第8話 念 話
◇第8話 念 話
朝、目を覚ますとカレンがいた。
(ユーキ、カレンと話していいか)
(わっー あぁー いいよ)
意識を切替えずに話す。
「カレン もういいのか? どうしてここにいる?」
「もう戻ってもいいと許し出たの、それで会いに来たところよ タローさん」
「おお、分かるのか?」
「話し方も違うし、何故か雰囲気も違うから判るよ」
(君はタローさんて言うんだ)
(あぁー悪りい 悪りい、名前言ってなかったな?)
(ユーキに戻す)
「カレン心配したよ、良くなってよかった」
「今度はユーキだー、雰囲気が変わる、驚くけど面白いじゃん。 ユーキありがとう!」
話しがあるから、いつも訓練にしてる第三区教練場に集まるように言った。
宿舎でゴーキを捜したが姿は見えなかった。その内やってくるだろうと思っていたら先に来ていた。
ここ二日練習できなかったから朝起きてすぐ着替え自主練習に来ていたらしい。
草むらに座り、他の二人に話した内容をゴーキに同じ説明をする。
同じ反応をする、3度目もなると慣れるものだ、要点を理解しやすい言葉を使って伝えた。
ゴーキの脳に潜ることを話す、ユーキとカレンの助けもあり納得させるは簡単だった。
ゴーキの補助脳の回路も酷かった、発症しないギリギリの状態だけど安定はしていた。カレンの時と同じ要領で修復しいく、呪いの回路は取り敢えず切断しただけにする。短時間で無事終了、これで呪いは発動しないから一安心だ。他は暇な時にでもいいだろうとゴーキに納得させる。
ゴーキは孤児院の秘密に驚いていた。いや院長一派の秘密。
眠り病の恐怖から解放されたのは喜ばしい。
あと問題は会話だ、ユーキと一々切替えて会話するのは不便極まりない、それに今はタローだユーキだと明確にしないと誤解も生まれる。
そこで新しい錬気を覚えてもらう事にした。三人は納得する。
「錬気の習得の前に、重大なことを発表する。錬気の内容に間違いが沢山ある、ほぼ全ての錬気を使える俺が言うのだから信用してくれ!」
「使うのもダメなの」
「絶対ダメじゃないけど、技をしっかり理解してからの方が上達しやすく早い」
《上達》という言葉に三人は反応した、どの技も覚えてから中々上達しないため苦労していたのだ。
ちょっと教師風に教えていこうか? なんか頭良さそうだし雰囲気もでるだろうから。
教師の語尾は『です』『ます』調じゃなかったかな? 憧れる。
口調を思い出そうしたけど数十年前のことは忘れた! ハハハハ。
「覚えて欲しいのは探索錬気、気を放出して人や動物を探知する技。これも間違っいる技の一つ、正しい使い方は相手に向かって気を放出する技です」
「それで人を倒すんすか?」 脳筋バカである。
「タローさん 相手に向かって気を放出したって意味ないじゃないですか?」
「さんは要らないです。普通に気を相手に送るだけでは意味がありません、気で作った『言葉』を相手に送るれれば答えは違ってきます」
「気で作った『言葉』を受信機で受ければ声にすることが出来ます。相互にやり取りすれば会話することが可能になります、つまり『念話』でしょうか」
おし、教師ぽく説明してる。俺って教師に向いてる? いや頭良くなかったから絶対に成れないな。
三人は顔を見合わせ『うそーー』と信じられないと確かめ合っている。
「実はカレンとゴーキの補助脳に探索・探知錬気は組込んであります、ユーキは当然ありますから習得は簡単にいくでしょう」
「タロー やるううううー グッチョ!」
教師になったつもりで優しい言葉遣いをしてみたが、これはこれで大変だな。慣れないことは疲れる、滅多にない機会だし気分いいから続けるか。
「始めましょうか、まずカレンが送って私が受ける、ゴーキが送るユーキは受ける形でやってみましょうか」
「タローとユーキは別々に技使えたりするんですか?」
頷く、これも覚醒の一つ、能力はたいしたものでもない。
注意することを教える、送る方は指向性を持たせ伝えたい言葉を想像し送り出すこと、受け手は相手の気の波長に合わせることに集中する。
「一番最初は送る感じ、受ける感じを創造してみて下さい。感じられればそこからは早いと思いますよ」
「はーい」
皆、真剣だ。
(タロー 好き!)
小一時間で結果がでてくる、さすがに早い。
これはカレンだな、少し桃色に染める顔、カレンに伝わったことで頷く。やっぱり女子だなカレン。
(わぁー本当に届くんだ。面白いし、こんな事できるなんて凄いことだよ)
沢山送ってくる・・・さすがカレン、簡単に器用にこなす。
(今度は私が受けるから送ってちょうだい)
目を閉じていたカレンが突然ビクンと顔を上げ目を開く笑顔を見せた。
(タローも私のこと好きだと思わなかったわ? フフフッ)
カレンは親指を立てた仕草をみせてあげる。
暫くして他の二人もできる様になったみたいだ。
これで楽に四人で念話の会話ができる。
(この思念は一対一だけじゃないく、送る角度を広げれば複数で会話も可能になります)
(タロー これは便利ねー)
「すげぇぜーーー」
「へぇー タローさんは凄いです」
「昼食まで訓練しましょう。あとで説明しますけど、毎日必ず使って下さい」
午後、訓練場にカレンとゴーキがやってくる。カレンは嬉しそうに小走りでスキップしている。
陽気な性格のカレンがはしゃぐのは珍しくない、おやゴーキは思案でもしてるのか顎に手を当てている。アイツが考え事とは珍しいことだ。
(ねえねえ、私いいこと思いついちゃた!)
「実は、俺様も・・・」
「アンタもあるなんて、不吉な前触れだわ。なんか悪い予感がする」
「なに 俺は考えちゃダメな訳、たまには・・・」
「ダメに決まってわよ。さらに悪い予感がするわ」
(はいはい、そこ迄にして。まずカレンのいい事の話しを聞かせて)
「タロー 念話の訓練する時に言ってたでしょ。私達の補助脳に探知と索敵錬気を組込んでだって、それじゃ 他の錬気も組込んでもらえば簡単に、楽に覚えるじゃん。いい案だと思ったのよ?」
「何だー俺の考えたのと一緒だ」
「あちゃー あぁーダメな予感じゃなく実感する」
「何でだよ!」
(まず組込むことは可能です、しかし良い案ではありません)
いい教師のふりをするのも疲れてきた、頬がピクピク痙攣してきたようだ。
(普通 『錬気を使える』までの過程、使えるまでに成るためにはどうする?)
「やり方を聞いて実際にやってみる、まず練習する。出来ないと色々考えたりするし、人がやってるのを見るとかも役に立つわね、そして頭の中で思い浮かべてやってみる。出来るまで繰り返すことじゃない」
(後は人の真似する、指導してもらう方法もある)
「そうやって苦労して覚える、時間もかかるし努力も必要でしょ。それを組んでもらえば短く出来ることは画期的じゃない?」
カレンの言ってることは間違いじゃないが、大きな落とし穴も含んでいる。
(ゴーキ、覚えたての技は未熟だよね、まず使い物にならない、その時はどうしたらいい)
「ダメな部分を鍛えるわな。鍛えて鍛えて強くする。それが男だぜ!」
(苦労して覚えた技は、ダメな部分や良い所も自分で知っているから鍛えられる)
(ダメな部分や悪い所を知らなかったどうなる?)
「鍛える所を知らないなら無理に決まってるぜ」
カレンは解ったようだ、一を聞いて十を知る羨ましい才能だ、頭もいいし賢い。
大人になったら才色兼備の女性になるだろう。凡人だった俺が無い物ねだりしても意味ないけど羨ましい限りだ。
(普通は身体に刻み込んで技を覚える。補助脳に組込と理屈も仕組みなしでも、努力しなくても技を覚えられることが問題だ)
「やっぱり良い事ずくめじゃないか?」
(ゴーキに聞くけど、補助脳の技はダメな部分や悪い所を知らないけど鍛えられる)
「知らんのじゃ出来きねわー でも俺は頑張れるから出来るじゃねー」
(ハハハハ ゴーキなら確かにそうかも。問題はそこじゃない、一から覚えた方が段違いに技の上達速度が早いって事なんだ、強くなりたければ急がば回れってことだ)
「世の中はそんなに甘くないってことね。脳筋バカ以外は・・・何ニヤけているの褒めてないわよ」
静かにしていたユーキが聞いてきた。
「なら、補助脳に書き込んだ『念話』も不味いんじゃないですか?」
(それは心配してない、今もそうだが念話使ってるだろう。私と話すには念話をする、つまり常に念話の訓練をしてるような状態だ。上達が遅くても使用頻度を多くすれば結果は同じになるんだよ)
この言葉に全員納得したようだ。
(それと言葉使いはタメ口にする、先生ずらして優しくしていたが面倒くさいからやめだやめ。以後よろしくな!)
短い教師人生だった。




