あなたはひょっとしたら盗掘者
クラハシの丘に向かうアスカ、ヒロヨ、オビトの3人を人型が襲う。その動きから、人型は強い霊気を相手に機械的に攻撃しているだけと見抜く3人。そこで、霊気がもっとも強いアスカを残し、紅蓮の戦士『不動の解脱者』で対抗させながら、ヒロヨとオビトは人型を操る術者を探す。
アスカが1人になると、藪をかき分け、その術者がアスカの目の前に現れた。
???
「おや? 人型が強い霊気を捉えたと思って、たどって来れば、古墳の主ではなく、守護霊使いとな? それもまだ子ども」
アスカ
「何者?」
???
「こういう場所に守護霊使いがいれば、わが人型が混乱してしまう。 これでは古墳の主を探し当てるのも難儀する。 どうしたものか」
アスカ
「あなたはひょっとしたら盗掘者! この人型があなたの仕業なら、何とかしてくれないかしら」
???
「ご主人からは、今回の古墳探索は秘密裡にと言われているのだが、子どもとはいえ、見つかったのはマズイかな」
アスカ
「何をさっきから一人でブツブツと! 名前ぐらい、名乗ったらどうなの?」
???
「この子の身なり? 相当の貴族とみえる。 ならば、このまま返しては秘密がもれる。 うむ、決めた。 ここでこの子を始末してしまおう。 よし、そうしよう」
アスカの前に現れた、中年男、彼女を「始末」するという。
精神を研ぎ澄ましてよく視ると、この中年男の横には、身の丈2メートルは超えようかというやせ型猫背の大男。この中年男の守護霊らしい。
すでに何十にも増殖している人型が高速回転の攻撃態勢に入っている。
これを『不動の解脱者』の手拳ラッシュで撃墜。
???
「ふむ、そこそこ動ける守護霊のようだ。 だが、撃ち漏らしもあるようだ」
アスカ、右腕にかすかな刺痛。『不動の解脱者』の同個所に人型が突き刺さる。回転しながら肉をえぐっている。
守護霊の左拳でその人型を吹き飛ばす。
だがこれで、人型の数はさらに倍。
アスカと中年男のにらみ合い。
アスカ
「そろそろ、名乗ってくれても良いのでは?」
???
「ん? さっきから、何か聞こえると思ったら、君が話していたのか。 『名乗れ』と? 残念ながら、自分には貴族に名乗れるだけの姓名がないんだ。 それだと『呼び名に困る』って? 自分は主人からは『キツネ男』と呼ばれている。 だから君も、自分のことを『キツネ男』と呼んで良い」
アスカ
「それでは『キツネ男』さん、名乗ったついでに、この人型の攻撃を止めてくれたら有難いのだけれども。 私には、どうして自分が『キツネ男』さんから攻撃されなければならないのか、分からないわ」
キツネ男
「そのことだったら、申し訳ない。 君が攻撃されなければならない理由が分からないとしても、自分には君を攻撃しなければならない理由があるんだ。 自分は、主人から秘密裡にこの場を調査するよう言われていたのだけれども、こうして君に見つかってしまった。 これでは秘密が守れないから、君を攻撃するんだよ」
アスカ
「そんな……滅茶苦茶!」
人型が再び高速回転の攻撃態勢に入る。
『不動の解脱者』の手拳ラッシュで撃墜。
しかし今度は、4から5体、撃ち漏らした。その4、5体が、『不動の解脱者』の身体を突き刺す。アスカ、身体のあちこちに刺痛感。
撃ち漏らした人型を、『不動の解脱者』が振り払う。
アスカ
「フン! 私を『攻撃する』って言っても、あなたの攻撃は大したことないわね。 こんな、蚊が刺したような攻撃では、私の『不動の解脱者』は斃せないわよ!」
キツネ男
「そうだ。 確かに、わが守護霊、黒い兄弟『長手足』の人型の攻撃力は、単体では大したことはない。 けれどもね……」
『不動の解脱者』が墜とした人型の数がさらに増殖する。
もはや数えきれないほどの無数の人型が『不動の解脱者』を取り囲み、高速回転の攻撃態勢に入った。