第142話 悪役なら不完全な未来を選ぶ
世界の境界。
管理者による。
完全修正システム。
それは。
世界そのものを書き換える力だった。
「修正開始。」
管理者の声。
白い空間が変わる。
戦争は消える。
争いは消える。
悲しみも。
失敗も。
全てが消えていく。
「……。」
リリアが周囲を見る。
「これは……。」
「理想の世界?」
セレナが呟く。
そこには。
争いのない街。
苦しむ人のいない生活。
一見。
完璧な世界。
「どうですか。」
管理者が言う。
「これが。」
「本来あるべき未来です。」
「……。」
俺は街を見る。
確かに。
綺麗だ。
誰も傷つかない。
誰も困らない。
でも。
「違う。」
管理者が反応する。
「なぜです。」
「不幸は存在しません。」
「全員が満たされています。」
「……。」
「だからだ。」
「?」
「満たされている。」
「それだけだ。」
管理者は理解できない顔をする。
「幸福。」
「苦痛のない状態。」
「それが幸福です。」
「違う。」
俺は答える。
「人は。」
「自分で選んだ結果だから。」
「嬉しい。」
「失敗したから。」
「次を考える。」
「……。」
「全部決められた世界じゃ。」
「自分の人生じゃない。」
管理者の魔力が揺れる。
「非効率。」
「失敗を許容する理由がありません。」
「そうだな。」
「……。」
「でも。」
「失敗するから。」
「変われる。」
その時。
街の映像が崩れる。
管理者が作った未来。
その中に。
一つだけ。
小さな変化。
少女が花を植える。
「……。」
管理者が止まる。
「予定外。」
イリスが分析する。
「管理者の世界では。」
「本来発生しない行動です。」
「なぜ。」
管理者が問う。
俺は答える。
「理由なんてない。」
「?」
「やりたいと思ったからだ。」
「……。」
管理者は初めて。
理解できないものを見る。
「感情。」
「選択。」
「偶然。」
「これらは。」
「世界を不安定にする。」
「そうだ。」
「だから。」
「面白い。」
観測者が言う。
「……。」
管理者を見る。
「あなたは。」
「世界を守ろうとしている。」
「でも。」
「世界の面白さを消している。」
「……。」
管理者の姿が揺れる。
「私は。」
「間違っているのか。」
「知らない。」
俺は言う。
「正しいかどうかなんて。」
「誰か一人が決めるものじゃない。」
「……。」
沈黙。
その瞬間。
管理者のシステムが暴走する。
『修正不能』
『予測不能要素増加』
『原因』
『アルベルト・フォン・グランディア』
「……。」
また俺か。
「本当に便利な原因だな。」
リリアが笑う。
「でも。」
「今度は少し違います。」
「何が。」
「原因であることを。」
「嫌がっていない顔です。」
「……。」
否定できない。
管理者は最後の力を解放する。
「ならば。」
「あなたの不完全な未来を。」
「最後まで確認します。」
白い世界が。
巨大な光に包まれる。
「来るぞ。」
俺は構える。
世界の管理者。
最後の力。
そして。
俺たちが選ぶ未来。
決着の時が近づいていた。
第142話を読んでいただきありがとうございます!
管理者が作る「完全な世界」と、アルベルトたちが選ぶ「不完全でも自分で歩む世界」の違いが描かれました。
管理者は悪意ではなく、守る方法が違う存在です。
次回、管理者との最終決着へ進みます!




