13.朝食を食べながら。
昨夜紅茶を飲んだテーブルで西園寺璃央と向かい合い、テーブルの上に広がる豪華な朝食を私は唖然と見ていた。
「あ、別に全部食べなくていいからね。食べたいだけ食べて」
「はい……」
残したら捨てるのだろうか……もったいない……。
昨日までの私の生活を振り返り思う。
「僕はこの後大学に行くから、君は……茜はこの部屋にずっといてね。絶対出ちゃダメだよ?」
西園寺璃央は綺麗な笑顔で怖い事を言ってくる。
別に出て行ったりしないよ、昨日バイトも無断欠勤したし、もう私に帰れる場所はない。
「大丈夫です、私にはもう帰れる場所はありませんから」
そう言ってフォークを持ち、サラダを食べた。
「じゃあ本当に茜は僕の物なんだね」
顔を上げると西園寺璃央は嬉しそうに微笑んでいた。
「はい……」
何だかちょっと恥ずかしい言葉に、私は俯く。
「じゃあ安心だ。後は茜の母親に許可取ってこのままここで暮らせばいいよ」
「っ!」
その言葉に私は少し焦り、不安になる……。
「西園寺さん……」
「璃央でいいよ」
「え……」
「り・お」
「璃央……」
「よくできました」
私は何故か頭を撫でられた。
「あの……」
「茜は何も心配しなくていいよ、ただこの部屋にいてくれれば」
「…………」
頼もしいのか怖いのかよくわからない言葉と自分の感覚に戸惑いつつも、私は言う通りにしようと思った。
もう帰れる場所はないし、あの母には関わりたくない……。
「じゃあ僕は大学に行ってくるから、帰りは……三時くらいかな。大人しく僕の帰りを待っててね」
さいおん……璃央は立ち上がると、私の頭に手をポンとのせ、そう言って部屋を去って行った。
「…………」
一人……いや、背後にいる使用人と二人残された私は、少し緊張しながらも豪華な朝食を好きなだけ静かに食べつつ、窓の外に広がる広大な庭を見つめていた。