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第7話 奇跡の少女

◇第7話 奇跡の少女


カレンが静かに寝ている。


俺はカレンの額に手を載せ瞼を閉じる。

気をカレンに注ぎ、ゆっくりと少しづつ、少しづつ同調し波長を合わしていく。


初めてのぶっつけ本番、他人と同調同波することは簡単じゃない。気を流すなら容易い、相手の気の波長と併せるのは至難の業といっていい。失敗できなとなると慎重になる、一度でも試験できていれば楽だろうが試す時間がない。カレンに残されている時間は少ない。



視界が切り替わった。深い暗闇の空に浮かんでいて穴に降りていく場面に替わった。


時間をかけゆっくりと降りていく、暗闇の中で深く遠くに薄明かりがみえる。きっとあそこだろう?



近くまで寄ってみるとカレンだった。驚いた様子で問いかけてくる。


「貴方は誰、死神さんですか?」

「違うよ。俺は太郎と言うんだ、君を助けに来た」

「助ける? 私ここが何処なのか分からないの・・・  分かるなら教えて欲しいんだけど・・・」

「ここはね、カレンの頭の中だよ。君は意識不明になり今は施設の病室で寝てる」


時間を掛けて分かるようにカレンに状況を説明していく。俺のことも話すが信用してくれるかな?


「疑問なんだけど、私は自分の脳の中に閉じ込められているの?」


言われてみれば不思議だ、脳の中にカレンや太郎の姿もあるのはおかしい。


「これはね俺の力を使い、君の姿を作りだして映像化したもので実体はないよ」

「??? いる訳じゃないんだ」


「丸い形をした霊魂風もいいけど、人の姿の方が話しやすいだろう!?」

半分は納得してくれたみたいだ。


「貴方は異世界から来てユーキの頭に住み着いてるの・・・ そして私を助けに来たと?・・・ 嘘みたいな話し・・・」

突拍子もない話しで半信半疑になる当然だ。

「ユーキに住み、治しきたと言っても簡単にOK!は貰えないよね・・・」


「OK!・・・、も、もしかして、ユーキの中にいる人でワンパンチとかVサインする人ですか?」

俺は驚きの余りビクリとする、その姿にカレンはニコッと笑った。


「えっ、ああぁー、そうだよ!」


寝起きの悪いユーキを毎日のように起こしに行ってる。

何でもユーキはおかしな寝言をよく言っていたそうだ。ある時、カレンの方から話しかけてみたら何故か答えてくれた。面白くなり色んなことを聞き出し、それをメモして言葉や仕草を自分なりに使っていたらしい。

カレンは俺のことを納得してくれたみたいだが、寝言の話しは、いやはやトンデモナイ子供だ。



「太郎さん、これから私は如何すればいいの」

「呼ぶ時はタローでいいよ。カレンの意識不明の原因は補助脳の暴走だと思うんだが・・・」

ついでに簡単に補助脳ついて説明する。


「その補助なんとかを治せば、それで私は助かるのね。よーし頑張ります」


補助脳の伝達回路の修復修理は、カレン自身でしか行えないことを説明する。

俺の指示通りにすれば心配ないことと、あと残り時間も少ないないことも伝える。


「カレン では始めようか? 補助脳の所へ移動するよ」

「ガッテン 承知!」

その言葉に俺は手を額に当て頭が痛い仕草をする、いや心が痛かった。



補助脳とは簡単に言えば脳に埋め込れた脳細胞をいう。理屈はわからんが。



補助脳のところに来て分かった。


正規の脳の信号と補助脳の信号がぶつかり合い衝突したため停止している。そのせいで意識がなくなったのは事実だろう、原理原則はわからんけど直せればいい。


その根本の原因は院長がやった『呪い』のせいだ、神経伝達回路がぐちゃぐちゃに絡み合って酷い状態になっていた。先ず呪いの回路の除去が大事だろう、正常に流れを直してもまた呪いの回路でダメにさせられたら意味がない。

例えるとプログラムがスパゲッティ状態ってことだな、全く院長やってくれるで・・・


修正のやり方が決まった、そしてカレンに注意するべきことを細かく伝え指示する。


「この回路の線切って、こっちの方へ繋いでくれる」

「ここを切ればいいのね、あら!簡単に切れるわ。切ったのをこっちに繋げればいいのよね」

伝達回路は何百何千の単位、数が多い。失敗は許されないけど残された時間も少ない、急がなければ・・・




最後に補助脳と脳幹に繋がってる接続部分を直す、問題の衝突してた箇所だ。

「すべて終わったよ!」

「ふーっ 終わり?  これで私は助かったの・・・」

「うん、助かったと思う。だけど直ぐ起きちゃダメだよ、衝突していた意識がドバッっと流れてしまい大変になるからね・・・。補助脳を見学してからでもいいかも」


「分かったたわ、ありがとう!」


カレンに手を振りながら、俺は元きた場所に向かってフワッと昇るっていく。


終わったのは深夜遅くなっていた、安心したら疲労が襲ってきたカレンから意識を離した。




「確かに施設の病室で寝てる、夢の出来事は本当なんだわ。私は生きているのね!」


窓の外を眺めた少女がいた、左の頬から一筋の流れた跡がある。大人の女性を想わせ、雰囲気を醸し出している。少女は大概早熟が多い、死の淵から帰って来た事で心境の変化なのだろうか、とても綺麗だ。


俺が起きたのを気付いて微笑んでくる。

「タローさんですか?」

「そうだよ、俺を分かるのかい!  何より無事でよかった!」

「夢じゃなく現実に居たのね。・・・・・・フフッ 私を救ってくれてありがとう!」


カレンの声でゴーキも起きたらしく、寝ぼけていてもカレンが目覚めたのが分かったのだろう。


俺は皆に知らせに行けと仕草をすると、ゴーキは頷き起きだして駆けていった。



暫くして大人達がやって来る、つられて心配した子供達も集まってくる。

口々に「よかった!」といい、友達なのか泣き出す女の子もいる。

病室は喧騒に包まれた。


俺は早朝から賑やかなこって!・・・と苦笑する。


院長がやって来て騒ぎに何事かと怒っていたが、カレンの姿を見て有得ない顔している。何も言わず無言で出て行った。それ責任者のすることかねー。



その後日、彼女に新たな渾名がついた、人は『奇跡の少女』と呼ぶ。




この光景に一番驚いてるのはユーキだろうな、なんせ自分の脳からこの様子を眺めていたはずだ。ユーキは双眼鏡で覗いて景色を眺めている感覚、声も出せず手足も動かせない。意識だけを持つた状態だ。普通は何が起こったのか理解できないだろうな。

自分は蚊帳の外におかれて、知らない誰かが身体を乗っ取っている。すごい恐怖に違いない。

これは世の理から外れた埒外の世界なのだから、有りえない世界に驚くのも無理はない。



(俺は覚悟を決めた!)



もう一仕事するかと言って騒がしい病室を後にした。


自分の寝台に寝そべって意識を沈めて行く、闇の中をゆっくりと降りている。

そして、ふんわりと地面に降りた、カレンの時もそうだったが不思議な感覚だ。脳の中に自分やカレンが実態化してる訳じゃない、ここは自分の力で造り出された虚像の世界に過ぎない。


自分は10歳の少年の姿をして立っている。


目的地に歩きだす。


空間が明るくなり、ユーキが立っていた。顔は怒りを滲ませている、指も震えていた。

「き、きみが、ここに閉じ込めているの・・・」

「そうだよ、閉じ込めたのは俺だ、どうしても遣らなきゃいけなかったからね」


「遣らなきゃいけない?   そうかー・・・カレンを救ってくれてたんだ、ありがとう!」

ユーキは頭をさげた。 そうだよなー 当然見て知ってるはずだよな!

「順を追って話すから、少し俺の話しを聞いてくれるかい」

「分かりました」


異世界から転生しユーキの脳に住みついたことを、易しく判るように噛み砕いて話した。

「そんな出来事、本当にあるのでしょうか?」

普通は理解できないよな、ユーキの頭に?ついた様子は当然の結果だろう。俺だって現実の前に仕方なく納得しただけで理解した訳じゃない。

まぁー考えたってしゃーないから受け入れるしかない。


そして伝えなけばいけない過酷な現実がある。

人格は別々に生きるといえ、一つの身体を二人で生きて行くことの辛い現実を告げる。

ユーキの見る事、やる事、考える事の全て俺に知られてしまう事実、そんな人生を誰も生きたくないだろう。けれど現実は良くも悪くも受け止めてもらうしかない。


他人と同一化するなんて胸糞悪い話しだ。


「この運命は変えれないんだね。僕が僕でいられるなら安心した、混ざちゃうかと不安になった」


長い沈黙が続いた。


「いいよ、生きていくしかない。・・・よろしくお願いします」


「おぅー、よろしくな!」


思いついたように。

「あれだ、あれ! 夜のあっちのほうがあった時は、俺は見ないように回線切っとくから心配するなよ?」

ユーキは顔を真っ赤に染め目を伏せた、8歳児にはちと刺激が強烈すぎたようだ。


ついでに、孤児院の真実も話をした。この辺は俺の脳と同期すれば説明いならないけど。



あっ!、名前を名乗るの忘れてた。明日でもいいかー


そのまま眠りについた。



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