守り切って勝つ戦いもある
アスカ
「私は仲間を信じる! それまで、この戦い、耐え抜いてみせる!」
クラハシの丘古墳に向かうアスカ、ヒロヨ、オビトの3人の前に現れた小さな人型。アスカは、守護霊紅蓮の戦士『不動の解脱者』でその攻撃を防いでいるが、これを撃退するたびに人型は数を増やしていく。
本当に……本当に、人型の数が増えすぎてしまった。
1体の人型の攻撃は脅威ではない。
脅威となるのはその数。
次に攻撃を受けると、『不動の解脱者』に致命傷が生じるかもしれない。
攻撃態勢に入る大量の人型。
『不動の解脱者』は、人型を発生させた敵の『キツネ男』の目の前、迎撃の構えを解いて、あぐらをかく。
キツネ男
「1つ、2つ、3つ――あぁ、もう数をかぞえきれない。 わが人型がこれほどタクサンいる。 その1体1体が君の守護霊の霊気を削っていくんだ!」
アスカ
「やれるものならやってみなさい。 私は耐え抜いてみせるわ!」
キツネ男
「強がりだな。 君の守護霊は、迎撃姿勢を解除しているじゃないか。 それは、君が戦意を失った現れではないのかい?」
アスカ
「私は、まだ、戦う!」
キツネ男「まだ言うか! ならば行け! わが黒き兄弟『長手足』の眷属よ! この小娘を葬ってやれ!」
人型の一斉攻撃。
アスカは、激痛を覚悟した。
アスカ
「ウ、ウウウウウウ」
人型の群れが、各、高速回転して『不動の解脱者』を襲う。アスカの守護霊は、無数の人型に襲われて、ハリネズミの如くなる。
キツネ男
「アーハッハッハ! 人型よ! 喰らい尽くせ! 戦闘の途中で戦いを放棄した者の末路! それは死あるのみ!」
アスカ
「ウ、ウウウウウ」
キツネ男
「!?」
人型は、確かに高速回転して、『不動の解脱者』を襲っている。だが、様子がおかしい。人型が『不動の解脱者』に刺突できている気配がない。
アスカ
「私は、戦いを放棄したんじゃない。 私は、『耐え抜いてみせる』と言ったのです。 戦いは、攻撃だけで勝負がつくんじゃない。 守り切って勝つ戦いもあるはずよ!」
覚悟――
守護霊は、守護霊自身の霊力と、術者の霊力を合算して力を発揮する。術者が覚悟を見せれば、術者の霊力が上昇して、守護霊に能力が与えられることがある。
アスカは、無数の人型の攻撃を一身に受ける覚悟をした。
それが、アスカの守護霊、『不動の解脱者』に新たな能力を与えた。
アスカ
「能力! 絶対防御!」
『不動の解脱者』を攻撃する人型が次々と弾き飛ばされる。
人型は、弾き飛ばされているだけでダメージを受けているわけではない。したがって、分裂して増殖することもない。
アスカ
「絶対防御は、守護霊の防御力を大きく上昇させる。 このため、あなたの人型では、『不動の解脱者』に傷をつけることはできない。 ゼロダメージは、どんなに数をそろえてもゼロダメージにしかならない!」
キツネ男
「っち!」
アスカ
「そしてあなたの人型は、強い霊気に引かれる自動攻撃型の能力。 ゆえに、あなたは『不動の解脱者』以外を攻撃することはできない」
キツネ男
「!」
アスカ
「つまり、『不動の解脱者』に絶対防御がある限り、あなたの勝はない!」