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私、いつ人間やめましたっけ?  作者: 雲梯
一章
20/21

20

 一つの授業が終わり、休み時間に入った。

 我は休み時間が入ると同時にティラウスを呼び、少し教室から席を外すことにした。


「ティラウス、少しいいか」

「あぁ」


 少ない返事が帰ってきたのを確認し、我はティラウスと共に教室を出た。


 暫く歩き、中庭に出た辺りで、近くの椅子に腰かける。

 我が座ったのに続き、ティラウスも椅子へと座った。


「ラレウス、どうして貴女がここにいる」


 開口一番に用件をぶつけてくるティラウスに、我は少し驚く。

 ラレウスの記憶をたどるに、彼はそこまで多弁な性格ではなかった。なので、彼から積極的な会話が始まるのが少し驚きだったのだ。


「其れについては長くなるのでまたの機会にしてくれんか」

「......わかった」


 正直ここまでの道のりについて、言い訳に近いものが思い浮かびすらしない。話すことができないので、軽く流しておく。

 これで、ティラウスの質問はなくなったはずなので我の質問に入ることにする。


「それじゃあ我の方からも聞かせてもらうぞ。何故、貴様が人間の住処にいる」

「......」


 質問を投げると少し黙り、下を向くティラウス。

 何か理由があることが容易に読み取れた。


「......一人の少女の護衛だ」

「護衛......?」

「あぁ、少し......私情の込んだ護衛だ。深くは話せない。すまない」

「いや、構わん」


 深い事情がありそうな口ぶりだが、どうやら深く詮索はしない方が良いだろう。

 これからの学校生活で龍仲間ができただけも我にとって収穫は大きいからの。


「そろそろ授業が始まる。戻るぞラレウス」

「そうじゃな」


 ティラウスに手を引かれ乍ら、我は中庭を後にした......



 2時間目は魔法の実践授業であった。

 皆で練習場に移動し、先生の教えの下実際に試す授業だ。

 総合科に来る生徒は素質がある者から、元からできる者までいるため、元からできる者にとって初歩の授業は退屈なものとなるだろう。

 しかし、そういったことが起こらぬよう、学校側は授業中ある程度出来る者同士での模擬戦を許可していた。

 こうすることによりともに切磋琢磨し、魔法の腕が磨けているのだった。


「本日教える魔法は、火属性魔法です」


 火属性。そう聞いて我は真っ先に、試験の日の炎を思い出す。

 あれは今考えただけで黒歴史だった。なぜ自分は後先考えず、あの火力で撃ってしまったんじゃ。

 まぁ、自分の黒歴史について今考えても仕方ない。

 今へ目の先の火属性魔法とやらを、覚えることに専念するとしよう。


「火属性魔法を覚えるためには、まず一番初歩の魔法を撃ってもらいます」


 そう言いながら先生は、背後にあった的へ向き直り詠唱を始めた。


「-炎神よ、ここにその力を宿せ-」


 一つの定型文らしき言葉を念じた瞬間、先生の前に魔法陣が現れる。

 しかし、この魔法陣だけでは魔法は撃てない。


「ファイア」


 一言を発した瞬間、先生の目の前に握りこぶしサイズの炎が出現し、正面の的を破壊した。

 

「「おぉ......」」


 クラスメイトからの歓声が上がる。

 だがしかし、我は一つだけ疑問に思うことがあった。

 それは、何故一々詠唱なんてするのかという点である。


「ラレウス、詠唱は人間にとってほぼ必要不可欠だ。あきらめろ」

「!?」


 急に隣で我の思考を読み取ったかのように発言したのは、ティラウスだった。

 しかし、何故必要不可欠なんじゃ......


「人間と龍とでは、魔力の循環方法が多少異なる。我々が一から創造するのに対し、人間は元から組たった魔法をその場に召還している形なのだ」

「そうなのか、やはり貴様は人間が好きなのじゃな」


 我がそう言うと照れたのか、少し頬を赤らめそっぽを向いてしまった。

 何となくだが、彼が人間を好いている事実に我も少しだけ嬉しくなった。


「それでは、実践に入って下さい。もう出来る人は二人組になり、自主練又は模擬戦を行ってくださいね」


 先生の声を皮切りに、生徒たちは立ち上がり、的の前へと移動していった。

 その場に残ったのは我とティラウスを合わせ、たった5人だった。


「残った私達で何かしますこと?」


 残ったメンツの中で一人のお嬢様らしき女が口を開いた。

 見た感じ、どこかの令嬢といった感じで高い気品が感じられる。

 顔も可愛いというよりきれいな感じで、将来は美人になるじゃろう。


「ここに残ったってことは、ある程度できるってことでいいんだよね?」


 次に発言したのはジェーンだった。少し笑みを含んだ言い方で周りに同意を求めた。


「うむ、我は人並じゃがな」

「俺もある程度だ」


 我とティラウスが同時に発言する。

 先程聞き忘れたが奴のステータス値はどうしているのだろうか。今後の参考のためにでも、聞いておきたい次第である。


「このクラスに僕に敵う奴なんているわけないだろ。僕は抜けるよ、せいぜい頑張りな」


 最後に言葉を発したのは、眼鏡を掛けた短髪の少年だった。

 どうやら少し増長しているようだ。恐らく、ここまで怖いもの知らずで育ってきたか、天才とでも囃し立てられて育ってきたのだろう。


「ラレウス、気にするな。奴は魔法の才はあるが、龍には到底かなわぬ。気にかけるだけでも無駄だ」

「大丈夫じゃ、気にしてはおらぬよ。少し気になっただけじゃ」

「そうか」


「んー、とじゃあ2対2で模擬戦って形でいいかな?」

「私は別に構わないわよ」

「我も異論はないぞ」

「俺もだ」


 ジェーンをまとめ役にし、上手く話をまとめることができた。

 模擬戦がどこまで許されるものか、ルールも知らぬ我だが、普通の範囲内に収まるよう頑張ろう。

 そう決意した。



 しかし、その決意はいともたやすく崩れるのだった。

世界最古で最強の龍のステータスの10分の1が一般の天才と同じなわけないじゃないですかヤダー!

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