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欲望の感染者  作者: 影山 コウ
第三章 キメラ編
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第八十五話 諸悪

 ━━思えば、違和感は昔からあったんだ。


 選ばれた五人はそれぞれに役割があり、その中の三人は()()が必要だった。

 俺も焔も悩みに悩んで、それぞれ答えを出した。

 しかし、榊さんは。


 いつまでたっても、目標を教えてはくれなかった。


 *


「……正気ですか?」


 榊さんは目を丸くし、俺の目を見た。

 俺だって信じたくはない。だが、この違和感に答えを出さなくては……先に進めない。


「俺だって信じたくはない。だからもし、俺の勘違いだってんならアンタに土下座でもなんでもして謝るさ」

「一応、理由を聞きましょうか。勘違いだと分かればそれで結構ですから。土下座もいりません」

「……そうか。なら……大人しく聞いてもらうぜ」


 俺は息を吸い込み、吐いた。……覚悟は決まった。後は確かめるのみだ。


「一番最初の違和感……は、後にしよう。まずは最近の違和感から話すぞ」

「……」


 返事はないが、榊さんは小さく頷いた。それを確認し口を開く。


「俺らが最後に集まった会議、覚えてるだろ?」

「ええと……焔さんの支部が襲撃された後の話ですか?」

「そうだ。黒川はいなかったけどよ」


 ()()()()のように引っ掛かっていた、些細な違和感だったんだがなこの時は。


「当時の会話を覚えているか? その時から俺の中で榊さんに対する違和感が強まったんだ」

「榊さん。アンタ……()()()()()()()()()()()()()()()

「……!」


 榊さんの眉がピクリと動いた。


「アナザー? ……空間能力が重なった例の異世界ですよね。アレは会議をする前から支部長には伝わっていた情報の筈ですが……」

「あ、いや……すまん言い方が駄目だったな。言い直させてくれ」


 ……焦りが出ている。しっかりしろ俺。

 深く深呼吸をし、再び話す。


「アナザーの存在をって意味じゃない。アナザーの()()をなんでアンタが知ってたんだ?」

「だからそれは……」

「いや。確かにアナザーという異空間の事は支部長に情報が行き渡っていたさ。でも、アンタはあの時こう言ったんだぜ?」


「『能力者が作り出した空間が、いくつか折り重なって出来たであろう異空間の事でしたか?』ってな。そこまでの情報は俺の支部内でしか知るヤツはいないし、外に洩らすほどウチのメンツは阿保じゃねぇ。なんでそんな情報を……俺が話す前にアンタが知ってたんだ?」

「……」


 榊さんの表情は変わらない。が、何か雰囲気が変わった気がする。


「……個人で調べてたからですよ。興味深い事例でしたし」

「アンタの支部と俺の支部は近くはない。わざわざ出向いてまで調べたと? それに、そこまでの情報を得ながらこっちには教えてくれなかったってか? 薄情だなァ」

「……っ」


 嫌な予感がじわじわと心の底から上がってくる。

 それでも、手は緩めない。


「根拠二つ目。アンタの支部のメンバーだがよ……いくら調べても前歴が一切出てこねぇ。まるで隠されてるみたいによ。()の人間を引き入れたとでも? 平和主義のアンタがやることとは思えない。……そんでよ、今だからこそアンタに再び聞きたい」


 一番聞きたかったことを、再び尋ねた。


「アンタはゼロとして……何を目標にしたいんだ?」

「━━━━」


 空気が凍り付く。言い表せないほどの緊張感が部屋に充満する。

 嫌な予感が、当たりやがったか。


「━━焔さんは『平等』を。蒼貞さんは『区別』を……それぞれ望みましたよね」

「あぁ。そうだな」

「素晴らしいと思います。()()では無いものを扱うという話になった時、大抵はその二つが選択肢になりますから。でもね」


 榊さんは手の平に()()()()を生成し、微笑む。


「まだ選択肢はあるんですよ。私にとって最善と言える選択がね」

「……それは?」


 その種を床へと落とす。


「『支配』ですよ。優れたものが上に立つ……当たり前の事ですから」


 種は床に当たった瞬間に発芽し、巨大な根子となり部屋を多い尽くした。


「っ!」


 後ろ手で構えていた水塊を操り、迫ってくる根子を切断する。

 結果的に攻撃は当たらなかったが……これではっきりした。はっきりしてしまった。


()()()()事で……良いんだよな? ━━『(さかき) 正剛(せいごう)』ッ!!」

「ええ! もう準備は整いましたから!」


 榊は再び種を生成し、両手で包み込む。また来るか、この狭い部屋だと次は防ぎきれない……!

 俺は両手を拡げ、水を収集する。


「無駄ですね、貴方の水では私の攻撃は防ぎきれない」

「自前の水じゃ確かにキツイかもな。だが、水分なら部屋中にあるじゃねぇか!!」

「! まさか」


 そのまさかだ。俺は榊が生やした木から水分を全て吸い取り、手元に集中させた。


「━━俺達が戦うには、ここは狭すぎるよなぁッ! 『水爆』!!」


 集中させた水を辺りに解き放ち━━部屋ごと吹き飛ばす。部屋は跡形もなく吹き飛び、俺はその場から飛び退き近くのビルの屋上へと着地する。


「……この程度で殺れる相手じゃねぇだろ。出てきな、狸ジジイ!」

「……はは、バレましたか」


 埃が舞う中、大樹の根で辺りを囲んだ榊が姿を現した。


「ですが、ここまで。まだ貴方と戦うつもりはありません……組織を作ったのはこの為ではありませんからね」

「ふざけんな。お前はここで倒す」

「出来るものならやってみなさい」


 榊の挑発に乗り、再び水を集中させる。だが、違和感に気付く。


「……くそッ!!」


 そして、違和感の正体に感付く。既に榊は……この場にいない。先程まで喋っていた榊は……根が榊に化けていただけの偽物だった。

 俺が水から水へ移動出来るように、榊も似たようなことが出来るのだろう。


「……支配なんかさせねぇぞ。お前にだけは、この世界の命運を握らせねぇ!!」






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