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こんな私の命を拾ったヤンデレ御曹司に溺愛されています。  作者: 山下小枝子


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10/21

10.綺麗な顔に落ちる涙。

「……私の母親は……私に興味がない人です……」


 西園寺璃央に下からずっと見つめられて、私は絞り出すようにそう答えた。


「興味がないって?」


 更に問いかけてくる綺麗な顔と瞳。

 唇を引き結び、私は決意を固め、小さな声を絞り出す。

 きっと全部話すまで、この人は問い詰めてくると思ったからだ。

 このドSめ。

 

「母は……私が小さい頃に父と離婚して……夜の仕事して……毎日お金だけ置いてどこかに行き……たまに酔っぱらって帰ってきても……私には見向きもしないで……お金だけ置いてまた出かけて行くような人で……」


「ネグレクトってやつかな?」


 途切れ途切れに話していた私の言葉を途中で遮り、聞きたくない言葉を言ってくる。

 

「多分そうなのかなと思います……」


 唇が少し震えているのが自分でもわかった。


「児童相談所は? 来なかった?」


 再度、聞きたくない言葉を言ってくる西園寺璃央。


「来ましたけど……大丈夫ですって言ったら……案外すぐ帰ったので……それきりでした……その頃にはもう1人で何でも出来てたので……幸い母もお金だけは置いて行ってくれたので……生きては……いけたので……」


 西園寺璃央がじっと見つめてくる。正直、目をそらして立ち上がってどこかに逃げたかった。

 でも何故か……きっと今まで一人で生きて来た私の人生が、負けてたまるかと西園寺璃央の瞳から目をそらすのを拒んだ。


「今も、その母親と暮らしてるの?」

「……同じアパートに……住んでます」


 暮らしてるなんて言葉使えない。

 

「茜、年は?」

「二十歳です」


 中学卒業した時からあの人はお金を置いて行かなくなった。


「仕事は?」

「コンビニ店員です……」


 だから中卒で近くのコンビニで働きだした……。

 

「アパート出ようと思わなかったの?」

「別に……ほぼ一人暮らしの様なものだったので……保証人とかもいるだろうし……」


 そんなお金なんてあるわけないだろう、毎日生きるので精一杯だバカヤロウ。


 ぽたりと、西園寺璃央の綺麗な顔に、私の涙が落ちた。


 だから話したくなかったんだ。

 身の上話をしたら、絶対涙が出そうだったから。

 ぐっと閉じた唇は震え、眉間や口元に力を入れて涙を抑えようとしても、涙はあふれてくる。


「ごめんなさい……」


 ポタポタと私の涙が落ちる綺麗な西園寺璃央の顔を滲んだ視界で見つめて謝りながら、何で謝らなきゃいけないんだとも思いつつ、涙を拭おうとしたら手を握られた。


「いいよ。泣いていいよ……君の心は泣きたがってるんだから……」

「っ……」


 優しく微笑むでもなく、涙を嫌がるでもなく、西園寺璃央は私の涙を浴びながらキザなセリフを真っ直ぐに見つめながら真顔で静かに言った。


「……うっ……ひっく……ひっく……」


 今まで誰にも話したことがなかった。

 話せなかった。

 話したらきっと泣いてしまうし、迷惑をかける。


 それよりなにより、私の中で糸が切れてしまう。

 生きていけなくなる……そう思っていた。


 瞳を歪ませて泣きじゃくる私の涙を、西園寺璃央は瞳を閉じて綺麗な顔に浴びていた。

 

 こいつ絶対頭おかしい。


 そう思いつつも、初めて強制的にだが自分のことを話した事と、泣いていいよ。と言われた事に、私は涙を止めることが出来なかった。

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