第11話 技の鍛錬と習得(1)
◇第11話 技の鍛錬と習得(1)
午後の第三区は快晴だった
基礎体力の強化のため第三区を一周を日課にする。準備運動も念入りにする。
小休止した後、タローは三人に今後の訓練を説明し始めた。
(前に【錬気】帳・・・第一版 (タロー作)を見せたが、全てを習得するに時間は足がたりないから、気装撃・剣装撃と剣衝撃・治療錬気・索敵錬気は後にした方がいいだろう、まず覚えている技の練度を上げることから進め、基本技が上達後に上級の技を追加していく計画でいこう)
(先ずは、気装(壁)・気衝・剣装の強化だな。技の基礎な訳だから習熟は必要だろうし。あとは、そうだな? 風切り・気弾の精度を上げる、新しく瞬歩と跳躍の習得でいいだろう)
「タローと本格的に訓練開始しね、ワクワクするわね」
「よろしくお願いします」
「やったぜー 俺達も強くなるぜ!」
この世界の人間は成長が早いのは認める。三人とも身長と体重は8歳児の規格でない、カレンは160cmを超えていて前世なら大人の体格だ、ユーキが168cm、ゴーキも171cmだからこちらも驚く。
ここでは12歳で身長が止まるらしいが、女性が176cm、男性は190cmの平均からすれば低い、まだ成長段階にある三人といっていい。三人は同世代と比べても大きい方に入るが、特に大きいとはいえない現実に、前世の観念から違和感を憶えるは仕方ない。精神年齢も含めて、どう見ても中学生くらいの子供にしか感じない。前世の世界と同じ基準に考えようとするから間違いが起こる、やはりここは異世界なんだと改めて実感する。
(ところで今年の武術大会は出たんだろう? 順位はどれくらいだったんだ?)
「大会は予選1回突破ね、模擬試験みたいに順位で出ないから正確に言えないわ」
「そうですね、予選1回勝ったと前回の模擬試験の順位を併せれば60位くらいだとと思います」
「覚えてたのは気装と剣装だけだしな、その辺が限界だろうぜ!」
(気装と剣装だけで60位だと! それって相当優秀になるんじゃね?ー)
三人とも結果に満足してるらしい、カレンはVサインを出しているくらいだしな。
「歴代何とか言って噂になったらしいけど、弱いことに違いないぜー」
「そうよね。60位は偉そうに言えないわ」
「それに僕たちは1位を目指しているから順位に興味がありません」
錬気を習って1年未満で120名中60位は異常な気がするが、本人たちは気にしていないので突っ込むのはやめにする。
(では技を一つずつ調べるので、まずは気装(壁)をやってもらおうか?)
三人は並んで気装強化を発動する、一際は大きいゴーキが飛び抜けている。
(次は剣装をやってもらおう)
今度はユーキとカレンは同程度で、ゴーキが劣ってる。
気衝、気弾、風切り、剣衝を試験していくが、カレンの気弾やゴーキの気衝以外はお世辞で使える程度の技量ってとこだな。
人と対戦するとなれば瞬歩と跳躍は必須科目だ。高速に動き回る、一瞬で間合いを詰めれる瞬歩がなければ対人の戦闘で勝機はない。
剣術と格闘はヴォーグ教官の専門だから指導してもらおう。ヴォーグ教官の錬気は人並みだが、剣術と格闘の技術は頭抜けていてその知識も豊富で一級品だ。剣術は達人の領域にあるといっていいが、哀しいかな天は二物を与えず錬気は人並みしか与えてもらえなかった。この世界の強さは戦闘に於いて錬気>剣術の比重が大きく左右される。ヴォーグ教官も相当の実力者に違いないが、錬気の上位者と対峙すると勝てる見込みはない。
【錬気】帳・・・第一版 (タロー作)を作成した理由は錬気についてちゃんと体系的に解説された物が無かった。筋道をたて説明された書物は少ないため、錬気の習得を難しいものにしていると感じていた。高度になる技につれその傾向が顕著になる。口伝であったり、独自に習熟した技はちゃんと解説されていない物も多くある。
(気装は基本中の基本だと誰もが知っているけど、実は覚えてからは一番疎かにしてる錬気の一つだといえる。知らないか気づかないのかは知らんけど、強くなるために気装の強化が一番重要な事だと気づいていない。いや違うか! 疎かにしている人が多い)
三人ともタローの意外な発言で怪訝な顔をする、気装は基本中の基本は理解すれど『一番重要』だとの言葉に不審がった。
「気装の重要性は知ってるけど少し大げさじゃない」
「そうだよな~ 気装ができたら次に技の鍛錬に向けた方が効率よくねー」
「タローさんの言うことは最もだと思います。強化に一番重要は理解できませんが、気装の大切さは承知してます、それと強くなると気装も強くなると聞きました」
大抵はこうなる反応だ、口で細かく説明しても納得しにくい部分だ。気装を訓練をやっても眼にみえて良くなったと実感することはない。それで他の技の修練にいきがちになるのもあたり前なのだ。
問題は気装の訓練の気構えの違いだ、何となく必要だからやるのと真剣に取り組んでやるとの温度差は大きな差を生む。それが高度の技の領域にいくほど決定的な差に広がることに気づけない。
技の錬成や威力の強化にガムシャラに頑張るが、良い結果にならず途中で挫折する羽目になる。
挫折した原因が気装にあったと気づけれればいいが、修練中は見抜く力量を持ち合わせていない。
つまづく原因は気装だけでない、複数に絡んでいればそう簡単にいかないが、主な原因の一つであるのも事実なのだ。
偉そうに解説してるが、何を隠そう自分が陥ったことだから真実味がある、そして実感している。
俺は秘密基地を作り訓練できるようなってから格段に上達速度が上がった。三人の2倍以上の時間を訓練にさけるようになった、このお陰で失敗を取り戻すことができた。
これで教師の面目を立てれるというものだ。秘密基地? それは内緒だ、ばらすのはまだ早い。
同じ轍を踏ませるのは可哀そうだし時間もない。例えも考えつかないし・・・・・・
なら実験でもするかーーーー
三人はタローの言葉を待っていたが一向に返ってこないので困惑した顔をしている。
(悪い悪い、思案中だったので話すのが遅れた)
「気分でも悪くされたのかと勘違いしました」
(それはない、気装のことを納得させること悩んでいたところだ。そこでだ! 一つ実験で説明したら解りやすいんじゃないかと思った)
「口からだとピントこないし、いいんじゃない」
「俺はそっちの方が助かるぜ」
(実験道具を作る必要がある。カレンとゴーキは竹林にいって一番太い竹を3m長さを2本と細い竹1本を取りに行ってくれ。ユーキは水がめと木人形を用意してもらおうか)
「細い竹も3mでいいのかしら?」
(あぁー それでいい よろしく頼むぞ)
実験と聞いて普段とは違うことにはしゃいでいる、毎日毎日が訓練だと息抜きも必要なのかな。
(道具は用意できたみたいだから、小川の流れている場所に移動してそこで組み立てよう)
カレンとゴーキは竹を担いで意気洋々と歩いていく。
小川の横に実験に丁度いい2㎡くらいの石畳あった。
(大した実験でもないけど、まずは太い方の竹を30、60、90cmの長さに切り、途中の節をくり抜いてもらう。細い竹も90cmで同じように節を抜いた物を1本作ってくれ。合計4本の水筒の竹筒を作る。次は1m長さの竹を真っ二つに割り節を取り除いて水が流れるようにする、こちらは細い方太い方も2本あればいい)
カレンとゴーキは自分の方が綺麗だと競っていた、ただ竹の節を抜くだけなのだが・・・
ユーキに前世にある『流しそうめん』を作る要領で竹を置く台を作ってもらう。1m+1mの2段方式の『流しそうめん』だと想像してくれればいい。
小川から水がめに水を汲んでもらい4本の竹筒に注いでいく。高さ40cmほどの木人形を石畳の端に置き、『流しそうめん』用の台と2つに割った竹も台の上に設置して完了。
(4本の竹は気衝の技だと考えてくれ、入ってる水で木人形を倒す実験だ。ゴーキ細い竹の水をかけて倒れるかやってみてくれ)
90cmある細い竹を持ち上げて木人形に向け水を出すがピクリとも動かない。
(この結果を説明できる人いるかな? ・・・ カレンはどう?)
「水の威力が全然足りていないから、いくら水を掛けても倒れそうにないわ」
(これを気衝に例えると威力のない技じゃ相手を倒せない。じゃー解決する方法は何かな?)
「そんなの決まってるぜ、もっと威力のあるやつ出せばいい!」
(正解だね、次に高さ30cmの太い竹でやってみてくれ、水の量は細い竹と同量になってる)
今度はグラッと揺れた、威力は十分だが少し水の量が足りないらしい。
(惜しかったね、この解説はゴーキにお願いするかな?)
「竹の口が太く大きくなって威力は増したが、木人形を倒しきるほどの水の量が足りないんだぜ」
(これを気衝に例えると、相手を一瞬グラッとさせたが倒せるほどまではいかなかった。これは皆納得かな、異論ある人いる?)
三人は納得して頷いている。
実験を続けて高さ60cmの竹でギリギリ倒れ、90cmは余裕で倒せることが解った。
(この実験から導き出す結論は解るかな?)
「はい! 気衝の威力と量を高めないと相手を倒すことはできない。という結果だと思います」
(ユーキ 正解です)
「タロー先生! 実験前に言ってたことと違うじゃん。気装が一番大事だと言ってたよ?」
(おぉーなかなか鋭いね! その事を回答する前に次の実験を進めましょうか)
ユーキが台に半分に割った2本の竹をくの字の形につなげ載せる、2mの先に高さ90cmの竹筒を設置し水の受け皿とする。直線でないく、くの字の形にする理由がある。
(水がめは『気の量』、台に置いた、半分に割った2mのくの字の竹は『気脈』を表してます。つまり気装の流れを形に表したと考えてくれ。『気』の器の水がめから『気衝』の竹筒へ注ぐこれが気装の流れです。ここまでは理解できましたか?)
うんうんと頷いてくれる、これを理解してもらわないと前に進めないから一安心。




