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第110話 悪役なら古代魔王を見逃す

 古代魔王封印領域。


 静寂が広がっていた。


 目の前には。


 かつて世界を滅ぼしかけた存在。


 古代魔王。


 その力は。


 今でも十分に危険だった。


「選べ。」


 古代魔王は言う。


「我を消すか。」


「それとも。」


「新たな時代を受け入れるか。」


「……。」


 全員が俺を見る。


「なぜ俺を見る。」


 リリアが笑う。


「男爵様だからです。」


「意味が分からない。」


 セレナも頷く。


「でも。」


「あなたが決めるべきだと思います。」


「……。」


 困る。


 こういう重要な判断。


 俺は苦手だ。


 悪役なら。


 迷わず消す。


 それが一番簡単だ。


 だが。


 古代魔王を見る。


 確かに危険な存在。


 でも。


 今は。


 ただ静かに立っている。


「……。」


「お前。」


「本当に世界を壊したいのか。」


 古代魔王は少し驚いた。


「何?」


「数千年前。」


「お前は世界を支配したかった。」


「だが。」


「今も同じなのか。」


「……。」


 古代魔王は黙る。


「分からぬ。」


「?」


「我が目覚めた時。」


「昔の記憶しかなかった。」


「破壊。」


「支配。」


「恐怖。」


「それだけだと思っていた。」


「……。」


「だが。」


 古代魔王は周囲を見る。


 人間。


 魔族。


 共に戦う姿。


「今の時代は。」


「我が知るものとは違う。」


「……。」


 魔王レオンハルトが言う。


「ならば。」


「新しい時代を見ればいい。」


 古代魔王は笑う。


「貴様も。」


「魔王として変わったのだな。」


「そうかもしれない。」


 沈黙。


 俺はため息を吐いた。


「面倒だ。」


「……。」


 全員が苦笑する。


「だが。」


 俺は古代魔王を見る。


「消す必要はない。」


「!」


 リリアが微笑む。


「男爵様。」


「条件がある。」


 古代魔王が聞く。


「何だ。」


「二度と。」


「勝手に世界を壊そうとするな。」


「……。」


「静かな生活の邪魔になる。」


 一瞬。


 沈黙。


 そして。


 古代魔王は。


 笑った。


「ははは。」


「そんな理由か。」


「そうだ。」


「……。」


「面白い。」


 古代魔王は目を閉じる。


「ならば。」


「この時代を見るとしよう。」


 巨大な魔力が少しずつ消えていく。


 封印領域に光が差し込む。


「終わった……。」


 リリアが呟く。


 セレナも息を吐く。


「世界最大の危機が。」


「こんな形で終わるとは。」


「……。」


 魔王レオンハルトが近付く。


「ありがとう。」


「アルベルト。」


「違う。」


「?」


「早く帰りたいだけだ。」


「……。」


 しかし。


 誰も信じていなかった。


 こうして。


 古代魔王復活事件は終結した。


 人間と魔族。


 長い争いの歴史に。


 新しい一歩が刻まれる。


 そして。


 その中心にいた男。


 アルベルト・フォン・グランディア。


 本人だけは。


「やっと静かになる。」


 そう思っていた。


 しかし。


 魔王城へ戻った翌日。


 一通の手紙が届く。


『王国より緊急連絡』


『アルベルト男爵へ』


『至急、帰還されたし』


「……。」


 俺は手紙を見る。


「またか。」


 静かな生活は。


 まだ始まらなかった。

第110話を読んでいただきありがとうございます!


古代魔王編、決着です!


アルベルトは破壊ではなく、未来を選ぶ道を取りました。


本人は最後まで「静かな生活のため」と思っていますが、人間と魔族の未来を変える大きな選択になりました。


次回、王国へ戻ったアルベルトを待つ新たな展開が始まります!

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