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欲望の感染者  作者: 影山 コウ
第三章 キメラ編
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第八十四話 過去再び

「フッ!!」


 アキラが変形した前腕にて、キメラの頭を切り裂く。

 俺達でもう何体倒したのか、途中からは数えてもいない。


「ナイス、アキラ!」

「そっちにもキメラがいるからね、レイラ!」

「わかってる! 止まり……やがれッ!」


 俺は近付いてくる二体のキメラを能力の両手で掴み固定する。そこに、イクサさんと梶さんが近寄った。


「左は殺るよ!」

「なら俺は右だ! ハァ!!」


 左のキメラをイクサさんが撃ち抜き、右のキメラを梶さんがハンマーで叩き潰した。

 もはやパターン化した動きが出来ているが、なんせ数が多い。全員に疲労が蓄積しつつある。


「アー、めんどくさい! 僕の進化能力で一気に潰せば……」

「ダメだ、俺もお前も進化した後の疲労が未知数だろ。こんなとこで倒れたらどうする? 長距離の移動の時だけにしてくれよ」

「むぅ……」


 この会話も何度かやった。だが、やはり許可はできない。アキラの能力は移動でも助かってるし、なるべく温存したい。いつ疲労が襲ってくるのか分からないしな。


「二人とも集中しろよ。まだ来るぜ」

「ゲ、マジじゃん。流石のウチも疲れてきたな」

「堪えてくれよ美浜。まだまだアンタの力が必要だ」

「わかってるって迅太郎。ウチの進化能力は体力をあんまり消費しないしな」


 そう言いながらイクサさんは両手に拳銃のエアガンを握った。

 体力消費が少ない上、実際の重火器よりも威力のある重火器をいつでも扱える能力……かなり便利だ。多数の敵を相手取るには最適だな。偶然とはいえ、梶さんと少し似た能力だ。


 ……全員が全力でキメラや兵士と戦いながら、爆発のあった別の場所へと向かう。

 黒川が守ったとは言え、作田さんが狙われたということはやはり監獄にいる能力者を出して混乱を招くつもりだろう。

 もしくは、仲間として引き入れるつもりか。

 どちらにせよ止めなければならない。


「……見えた、あそこだ!」


 梶さんが指差した方向には黒煙が上がっていた。爆発のあった場所と近い、ここだろうな。

 聞いていた監獄の方向とも合う。


「誰かいないか!!」


 大声で呼び掛けるも、返事はない。アキラが傍らで鼻を抑えていた事から……悪臭が立ち込めていることだけは分かった。俺ですら匂いを感じるほどだ。


「う、う……」

「! おい、大丈夫か!」


 煙の中から監獄の職員らしき男が覚束ない足取りでこちらへと向かってきて、咄嗟に近付いて肩を貸した。


「はぁ……助かった、のか……」

「落ち着いて話をしてくれ。……なにがあった?」

「それは……」


 職員は、荒い呼吸を整えた後に事の顛末を話してくれた。

 普通の強さではない特別なキメラ。そのキメラが爆発し混乱を起こして裏口から犯罪者を逃がしたとのことだ。

 更に、監獄に在住していた進化能力者三人を殺した謎の男女。

 俺達のまだ知らない戦力が監獄に集中していたのか。


「監獄に在住していた能力者って……伊達、時枝、反田だろ? アイツらをたった二人で……」

「……まさかと思ったが……」

「アンタも知ってたかい、迅太郎。三人とも支部に所属はしていないが、監獄の守りを任される程の実力者だ。下手すりゃウチよりも強いかもなぁ」


 とイクサさんは話す。

 そんな連中をたった二人で殺したのか……もし俺達がその二人と戦えば無事では済まなかっただろうな。


「逃げた犯罪者共はどうなった?」

「弱い連中ならこちらの残った戦力ですぐに捕らえることが出来たみたいだが……強い連中には逃げられた。この前収監されたばかりの鋼って奴とかにもな……」

「鋼……!」


 鋼。遠阪さんを追い詰めた能力者か。それと同等の連中が何人も逃げたとなると……厄介なことになりそうだ。


「……情報感謝する。ゆっくり休んでくれ」

「あぁ……そうするよ」


 職員は気を失った。


 しばらくその場で状況把握のために彷徨いていたところ、殺された兵士や伊達達の凄惨な遺体を発見した。


 そして、伊達の遺体の違和感に気付く。


「伊達さんの遺体……この()は……!?」


 見覚えのある、不自然な穴が胴体に残されていた。俺の両親を殺した犯人(くうどう)は死んだ。それは間違いない。それでも、この恐ろしく精巧な穴……忘れたくとも忘れられなかった両親の遺体と全く同じだ。一体、何が起きてるんだ?


「空童の能力とそっくりだな。いや、そっくりというより……」

「はい、梶さん。()()()()()。他の人ならともかく、俺が見間違えるはずがない」

「……だな」

「考えても仕方ないでしょ。今考えるべきなのはこれからどうするかってとこだね」

「監獄襲撃の阻止は失敗、キメラや組織の連中はかなり数が減ってきてるみたいだし……残党狩りってとこか」

「だなぁ。ウチもウチの支部がどうなったか気になるし、早めに終わらせたいとこだ」

「…………ですね」


 後ろ髪を引かれる思いだが、その場を後にすることにした。


 ※


「━━おや、珍しいお客さんですね」


 とある一室。優しげな口調で喋りながら、初老の男性は振り返る。そこには、青い髪色で長髪の男性が立っていた。


「なんの用事でしたか? 蒼貞さん」

「なに、大した用事じゃないさ榊さん。アンタにちょいと聞きたいことがあってな」

「ほう?」


 蒼貞は頭を少し掻き、榊を睨んだ。


「━━アンタが、組織のリーダーか?」





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