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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第九十四章 忽然たる力の収束

左前方ひだりぜんぽう病蛇小组びょうじゃこぐみ発見はっけん大型おおがた野獣やじゅう膠着状態こうちゃくじょうたいにある」0.5秒後赤舌あかした詳細しょうさい追記ついき:「角三かくぞう紅岩蟒こうがんうわばみ確認かくにん交戦相手こうせんあいては……猪王いのししおうだ!」


組員くみいんたちの顔色かおいろかすかにうごいた。


猪王いのししおうか。蛊虫こちゅう合成ごうせい猪牙いのししのきば必要ひつよう猪王いのししおうきば最適さいてきだ」方源ほうげん胸中きょうちゅうひらめく。じつ以前いぜんからねらっていた。


猪王いのししおうか?」水色みずいろ長髪ながかみ女蛊師じょせいこしまゆげた。


ほかにいねえよ。病蛇小组びょうじゃこぐみ実力じつりょくめるなんて無理むりぎる」老蛊師ろうこしあざけるようにはならした。


王老漢おうろうかんでもやま地形ちけい把握はあくできるのに、青茅山せいぼうさん縄張なわばりにする二転蛊師にてんこしたちが猪王いのししおう放置ほうちしてるのには理由りゆうがある。


赤山あかやま沈黙ちんもくやぶり:「支援しえんせよ」


「フザケタ真似まねしやがって、感謝かんしゃされるかよ」老蛊師ろうこし舌打したうちした。


支援しえんしなくても、こいつをおくとどけなきゃならんだろ!」赤城あかしろ方源ほうげん横目よこめにらみつけ、苛立いらだたしげにった。


隊列たいれつ左前方ひだりぜんぽうゆるやかに方向転換ほうこうてんかんした。


赤山あかやま)たちは普段ふだん)古月角三こげつ かくぞう)軽蔑けいべつ)していたが、同族どうぞく)として外敵がいてき)直面ちょくめん)すれば、たと)不仲ふなか)でも協力きょうりょく)する。


これがこの世界せかい)家族かぞく)結束力けっそくりょく)だ。


この結束力けっそくりょく)こそが百年ひゃくねん)、いや千年せんねん)つづ)名家めいか)ささ)えてきた。


やみ)なか)一行いっこう)はやし))窪地くぼち)到着とうちゃく)した。


病蛇小组びょうじゃこぐみ)四人よにん)猪王いのししおう)かこ)激戦げっせん))ひろ)げていた。


戦場せんじょう)中心ちゅうしん)ではぞう)ほどもある猪王いのししおう)が、海碗うみわん)ほどのふと)さのあか)蟒蛇うわばみ)から))っていた。


暗赤色あんせきしょく)岩塊がんかい)おお)われた巨蟒きょぼう)高温こうおん)はな)ちながら、くさり)のように猪王いのししおう)からだ)))いていた。


猪王いのししおう)怒号どごう)を上げ、白銀はくぎん)きば)闇夜やみよ)))きながら地面じめん)ころ)まわ)っていた。


全身ぜんしん)大小だいしょう)きず))い、)切断せつだん)されていた。赤黒あかぐろ)))げた傷口きずぐち)巨蟒きょぼう)体熱たいねつ)あぶ)られていた。


赤山組あかやまぐみ)距離きょり))観察かんさつ)つづ)けた。


老蛊師ろうこし)状況じょうきょう)把握はあく)するとはな)わら)った:「道理どうり)病蛇びょうじゃ)手出てだ)しできたわけ)だ。元々(もともと)傷付きずつ)いた猪王いのししおう)横取よこど)りやがって」


「この猪王いのししおう)黒豕蛊こくしこ))ってるかも!」赤城あかしろ)興奮こうふん)して)かがや)かせた。


方源ほうげん表情ひょうじょううごかさず、静観せいかんしていた。


そのとき角三かくぞうたち四人よにん状況じょうきょう気付きづき、最外縁さいがいえんにいた後方支援こうほうしえん古月空井こげつ くうせい戦闘圏せんとうけんはなれ、ってきた。


赤山様あかやまさまでしたか。こちらは問題もんだいありません。前線ぜんせん獣群じゅうぐんおおいので、皆様みなさま支援しえん必要ひつようです」空井くうせい組員くみいんたちにげた。


「フン、解決かいけつできるだと? まえうそをつきやがって。紅岩蟒こうがんうわばみはもう限界げんかいだろ」老蛊師ろうこし毒舌どくぜついた。


戦利品せんりひん)けられるのがいや)なだけだ」水色みずいろ)長髪ながかみ)女蛊師じょせいこし)角三かくぞう)たちの本音ほんね)露骨ろこつ)指摘してき)した。


「この猪王いのししおう)はおまえ)たちのものだ」赤山あかやま)老蛊師ろうこし))やった。


老蛊師ろうこし)不満ふまん)そうにはな))らしたが、こし))しろ)粘液ねんえき)の蜘蛛のくものす)))した。


空中くうちゅう)拡大かくだい)した蜘蛛のくものす)猪王いのししおう)くる))む。猪王いのししおう)はげ)しくあば)れて何本なんぼん)ものいと)))いたが、すぐには脱出だっしゅう)できなかった。


このすき)病蛇角三びょうじゃかくぞう)紅岩蟒こうがんうわばみ)撤収てっしゅう)治療担当ちりょうたんとう)女蛊師じょせいこし)とも)急治療きゅうちりょう)開始かいし)した。


紅岩蟒こうがんうわばみ)岩肌いわはだ)には激戦げきせん)による無数むすう)裂痕れっこん)はし)っていたが、治療光線ちりょうこうせん))びるにつれ、次第しだい)修復しゅうふく)されていった。



「ほうげん、もうかえ)れよ。いつまで我々(われわれ)のぐみ)居座いすわ)ってんだ?」赤城あかしろ)嫌味いやみ)たっぷりに)はな)った。


方源ほうげん)はゆっくり一歩いっぽ)))し、赤山あかやま)かげ)から姿すがた)あらわ)した。


古月空井こげつ くうせい)赤山あかやま)巨体きょたい)さえぎ)られ、方源ほうげん)気付きづ)いていなかった。かれ))つけると表情ひょうじょう)微妙びみょう)ゆが)んだ。


戦場せんじょう)中心ちゅうしん)角三かくぞう))り返り、方源ほうげん)発見はっけん)するや歓声かんせい))げた:「)たか!蜘蛛のくものす)限界げんかい)だ!ちから)自慢じまん)貴様きさま)猪王いのししおう))さえつけてもらう!時間稼じかんかせ)ぎだ!」


防御蛊虫ぼうぎょこちゅう)なしに一転いってん))猪王いのししおう)ちか)づくのは)らかな危険きけん)だ。


赤山あかやま)方源ほうげん)一瞥いちべつ)し:「)くぞ」


そう)のこ)すと、なん)未練みれん)もなくきびす)かえ)した。猪王いのししおう)価値かち)かえり)みる様子ようす)もない。


赤山組あかやまぐみ)撤退てったい))て、角三かくぞう)たちは内心ないしん)ほっとむね)))ろした。終始しゅうし)感謝かんしゃ)一語いちご)もなかった。


角三かくぞう)ふたた)怒鳴どな)った:「ほうげん!はや)くしろ!蜘蛛のくものす))たねえ!今回こんかい)はたら)次第しだい)脱走だっそう)つみ)見逃みのが)してやる!」


「わかった」方源ほうげん)素早すばや)猪王いのししおう)近寄ちかよ)り、両手りょうて)きば)つか)んで)さえ)んだ。猪王いのししおう)あば)れるちから)急激きゅうげき)おとろ)いだ。


「よくやった!」角三かくぞう))たた)えながらも、三角さんかく))おく)ひや)やかなひかり)またた)いた。


角三かくぞう方源ほうげん殺害さつがいするつもりはなかった。組員くみいん死亡しぼう一族いちぞくからの評価ひょうかげ、利益りえきはんするからだ。


かれ叔父おじ古月凍土こげつ とうどとの約束やくそく通り、方源ほうげん成長せいちょうおくらせるだけ。十六歳じゅうろくさいまでばせば報酬ほうしゅうられる。


実際じっさいかれはケチで陰険いんけんだが殺意さついはない。蛊師殺こしごろしは刑堂けいどう徹底調査てっていちょうさまねくリスクがおおぎる。なにより一族いちぞく理念りねん――「みずまさる」が浸透しんとうしている。親殺おやごろしや妻奪つまうばいでもないかぎり、同族殺傷どうぞくさっしょうきない。


古月族長こげつぞくちょう学堂家老がくどうかろうさとしたように、一族いちぞくつなぐのは制度せいどだけでなく、家族愛かぞくあいだ。


組織そしき存続そんぞくには制度せいど価値観かちかん二柱ふたはしら不可欠ふかけつ


いま)こそ方源ほうげん)負傷ふしょう)させ、山寨さんさい)寝込ねこ)ませる絶好ぜっこう)機会きかい)二転突破にてんとっぱ)などゆめ)のまたゆめ)さ。ただし直接手ちょくせつて)くだ)せばバレる。獣潮じゅうちょう)野獣やじゅう)利用りよう)しよう」


角三かくぞう)冷笑れいしょう))かべつつ)う:「ほうげん、あとどれくらい)つ?」


「まだ大丈夫だいじょうぶ)です。組長くみちょう)安心あんしん)を」方源ほうげん)返事へんじ)力強ちからづよ)い。


結構けっこう)華欣かきん)腐血草蛊ふけつそうこ))えろ」角三かくぞう)紅岩蟒こうがんうわばみ)治療中ちりょうちゅう)めい)じた。


承知しょうち)女蛊師じょせいこし)まえ))る。


野猪王いのししおう)そば)両小指りょうこゆび))てた。つめ)から))いた紫藤むらさきふじ)紋様もんよう)かす)かにひか)る。



淡紅色たんこうしょく赤鉄真元せきてつしんげんかびがり、彼女かのじょしろ可憐かれん小指こゆびからみ、紫藤むらさきふじ紋様もんようまれていった。


藤蔓とうまん突如とつじょ活性化かっせいかし、つめからほそ触手しょくしゅした。


へびのようにうごめ触手しょくしゅ猪王いのししおう口角こうかくがり、きばつたわって腹部ふくぶふか侵入しんにゅうしていく。


「フフフ……」やみまぎれた方源ほうげん口元くちもと不気味ぶきみがった。


ほかもの血縁けつえんおもんぱか殺意さついおさえるなかかれ一族いちぞく価値観かちかんなど微塵みじんにしていない。


猪王いのししおうきばけていたちからきゅういた。


「ガオオオッ!!」猪王いのししおう怒号どごうとも全力ぜんりょく解放かいほう白銀はくぎんきばひらめき、方源ほうげん両手りょうてきばさえつけたまま、巨大きょだい衝撃しょうげき空中くうちゅうほうげられた。


猪王いのししおうくびまわし、長大ちょうだいきば横薙よこなぎにひらめく。かたわらにいた女蛊師じょせいこし突然とつぜん事態じたいおどろき、


「キャアァァッ!!」


悲鳴ひめいむなしく、きば水色みずいろ長髪ながかみはらった。バキッとおとてて胴体どうたいが真二(まっ二)つに)れ、


女蛊師じょせいこし)藁人形わらにんぎょう)のように高空こうくう)))ばされ、地面じめん)たた)きつけられた。うつく)しい)見開みひら)いたまま、即死そくし)した。

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