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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第八十六節:疑いと探り

擂臺らいだいうえ方正ほうせい昏倒こんとうしたままうごかない。

方源ほうげん相変あいかわらず冷徹れいてつ表情ひょうじょう中央ちゅうおうつづけている。


みじか沈黙ちんもくあと場内じょうない騒然そうぜんとなる。


「まさか……?」あたまかかえてしんじられない様子ようすもの

玉皮蠱ぎょくひこ防御ぼうぎょ素手すでやぶるなんて……」まるくするもの

いたみをかんじないの?!」女性蛊師じょせいこしたちがそういきむ。

防御蠱ぼうぎょこ使つかわずに自傷じしょうするなんて……」男性だんせい蛊師こしたちも目尻めじりをピクつかせている。


他人たにんきびしいのは容易ようい自分じぶんきびしいのは困難こんなん

方源ほうげんおとうとのみならずみずからの肉体にくたいさえも犠牲ぎせいにしたのだ。


わたし)確認かくにん)する」学堂家老がくどうかろう)せき))ち、擂臺らいだい))うつ)った。


まず方正ほうせい)みゃく))り、安堵あんど)いき))く。頭部とうぶ)への衝撃しょうげき)による失神しっしん)のみで致命傷ちめいしょう)はなかった。


玉皮蠱ぎょくひこ)防御下ぼうぎょか)素手すで)打撃だけき)がここまで……!」内心ないしん)戦慄せんりつ)しながら方源ほうげん))確認かくにん)


血肉ちにく))がれ白骨はっこつ)露出ろしゅつ)指骨しこつ)亀裂きれつ)はし)っている。


「このいた)みにまゆ)一つうご)かさないとは……」老練ろうれん)学堂家老がくどうかろう)ですら背筋せすじ)さむ)くなる。


複雑ふくざつ)表情ひょうじょう))わた)す:「かゆ)みと激痛げきつう))えろ」


右手みぎて)五指ごし)扇形せんけい)ひら)き、青白あおじろ)月光げっこう)放出ほうしゅつ)ひかり)が徐々(じょじょ)に増幅ぞうふく)し、手掌しゅしょう)半透明はんとうめい)かがや)はじ)めた。


一見いっけん学堂家老がくどうかろう右手みぎて全体ぜんたい青玉あおたましたようだった。血管けっかんほねまで玉石化ぎょくせきかしているかのような質感しつかん


家老かろう慎重しんちょう右手みぎて方源ほうげん傷口きずぐちてた。


つめたい玉石ぎょくせき生肉なまにくれる感触かんしょく方源ほうげん骨髄こつずいえぐるようないたみにいしばり、こえらさない。


家老かろうてのひらからやわらかな月光げっこうあふれ、傷口きずぐち滋養じようする。


指骨しこつ亀裂きれつ急速きゅうそく修復しゅうふくけた皮肉ひにく再生さいせいはじめた。


「くっ……!」がたかゆみに方源ほうげんあらいきく。


家老かろう冷静れいせい面持おももちのまま、治療中ちりょうちゅうけて方源ほうげん空竅くうこうさぐった。


空竅くうこうないでは青銅色せいどういろ真元しんげん波立なみだち、丸々(まるまる)とした酒虫さけむし元海げんかいを悠々(ゆうゆう)とおよいでいる。


竅壁きょうへきしろかがや結晶けっしょうかべ――方源ほうげん一転いってん頂点ちょうてん実力じつりょく如実にょじつしめしていた。


探索たんさくつづける家老かろうは、方源ほうげん右掌みぎてのひら月光蠱げっこうこ錆蠱さびこ発見はっけん


ほか蠱虫こちゅうなし……まさか純粋じゅんすい筋力きんりょく玉皮蠱ぎょくひこやぶったのか?成人せいじん男性だんせいえるちから十五歳じゅうごさいに?」疑問ぎもんひかりひとみかすめる。


家老様かろうさま治療ちりょうありがとう」方源ほうげんき、指先ゆびさきうごかす。


いたみはのこるものの傷口きずぐちふさがっていた。地球ちきゅうなら数年すうねん療養りょうよう必要ひつよう重傷じゅうしょうが、この世界せかいでは数分すうふんなおる――ただ握力あくりょくもどるまで七日なのかほどようするだけだ。


しかし方源ほうげん学堂家老がくどうかろう感謝かんしゃなどしていなかった。この程度ていどきず)ならほか)治療蠱師ちりょうこし)でもなお)せると承知しょうち)うえ)本当ほんとう)目的もくてき)空竅くうこう)検査けんさ)にあることも看破かんぱ)していた。


白豕蠱はくしこ)玉皮蠱ぎょくひこ)第二秘洞だいにひとう)かく)し、春秋蝉しゅんじゅうせみ)六転ろくてん)ちから)潜伏せんぷく)四転よんてん)古月博こげつ ひろし)でも発見はっけん)不能ふのう)だ。


学堂家老がくどうかろう)なに))つけられずまゆ)をわずかにひそめた。疑惑ぎわく)のこ)るが、衆人しゅうじん)まえ)詮索せんさく)はできなかった。


方源ほうげん))くやった。今後こんご)はげ)むのだ」かた)たた)きながら高々(こうこう)と宣言せんげん)した。「今期こんき)首席しゅせき)方源ほうげん)!」


学堂家老がくどうかろう擂臺らいだいがってから、観衆かんしゅういきころして見守みまもっていた。結果けっか発表はっぴょういた瞬間しゅんかんあらたな騒動そうどう)))こった。


「まさか最終的さいしゅうてき方源ほうげん))つとは!」

丙等へいとう)分際ぶんざい)二転にてん)方正ほうせい)たお)すなんて……不正ふせい)じゃないか?」

家老かろう)直接ちょくせつ)検査けんさ)したんだ。問題もんだい)ないってことだろ」

「でも十五歳じゅうごさい)成人せいじん))えの筋力きんりょく)不自然ふしぜん)だとおも)わない?」


)なか)には)まれつきの怪物かいぶつ)もいる。赤山せきざん)さま)みたいに」だれ)かが群衆ぐんしゅう)なか)赤山せきざん))指差)す。


「ああ、赤山せきざん)さま)幼少期ようしょうき)から怪力かいりき)だったっけ」

方源ほうげん)同類どうるい)か。詩才しさい)代償だいしょう)筋力きんりょく)さず)かってるとか」


かた)すく)めるもの):「所詮しょせん)丙等へいとう)だ。黒豕蠱こくしこ)でも))れれば))せる。一時的いちじてき)優位ゆうい))ぎん」


方源ほうげん)擂臺らいだい))りながら、あざけ)るように人々(ひとびと)の議論ぎろん)みみ)かたむ)けていた。


酒虫さけむし)出所でどころ)完璧かんぺき)口実こうじつ)用意ようい)していたが、玉皮蠱ぎょくひこ)暴露ばくろ)されれば説明せつめい)不能ふのう)大勢おおぜい)まえ)使用しよう)する危険きけん)おか)せなかった。


人々(ひとびと)の憶測おくそく)方源ほうげん)誘導ゆうどう)したとお)りの方向ほうこう)へ。たと)上層部じょうそうぶ)疑惑ぎわく)いだ)んでも、背後はいご)黒幕くろまく)うたが)程度ていど)とど)まるだろう。



半年前はんとしまえ猪牙いのきばつくった第二だいに保護傘ほごがさいてきたか」方源ほうげんひとみ深淵しんえんのようにくらしずむ。


古月族長こげつぞくちょうすわなおさず、まゆをひそめたままつづけていた。


事態じたい展開てんかい予想よそうえていた。


方源ほうげん優勝ゆうしょうなど些事さじ問題もんだい方正ほうせいだ。


今日きょう敗北はいぼくかれあたえる心理的しんりてき打撃だげきはかれない。


最初さいしょから圧倒的あっとうてきけていればまだかった。だが希望きぼうたせたうえでの完敗かんぱい――これが成長せいちょうかげとすおそれがあった。


高階こうかい昇格しょうかく二転突破にてんとっぱ成功体験せいこうたいけんませ自信じしんをつけさせたのに……すべて灰燼かいじんしたか」古月博こげつ ひろし心中しんちゅう嘆息たんそくし、方源ほうげんたいするあわ嫌悪感けんおかん芽生めばえた。


方正ほうせいっていれば完璧かんぺきだったのに――この結末けつまつはちょっとにくたらしい。


族長ぞくちょうだけでなく、他の家老かろうたちの視線しせん複雑ふくざつだった。


赤山せきざんみの怪力かいりき……こいつも変異体へんいたいか?」

十歳じゅっさい漢詩かんしつくった異常いじょうさをかんがえば、筋力きんりょく突出とっしゅつしてても不思議ふしぎではない」

「だが背後はいご黒幕くろまく関与かんよしてる可能性かのうせいも……」

「だとすれば、その正体しょうたい一体いったい……」


家老かろうたちの胸中きょうちゅうはげしくうごいていたが、表情ひょうじょうにはかすりもさない。


古月博こげつ ひろし族長ぞくちょう沈黙ちんもくはさみ、ふと微笑ほほえみをかべた:「方源ほうげん丙等へいとう首席しゅせき)るとは前代未聞ぜんだいみもん)偉業いぎょう)だ!元石げんせき)百個ひゃっこ)蠱虫こちゅう)優先選択権ゆうせんせんたくけん)くわ)え、即座そくざ)追加報酬ついかほうしゅう)あた)えよう――どのくみ)にも自由じゆう)はい)れる。希望きぼう)くみ)いま)ここで申告しんこく)せよ」


この言葉ことば)に、場内じょうない)二転にてん)蠱師こし)塾生じゅくせい)たちが羨望せんぼう)眼差まなざ)しを)けた。くみ)によって将来性しょうらいせい)左右さゆう)されるため、この褒賞ほうしょう)実質的じっしつてき)前途ぜんと)約束やくそく)するものだった。


「この決定けってい)わたし)独断どくだん)だが」古月博こげつ ひろし)家老かろう)たちを一瞥いちべつ)諸君しょくん)異論いろん)はあるまい」


古月赤練こげつ せきれん)古月漠塵こげつ ばくじん)筆頭ひっとう)とする家老かろう)たちは苦々(にがにが)しい表情ひょうじょう))かべたが、誰一人だれひとり)反対はんたい)しなかった。


方源ほうげん)心臓しんぞう)高鳴たかな)る――


厄介やっかい)))んだ。

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