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第177話 悪役なら受け取る想いを知る

グランディア領。


 春の終わり。


 街では。


 小さな式典が開かれていた。


「何の式典だ。」


 俺は首を傾げる。


「男爵様。」


 リリアが笑う。


「忘れているんですか?」


「?」


「グランディア領の発展記念日です。」


「……。」


 そんな日まで作られていたのか。


「大げさだ。」


「そう言うと思いました。」


 会場へ向かう。


 そこには。


 多くの住民。


 昔からいる者。


 新しく来た者。


 全員が集まっている。


「アルベルト男爵。」


 代表者が前へ出る。


「本日は。」


「感謝を伝えるために集まりました。」


「……。」


 嫌な予感がする。


「俺は。」


「感謝されるようなことは――」


「その言葉は禁止です。」


 リリアが小声で言う。


「……。」


 先回りされた。


 代表者は笑う。


「男爵様は。」


「いつもそう言います。」


「自分では何もしていないと。」


「でも。」


 街を見る。


「この場所があるのは。」


「最初に変えようとした人がいたからです。」


「……。」


 沈黙。


「ありがとうございます。」


 頭を下げる。


 一人。


 また一人。


 住民たちが続く。


「……。」


 昔。


 こんな光景は。


 想像もできなかった。


 誰かに必要とされること。


 誰かから感謝されること。


 それを。


 避けていた。


「男爵様。」


 小さな声。


 子供が近づく。


「これ。」


 渡されたもの。


 小さな木製の飾り。


「作りました。」


「……。」


「何だ。」


「男爵様の家です。」


 見る。


 不格好。


 でも。


 丁寧に作られている。


「……。」


「ありがとう。」


 自然に言えた。


 子供が笑う。


「やっぱり。」


「優しいですね。」


「……。」


 否定しようとして。


 やめた。


 夜。


 屋敷。


 庭。


「今日は。」


 リリアが言う。


「嬉しかったですか?」


「……。」


 手元の木製の飾りを見る。


「ああ。」


「珍しい。」


「素直ですね。」


「……。」


 少しだけ。


 笑う。


「昔なら。」


「こんなもの。」


「邪魔だと思っていた。」


「でも。」


 飾りを見る。


「今は。」


「大事だと思う。」


 リリアは微笑む。


「それが。」


「変化ですね。」


 その時。


 イリスが現れる。


「報告があります。」


「またか。」


「今回は。」


「最後の確認です。」


 光が浮かぶ。


『アルベルト・フォン・グランディア』


『守ったもの』


『確認』


『世界』


『ではない』


『力』


『ではない』


『名誉』


『ではない』


 少し間。


『人々の想い』


『確認』


「……。」


 俺は街を見る。


 明かり。


 声。


 生活。


 これが。


 残ったもの。


「悪くない。」


 リリアが笑う。


「やっぱり。」


「それですね。」


「何が。」


「男爵様の一番の褒め言葉です。」


 空には星。


 静かな夜。


 まだ。


 物語は終わらない。


 しかし。


 終わりへ向かう準備は。


 もうできていた。

第177話を読んでいただきありがとうございます!


今回は、アルベルトが「与える側」だけではなく「受け取る側」になる回でした。


誰かを守ることだけではなく、誰かから向けられる感謝や想いもまた、大切なものだと気付く話です。

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