました!?」
「あと六分。」
大森が即答する。
「よ、よかったぁ……。」
肩で息をしながら笑う。
「川村健吾です……。」
見た目はラグビー選手。
しかし話し方は小動物のようだった。
「道を一本間違えまして……。」
「朝から迷子かよ!」
山下が笑う。
「すみません!」
「いや、謝ることじゃないって!」
四人は顔を見合わせた。
三十歳前後。
全員転職組。
全員、バス運転士は未経験。
そして全員、今日が人生のスタートラインだった。
営業所の玄関へ向かおうとした、その時。
「おーい。」
低い声が響いた。
四人が振り向く。
作業着姿の男性が立っていた。
五十代半ば。
日に焼けた顔。
腕を組み、じっと四人を見ている。
「新人か。」
「はい!」
四人の返事が見事に重なった。
「元気だけはあるな。」
男はニヤリと笑った。
「俺は整備主任の寺島だ。」
「運転士じゃないが、お前らが乗るバスの面倒を見てる。」
「だから……。」
寺島は一歩近づいた。
「壊すなよ?」
その一言に、四人の顔が固まる。
数秒後。
寺島は吹き出した。
「ははは! 冗談だ!」
「新人の反応、毎年これなんだよ!」
営業所の奥から笑い声が聞こえる。
「寺島さん、また新人を脅かしてる!」
「恒例行事だからな!」
ベテラン運転士たちまで笑っている。
山下がため息をついた。
「なんだこの営業所……。」
「思ってた役所と違う……。」
孝太郎も思わず笑ってしまう。
少し前まで抱えていた緊張は、もうどこかへ消えていた。
――この営業所なら。
――楽しい毎日になるかもしれない。
そんな予感が、春の朝の空気に混じっていた。
……しかし。
その数分後。
四人はまだ知らなかった。
点呼室で待っている"本当に怖い人"の存在を。
(第1話・前編 つづく)




