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黒き百合のリリーダイヤ  作者: 山平学美
本編
2/10

中編・上

国王陛下との対面です。

王子殿下がクズです。

おそらく、今頃はあの忌々しい王子がご丁寧にも姉様のありもしない罪とやらを国王陛下にご報告していることでしょう。


私は、姉様に送ったドレスの中に有るはずのものに手をかける。

チャリッ、首元から出て来たものは、去年の姉様の誕生日に送った、私手作りのネックレス。

金色と銀色の魔石を使った私達の仲の良さを象徴するそれを、私は首にかけた。


「ダイヤ」


ドアの前で、愛しい旦那様に呼びかけられました。

その瞳は、きっとこれから私が行うことに気がついていらっしゃったのでしょう。

優しく私を抱きしめ、私の耳元でこう呟きました。


「愛しい妻の復讐に、私も手伝って良いかな?」


そして、旦那様は、両親に近づき何か話されておりました。

悲しみに満ちていた両親の瞳は、怒りと憎しみを灯し私を見つめました。


この時から、私、家族は復讐に身を染めました。




私達はすぐに、国王陛下の元へ参りました。

本来なら、このような愚行は不敬罪になるのでしょうが、構いやしません。


城門の前まで着き、フォンティーヌ公爵一家が至急、対談を申し込みたいと伝えると、予想以上に早く国王陛下にお会いできました。


そこには、姉を死に追いやった憎き王子と令嬢達と、国王夫妻が待っておりました。


皆が私達を、いえ、私を見て驚愕されていました、当然ですわね。だって。


「リ、リリーマリア……?

なぜ、貴様がここに?」


私は、リリーマリアとしてその場に立っていたのでしたから。

銀色の髪と瞳は、姉様のように美しい淡い金色にし、身体中を包帯で巻き、次期王妃としての優美さと力強き眼差しに。

そう、まさに、黄金の百合、リリーマリアそのものに私はなっていたのです。


「国王陛下、並びに王妃殿下。

面会の届け出の手紙も無しのご訪問、お許しくださいませ。

先程、私は殿下に言われのない罪をでっち上げられ、暴行を受けました。

命からがら逃げ出し、妹に回復魔法をしてもらい、こうしてまたおふた方の御前に立つことができ感激の極みにございます」

「嘘をつくな!この売国婦が!!

父上、母上、この女の言うことを信じてはなりません!!

この女は、遠い敵国に我が国の情報を売り、我々を裏切ろうとしているのです!!

そして、それだけに留まらず、このエリーゼ・マシュー伯爵に暴漢を襲わせようとしたのです!

未来の王妃にこのような屑は相応しくありません!!」

「王子殿下、その情報とやらを私がいつ、どのように、何故売ったと言うのでしょうか?

そこまで自信がお有りなら、ここで証拠を見せてくださいませ?

あとついででよろしいので、そこの伯爵令嬢の件についても」

「貴様……!!

貴様は、アハトという男と度々会い、そ奴に情報を売ったのだ!!

たまたま、エリーゼがその場を見て私に教えていなければ、今頃この国は!!

そして貴様は、エリーゼを口封じに暴漢に襲わせたのだ!!

おい、衛生兵!あの男を連れてこい!!」


どうやら、王子殿下は姉様を売国婦と信じて疑わないのですね。

いいでしょう、どんなに証拠を用意しても、私は決して負けません。


衛生兵が連れて来たのは、黒髪の40代ほどの男性でした。


「おい、貴様!!

確かに貴様に情報を渡したのは、この女だな!?」

「お、俺に情報を売った女は、真夜中の城下町の路地裏でローブで顔を隠したからはっきりは分かんなかったがよぉ……確かにそこの女と同じ綺麗な金髪の髪が見えてたんだ!

声も似てる、確か20もいってねぇ女だった!!」

「わ、私も、見た日は城下町に住んでいるいとこのお店を夜遅くまでお手伝いしてて。

本当は、そのまま泊まる予定だったのですけれど、次の日の早朝に薬草学で使う薬草園の水やり当番があったの思い出して。

おじさんに頼んで、寮まで送ってもらっていた道中に黒色のローブを被った女性が歩いてたのを見たんです。

その人、リリーマリア様と同じ髪の色をしていましたから、心配になって追いかけたら。

私、私……」

「俺もそこの嬢ちゃんに見られてんのにバレて、そしたら、女がよ、暴漢を雇って嬢ちゃんを襲うように言ってよぉ。

すぐに闇社会の連中に頼んで襲わせたんだよ!」


「…………そうですか、で?

何故それで私だと?それではただ、私と同じ髪の女がしただけではありませんか?

声だってまるっきり同じではないのでしょう?」

「その日、貴様は寮に帰らず、実家に帰ると寮に届け出を出していたな。

だが、実際には、実家に戻らず、城下町にあるタウンハウスにいただろう!

タウンハウスに入るところを目撃している者が複数人いた!

それならば、真夜中に城下町の路地裏に行くことも可能だろう!

その日は、公爵夫妻は公爵領の屋敷に居た。

アリバイを話せるものがいるなら連れてこい!」


「そのアリバイ、私が晴らそう」

「貴殿は、ホープニア大公!?」


国王陛下が驚くのは無理もございません。

突如としてその場に旦那様……大公様が現れ、その場に緊張が走りました。

屋敷で旦那様は、私の懐に忍ばせた魔道具を通じてこの会話を聞き、このタイミングで転移してきたのです。


「その日とは、先週の金の日ですよね?」

「あぁ、間違いねぇ!」

「その日は、私と愛する妻でリリーマリア様とともにタウンハウスで過ごしたのですよ。

私の妻は本当に嬉しかったのか、時刻が2時を回ってようやくおしゃべりを切り上げたのですよ」

「ふん、どうせ貴様らで口裏を合わせているのだろう!小賢しい!」

「なら、本当に私であるか確認いたしましょう。

国王陛下、よろしいでしょうか?」

「うむ、申してみよ」

「私、いいえ、リリーマリアの監視の者に証言をさせましょう」

「……良かろう、リリーマリア監視の者よ、現れよ」


監視の者。

それは、代々王族とその婚約者の行動及び周囲を逐一監視し、いち早く危険を察知し国王に報告する裏の存在です。

彼らは国王陛下に忠誠を誓いいかなる甘言にも惑わされない、真実を伝える者達です。


「国王陛下、及びでしょうか」

「先週の金の日のリリーマリアの行動は?」

「リリーマリア様は、その日、学業に励まれた後、タウンハウスに向かい次の日の早朝まで一歩も出ておりません。

仮に、リリーマリア様が敵国に情報を売るなどという行為があれば我らが即時に国王陛下にお伝え申しましょう」

「うむ、そうか」

「そして、その情報を売ったという女性ですが、すでに我々の方で特定し、捕まえる手はずが整っております」

「「「!?」」」


「そうか、後ほど其の者の情報を教えてもらうとしてだ。

ミッシェル……貴様はなんてことをしでかしたのだ!!」

「父上!!」

「ミッシェル及びにそこの令嬢達を部屋に閉じ込め出てこれぬようにせよ!」

「な、父上!?父上!!!」


「国王陛下、よろしいでしょうか」


哀れな、王子殿下達は衛生兵に連行されていきました。

さて、ここからです。


「あぁ、すまぬリリーマリアよ。

倅がまさかあそこまで愚かだとは、すぐに王宮の医師に手当てを」

「国王陛下、この場に我々以外、騎士も侍女も入れずに我々だけでお話しせねばならぬ事があります、騎士のご退出を命じては頂けますか?」


大公様の発言に、国王夫妻は意味がわからないという顔をされました。


「もし出来ぬというのであれば、おそらく明日にでも我が国との戦争が起きるでしょうね」

「な、何を言っておる!?」

「さぁ、騎士達を下がらせますか?しませんか?」

「……騎士達よ、下がれ」

「「国王陛下!?」」

「早く下がれ!!」


騎士も侍女も居なくなり、私達だけが残りました。


「大公よ、話とはなんだか?」

「リリーマリア様の怪我の治療は必要ありませんということです、今更治療をしたところで無駄ですからね?」

「なにを言っておる?」


私は、その場に転移させました。

そう、姉様を。

血だらけで死んでいるリリーマリアを。


「きゃあああああ!!リリーマリア!!」

「な、な、どいうことだ!

リリーマリアはここに……まさか!」


「えぇ私はリリーダイヤですわ。

ご機嫌よう、国王陛下、王妃殿下」

「な、それでは、リリーマリアは!!」

「殺されましたわ、王子殿下方に。

今まで、我が姉がどのような状況にあったか、今一度見てもらいましょう」


私は首にかけてあるネックレスを取り出しました。

このネックレスには、記録機の機能があります。

王子殿下の気配に反応し撮影を開始、そして居なくなれば停止するように組み立てたもの。

これは、姉様に対する王子殿下達の愚行を撮りもしもの時の備えになればと思っていました。

今となっては遅すぎたのですが。


この一年間の王子殿下達の姉様に対する暴行、そして姉様が殺される要因となった一連まで流しました。

国王夫妻は顔を青ざめ、両親は泣き続けました。


「国王陛下、我が姉に対する王子殿下の行い。

散々、我々は申し上げてきたはず、それなのにこのようなことになり一体どのように責任を果たされるおつもりでしょうか?」

「すまない、すまない……!

ミッシェルは廃嫡し、平民にしよう、そして」

「それだけですか?」


大公様は、冷たい声で国王陛下の声を遮りました。


「国王陛下、このことはもうその程度では済まぬことなのです。

我が妻の姉君であられる、リリーマリア様は、次期王妃として何度も我が国を訪問し、その名を知らしめているのです。

それも、貴殿の息子である王子の代わりに外交を務め、我が国もリリーマリア様だから信頼して国同士の和平を託していたのです。

それが、今、婚約者であられる王子殿下に無実の罪で殺されたとなればどうなるでしょうね?


まず、フォンティーヌ公爵領は直ぐにでも我が国に属するでしょう。

そうすれば、公爵領がこの国に貢献してきた税金・食料・鉱石・観光・特産品が無くなります。

次に起こることは、国民の暴動でしょう。

王子殿下が婚約者であられるリリーマリア様を殺したとバレれば、彼女を慕う国民は怒り狂うでしょう。

貴方方の息子は国民の人気はあまりないでしょうが、リリーマリア様は孤児院の訪問や衛生改善など国民のためのことをされ、とても慕われていましたからね。

そして、この国が混乱に陥った隙に、我が弟……我が国の国王陛下は戦争を仕掛けるでしょう。

この国を立て直すくらいなら、我が国の領地にした方が早いですからね」


「あ、あ……」


国王陛下は、ことの深刻さをやっと理解したのでしょう。

頭を抱え、言葉にならない声を出されています。


「国王陛下、この国を存続させる代わりに、私と取引を致しましょう。






私にあの者達を復讐させてください」


中編が思ったよりも長くなりそうで上下に分けました。

次は、リリーダイヤによる復讐が始まります。

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