表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
92/573

第九十二章 未来遙遙在望

「ほうげん、頑張れ!たすけにたぞ!」角三かくぞう心配しんぱいそうな表情ひょうじょうさけぶと、大股おおまた部屋へやんだ。


しかしつぎ瞬間しゅんかんかれはそのこおいた。


部屋へやにはだれもいない。方源ほうげん姿すがたはなかった。


四人よにん沈黙ちんもくつつまれた。


「どうなってるんだ!やつはどこだ!?」角三かくぞう突然とつぜん沈黙ちんもくやぶり、じといかりがざったこえした。


扉前とびらまえで長々(ながなが)とえんじていたのは、方源ほうげん不在ふざいだとらぬ一人芝居ひとりしばいだった。


三人さんにんかお見合みあわせ、この結果けっか予想よそうだにしていなかった。


奇妙きみょうはなしです。方源ほうげんがいないなら、なぜとびらかみっていたのでしょうか?」空井くうせい慎重しんちょうくちはさんだ。


家主やぬしんでい!」角三かくぞうあしとびらばしながら怒鳴どなった。


「おまえさがしてるんじゃねえ!さわぎやがって、とびらまでこわしやがって。わかいのによくもまあ……」家主やぬし老人ろうじんつよ口調くちょうかえした。


古月山寨こげつさんさい余剰よじょういえせるものは、当然とうぜん蛊師こしである。


蛊師こしちから地位ちい凡人ぼんじん完全かんぜん凌駕りょうがしていた。凡人ぼんじんがこのしゅ商売しょうばいいとなむことなど不可能ふかのうで、実際じっさい彼等かれら不動産ふどうさんたない。


山寨さんさいすべての家屋かおく古月一族こげついちぞく所有物しょゆうぶつだった。ここに凡人ぼんじんは全て(すべて)飼育しいくされた農奴のうど使用人しようにんである。


先輩せんぱい私達わたしたち組員くみいん少年しょうねんさがしています」家主やぬしたいし、角三かくぞう態度たいどあらためてこたえた。


家主やぬしのような年老としおいた蛊師こしは、もはやそとはたらいてはいないが、人脈じんみゃくつな)がりを保持ほじ)している。表立おもてだ)って活動かつどう)しなくても、依然いぜん)影響力えいきょうりょく)は大きい。


なに)手札てふだ)人脈じんみゃく)なしで、よくも商売しょうばい)などできようか?


この世界せかい)平和へいわ)時代じだい)ではない。武力ぶりょく)略奪りゃくだつ)蔓延はびこ)っている。


家主やぬし)くび))り、かた)口調くちょう))った:「老夫ろうふ)房客ほうきゃく)行方ゆくえ)など)らん。だがとびら)蹴壊けこわ)したなら、賠償ばいしょう)せよ」


「はは、当然とうぜん)賠償ばいしょう)だ」角三かくぞう)は作りわら)いを)かべ、内心ないしん)ではいか)りをおさ)えながら元石げんせき)支払しはら)った。さらにすこ)多目おおめ)はら)った。


家主やぬし)表情ひょうじょう)きゅう)なご)やかになった:「その部屋へや))りた少年しょうねん)なら、一日いちにち)もど)ってきてない。一ヶ月分いっかげつぶん)家賃やちん)はら)い、昨日きのう)あさ)大量たいりょう)物資ぶっし)))んでから、石炭せきたん)安売やすう)場所ばしょ)たず)ねてきたわい。山寨外さんさいがい)ひがし)たに)にある露天掘ろてんぼ))おし)えてやったら、れい))って)ったきりだ」


「そうか」角三かくぞう)部屋へや)様子ようす)見回みまわ)す。


たし)かに布団ふとん)真新まあたら)しい。つくえ)椅子いす)中古ちゅうこ)だが、頑丈がんじょう)そうだ。


ストーブのなか)から)っぽで、石炭せきたん)はい)っていない。角三かくぞう)ふか)いき))き、むね)のつかえが)りた。


「ほうげんは石炭堀せきたんぼりに手間取てまどってるんだろう。まぁ明日あしたまたよう」角三かくぞう率先そっせんして部屋へやた。


しかし三日目みっかめになっても、方源ほうげんあらわれない。


四人よにん部屋へやたたずみ、ためらいをかくせずにいた。


石炭堀せきたんぼりにこんな時間じかんかかるわけない。閉関へいかんよう大量たいりょうさいってるのかもしれんが……あまりにおそい。もしかしたらなに)遭難そうなんしたのでは?」空井くうせい)推測(すいそく)した。


角三かくぞうかすかにうなずき、方源ほうげんそろえた布団ふとん)やストーブを指差ゆびさしてった:「あのケチ野郎やろう一月分いちげつぶん)家賃やちん)はら)い、これだけ物資ぶっし)そろ)え、かみ)まで)っていたんだ。ここで長期閉関ちょうきへいかん)するつもりだったのに……不運ふうん)にもおおかみ))拡大かくだい)して周辺しゅうへん)野獣やじゅう)あば)まわ)ってるからな。もしかしたら……」


組長くみちょう)慧眼けいがん)!」二人ふたり)女性組員じょせいくみいん)異口同音いくどうおん)追従ついしょう)した。


角三かくぞう)昂然こうぜん)わら))げた:「ハハハ!あいつの始末しまつ)こま)ってたが……野鹿のじか)任務にんむ)いそ)がずにしとけ。まん)がいいち))でぼろぼろの死体したい))つけでもしたらたす)けなきゃならんだろう?」


「ククク……」三人さんにん)組員くみいん)おも)わずわら)った。



四日目よっかめ


空竅くうきょうの中で、墨緑色ぼくりょくしょく波濤はとうなくがり、晶膜竅壁しょうまくきょうへきつづけていた。


半透明はんとうめいしろ晶膜しょうまくにはふかひびれが縦横無尽じゅうおうむじんはしっている。


これらは方源ほうげん三日三晩みっかみばんぶっとおしで不眠不休ふみんふきゅう修練しゅれんつづけた成果せいかだ。れなくなったときだけ、素早すばや食事しょくじり、よう程度ていどだった。


このあいだ方源ほうげん意図的いとてき衝撃しょうげきおさえつつ元石げんせきから天然真元てんねんしんげん吸収きゅうしゅうつづけた。そのため青銅元海せいどうげんかい水位すいい四割四分よんわりよんぶから二割にわり程度ていどまでしかっていない。


時間じかんながれ、青銅元海せいどうげんかい水位すいい一割三分いちわりさんぶにまで低下ていかしたとき、ついに晶膜しょうまく限界げんかいむかえた。


ガラガラッ……


あつ堅固けんごだった晶膜しょうまく崩壊ほうかいし、無数むすう結晶片けっしょうへん元海げんかいそそいだ。った水滴すいてきまたたく間にひか白点はくてんへとわりった。


晶膜しょうまくわりにあらわれたのは真新まあたらしい白光はっこうはなまく二転にてん特有とくゆう光膜こうまくで、一転いってんときよりもつよかがやいている。


同時どうじに、元海げんかいそこ浅紅あさべにいろ真元しんげん墨緑色ぼくりょくしょくうみじりはじめた。


二転初階にてんしょかい赤鉄真元せきてつしんげんだ!


成功せいこうだ……ついに二転にてん突破とっぱした!」方源ほうげんがパッと見開みひらく。薄暗うすぐら部屋へや電光でんこうはしった。




しかし直後ちょくごつよ眩暈めまいおそってきた。


四日三晩よっかみばんぶっとおしの高強度こうきょうど修練しゅうれんで、からだたなくなったか」方源ほうげん苦笑にがわらいし、ゆっくりととこになった。「邪魔じゃまはいらなかったということは、借家しゃくや仕掛しかけた偽装ぎそうこうそうしたんだな。このかね使つかった甲斐かいがあった。今夜こんやはしっかりやすんで、明日あした山寨さんさいもどるとしよう」


そうおもった途端とたんはげしい睡魔すいませてきた。


方源ほうげんまぶた必死ひっしにこらえ、不屈ふくつ意志力いしりょく枕元まくらもと布団ふとんからだかぶせた。


じてからわずか数呼吸すうこきゅうふかねむりにちた。


直前ちょくぜんまでの修練しゅうれん精神せいしん力を大幅おおはば消耗しょうもうしていたのだ。


このねむりは翌日よくじつ午後ごごまでつづいた。


目覚めざめた方源ほうげん精神せいしん大半たいはん回復かいふくしているのをかんじたが、ほねおくかすかな倦怠感けんたいかんのこっていた。


とびらひらき、五日いつかぶりに部屋へやからそとた。





この物音ものおとにすぐ一人ひとりおとこあらわ)れた。


細長ほそなが)))せた体躯たいく)――江牙こうが)あに)江鶴こうづる)だ。


やつれ)てた方源ほうげん))吐息といき))らした:「ようやく))たか。ふう、あと数日すうじつ))てこないと本当ほんとう)にドアをこわ)すところだった。おまえ)がここで)んだらおれ)責任せきにん)だ」


方源ほうげん)わら)ったままだま)っていた。


ふゆ)日差ひざ)しがまど)から))み、かれ)青白あおじろ)かお)一層いっそう)弱々(よわよわ)しく)せていた。


五日いつか)まえ)家主やぬし)石炭せきたん)情報じょうほう))えて)角三かくぞう)たちに痕跡こんせき)のこ)したあと)かれ)山寨さんさい)))ふもと)むら)ひそ)んでいた。


以前いぜん)王老漢おうろうかん)一家いっか)とのつな)がりで、江鶴こうづる)なか)味方みかた)となっていた。この関係かんけい)利用りよう)し、方源ほうげん)むら)干渉かんしょう)されず二転にてん)突破とっぱ))たした。


いわ)))かく)洞窟どうくつ)の方がたし)かに秘匿性ひとくせい)たか)いが、安全あんぜん)とは)えなかった。角三かくぞう)たちが執念しゅうねん)さが)せば、隠し洞窟かくしどうくつ)発見はっけん)される危険性きけんせい)かんが)えられた。


花酒行者かしゅぎょうじゃ)遺産いさん)発覚はっかく)すればいのち)危険きけん)がある。慎重しんちょう)方源ほうげん)がこの危険きけん)おか)すはずもない。


江鶴こうづる)もと)相対的あいたいてき)安全あんぜん)だった。共有きょうゆう)する秘密ひみ)があるが、江鶴こうづる)口封くちふう)じにころ)動機どうき)はない。


蛊師こし)殺害さつがい)するリスクは大きおお)ぎる。利益りえき)不足ぶそく)では殺人さつじん)動機どうき)にはならん。むしろ秘密保持ひみほじ)のため、江鶴こうづる)方源ほうげん)安否あんぴ))にかけざるを()なかった。


方源ほうげん)死亡しぼう)すれば一族いちぞく)刑堂けいどう)うご)き、王老漢おうろうかん)一家いっか)秘密ひみ)あば)かれる可能性かのうせい)すらある。


方源ほうげん無事ぶじあらわれたのを)て、江鶴こうづる)本当(ほんとう)(むね)()()ろした。


しかし直後(ちょくご)方源(ほうげん)(からだ)から(はっ)する気配(けはい)(かん)じ、表情(ひょうじょう)(かす)かに(くず)した:「まさか本当(ほんとう)二転(にてん)突破(とっぱ)したとは!」


内心(ないしん)驚愕(きょうがく)していた。五日前(いつかまえ)方源(ほうげん)突然(とつぜん)(たず)ねて()(とき)(かれ)内心(ないしん)冷笑(れいしょう)していた。


元石(げんせき)から天然真元(てんねんしんげん)吸収(きゅうしゅう)しつつ二転突破(にてんとっぱ)(こころ)みる――この二重(にじゅう)負荷(ふか)尋常(じんじょう)ならざる精神力(せいしんりょく)(よう)する。通常(つうじょう)蛊師(こし)強靭(きょうじん)意志力(いしりょく)忍耐力(にんたいりょく)、そして(すく)なくとも数年間(すうねんかん)修行経験(しゅぎょうけいけん)必要(ひつよう)だ。


経験(けいけん)()んだ(もの)のみ、真元吸収(しんげんきゅうしゅう)本能(ほんのう)()しつつ元海(げんかい)衝撃(しょうげき)適切(てきせつ)制御(せいぎょ)できる。晶膜(しょうまく)自然回復(しぜんかいふく)(おさ)えつつ、真元消耗(しんげんしょうもう)回復(かいふく)のバランスを精密(せいみつ)維持(いじ)する必要(ひつよう)がある。


江鶴(こうづる)から()れば、方源(ほうげん)成功確率(せいこうかくりつ)(かぎ)りなく(ひく)かった。だがまさかの成功(せいこう)だった。


方源(ほうげん)(すず)しい(かお)(わら)った:「まぐれだ。今日(きょう)山寨(さんさい)(もど)るが、その(まえ)食事(しょくじ)(いただ)けると(たす)かる」


「ははは、ほうげん(くん)。ここまで()以上(いじょう)食事(しょくじ)ぐらい当然(とうぜん)だ」江鶴(こうづる)(むね)(たた)き、態度(たいど)(さら)(やわ)らげた。


(かれ)は元々(もともと)方源(ほうげん)将来(しょうらい)楽観(らっかん)していなかったが、二転(にてん)突破(とっぱ)という難関(なんかん)()えた(いま)対等(たいとう)(あつか)資格(しかく)(しょう)じたのだ。


豪勢(ごうせい)(うたげ)(あと)江鶴(こうづる)(みずか)村口(むらぐち)まで方源(ほうげん)見送(みおく)った。


方源ほうげん)くん道中どうちゅう)をつけろよ。最近さいきん)狼のおおかみのす)さわ)がしくて、山寨さんさい)まわ)りで野獣やじゅう))えてるんだ。おっと、またゆき)か」江鶴こうづる)一呼吸ひといき)おいてつづ)けた。「()まっていけばいいのに」


方源ほうげん)二転にてん)昇進しょうしん)して以来いらい)江鶴こうづる)態度たいど)一層いっそう)熱心ねっしん)になっていた。


だが方源ほうげん)固辞こじ)し、わか)れを)げた。


雪片せっぺん)しず)かに))ち、しろ)羽毛うもう)のようだった。


夕陽ゆうひ))まったゆき)黄金色こがねいろ)かがや)く。


方源ほうげん)あたま)かた)粉雪こなゆき))もった。


とお)く、古月山寨こげつさんさい)山腹さんぷく)だま))むように)ち、かすかに)えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ