第1話 悪役男爵に転生した
初めまして。
数ある作品の中から本作を開いていただき、本当にありがとうございます。
基本的には勘違いコメディですが、シリアスな場面やバトル、領地経営、恋愛要素なども少しずつ入れていく予定です。
少しでも「面白そう」と思っていただけましたら、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは、第1話をお楽しみください。
目を覚ました瞬間、知らない天井が視界いっぱいに広がった。
木造アパートの安っぽい天井ではない。
金色の装飾が施された豪華な天井。
壁には大きな絵画。
窓には分厚いカーテン。
どう考えても俺の部屋じゃなかった。
「坊ちゃま!」
勢いよく扉が開き、一人のメイドが駆け込んでくる。
長い銀髪に青い瞳。
整った顔立ちをした美少女だった。
「お目覚めになられたのですね! 本当に……本当に良かったです……!」
涙まで浮かべながら俺の手を握ってくる。
「……誰だ?」
その一言で、彼女の動きが止まった。
「ぼ、坊ちゃま……?」
次の瞬間。
「っ……!」
頭が割れそうな激痛に襲われた。
知らない記憶が、一気に流れ込んでくる。
剣と魔法が存在する世界。
貴族が支配する王国。
そして俺の名前。
アルベルト・フォン・グランディア。
グランディア男爵家の嫡男。
……いや。
もっと重要なことを思い出した。
「これ……ゲームの世界か。」
前世で何百時間も遊んだRPG。
その中でもプレイヤーから嫌われていた悪役貴族。
それがアルベルトだった。
主人公を見下し。
領民を苦しめ。
使用人を道具扱いし。
最後は主人公に討たれる。
ルートが変わっても結末だけは変わらない。
処刑。
討伐。
没落。
待っているのは破滅だけ。
「ははっ。」
思わず笑ってしまう。
よりによってこんな奴か。
普通なら未来を変えようと努力するんだろう。
善人になって。
主人公の仲間になって。
生き残ろうとする。
「……でも。」
そんなの、つまらない。
せっかく悪役に転生したんだ。
「最後まで悪役を貫いてやる。」
誰よりも傲慢に。
誰よりも冷酷に。
誰よりも最低な男爵になってやる。
使用人なんてこき使えばいい。
領民なんて震え上がればいい。
貴族どもも主人公も、全員敵に回してやる。
それで最後に討たれるなら本望だ。
「坊ちゃま……。」
メイドが震えた声を漏らした。
「ご自分が悪者になることで、この領地を変えようとなさるのですね……。」
「……は?」
「命を落としかけたことで、そのようなお覚悟を……。」
「違う。」
「皆に憎まれてでも、領民を守ろうと……。」
「だから違う。」
なんでそうなる。
俺は本当に悪役になると言っている。
誰かを守るつもりなんて一ミリもない。
するとメイドは、涙を拭きながら微笑んだ。
「坊ちゃまは昔から、不器用なお方ですものね。」
「…………。」
話が通じない。
まあいい。
口で説明しても無駄なら、行動で示すだけだ。
俺は悪役になる。
本気で。
誰もが認める最低最悪の男爵になる。
そうすれば、この勘違いも終わるはずだ。
――この時の俺は、まだ知らなかった。
俺の悪事は、これから先すべて"善行"として受け取られてしまうことを。
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これからアルベルトの勘違い劇はどんどん加速していきますので、ぜひ次回もお付き合いください!




