私は仲間を信じる
クラハシの丘古墳に向かうアスカ、ヒロヨ、オビトの3人の前に現れた小さな人型。その攻撃を引き受けることになったアスカの前に、『キツネ男』と名乗る人型の術者が現れた。黒い兄弟『長手足』を操る守護霊使いでもある。
『キツネ男』は、「秘密」を守るため、アスカを攻撃するという。
攻撃を受けるごとに増殖していく、『長手足』が発した人型、すでに無数の体となってアスカの守護霊、紅蓮の戦士『不動の解脱者』を取り囲む。
人型の一斉攻撃。
対する『不動の解脱者』の手拳ラッシュ。
多数、撃ち漏らし。
10を超えるか、高速回転する何体もの人型が『不動の解脱者』に突き刺さる。
アスカ
「アアアアアー!」
体中に伝わる、『不動の解脱者』が受けたダメージ。
1体の人型が与えるダメージは僅少。
しかし、体中に、鉛筆の先でつつかれたような刺痛が走るのだ。
人型の増殖に比例して、『不動の解脱者』が受けるダメージも増殖していく。
まとわりつく人型を振り払う『不動の解脱者』。
ようやく、人型が全滅。しかし、人型は、斃すとその数を2倍に増殖して復活する。
キツネ男
「フフフ。 わが守護霊、黒い兄弟『長手足』の人型の攻撃力は、単体では大したことはない。 けれどもね、ちりも積もれば山となると言ってね、わずかな攻撃でも量を増やせば大ダメージになるんだよ」
アスカ
「耐えてみせる! この程度の攻撃ならば!」
無数の人型が一斉に攻撃態勢に入る。そして攻撃。
対する『不動の解脱者』の迎撃。
もはや手拳ラッシュで防ぎきれる量ではない。
高速回転する多数の人型が『不動の解脱者』に突き刺さる。
アスカが喘ぐ。
守護霊がダメージを受けると、その刺激が術者に伝わるのだ。
『不動の解脱者』が、まとわりつく人型を振り払う。
なんとか人型を全滅させる。しかし、その数がさらに倍に増殖する。
キツネ男
「なるほど。 そうやって、攻撃をしのいで時間稼ぎをする気かい?」
アスカ
「そうよ。 あなたの人型の攻撃、ちょっと痛いのを我慢すれば大したことはないわ。 こうしている間に、私の仲間がきっと助けに来てくれる!」
キツネ男
「それは、どうかな。 そうだな、例えばここに1粒のコメがあるとしよう。 このコメは不思議なコメで、手をたたくとその数が2倍になっていくんだ。 1回手を叩くと2粒に、2回手を叩くと4粒に、3回手を叩くと8粒になる」
アスカ
「何が……言いたいの?」
キツネ男
「さて、そこで算数の問題だ。 果たして、このコメがごはん茶碗いっぱいになるまでの間に、何回手を叩かなければならないだろうか? 答えは13回だ。 さらに9回手を叩けば、コメ俵1ぱい分になる。 さらに7回手を叩けば、蔵いっぱいのコメ粒になるんだ」
アスカ
「……」
キツネ男
「このコメ粒は、つまり、わが人型の攻撃力だ。 1体の攻撃力が小さくても、こうして攻撃ごとに数を増やしていけば、君が思うよりも早く大ダメージを与えられるということだ」
『キツネ男』がこのような説明をしている間に、『不動の解脱者』を取り囲む人型が高速回転を始めて一斉に攻撃態勢に入る。
『不動の解脱者』が迎撃するも、その攻撃をかいくぐって突き刺してくる人型多数。
まとわりつく人型を振り払う。なんとか全滅させるが、その数、さらに倍となる。
キツネ男
「アーハッハッハ。 さて、いつまでもつかな。 そろそろ、ダメージが実感として伝わっているのではないかな? 次は、さらに倍のダメージを与える!」
人型が攻撃態勢に入った。
アスカ
「……」
『不動の解脱者』は、迎撃の構えを解いて、あぐらをかく。
キツネ男
「おぉ? どうした? 防御の姿勢はとらないのか? それとも、あきらめて、大人しくわが『長手足』に斃されてくれるのかい?」
アスカ
「私は、仲間を信じる! それまで、この戦い、耐え抜いてみせる!」