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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第八十四節:強く踏み躙れ!

最終決戦さいしゅうけっせん)古月方正こげつ ほうせい)たい)古月方源こげつ ほうげん)!」


「おっ、面白おもしろ)くなってきた」

「まさか兄弟きょうだい)対決たいけつ)になるとはな」

方正ほうせい)……」族長ぞくちょう)微笑ほほえ)みがかす)かにおさ)まる。「おまえ)最大さいだい)かげ)あに)だ。赤鉄真元せきてつしんげん)玉皮蠱ぎょくひこ)圧倒あっとう)しろ!このやみ))やぶ)れば)飛躍ひやく))っている」


夕陽ゆうひ))のように擂臺らいだい))める。


瓜二つ(うりふたつ)のかお)))う。おとうと)ひとみ)ほのお))え、あに)眼差まなざ)しは深淵しんえん)ごと)し。


あに)さん……」方正ほうせい)こぶし)かた)める。「降参こうさん)してくれ!二転にてん)赤鉄真元せきてつしんげん)8わり)あに)さんの青銅真元せいどうしんげん)4割4わりよんぶ)では))がない」


方源ほうげん)は淡々(たんたん)と見据みす)える:「真元しんげん)りょう)勝敗しょうはい))まるならたたか)必要ひつよう)などない」


「……!」方正ほうせい)まぶた)またた)く。内心ないしん)では降参こうさん)などもと)めてはいない。だが血縁けつえん)へのなさ)けとして)わねばならぬ義理ぎり)があった。


覚悟かくご))まったら、いざ!」


地面じめん))おと)黄昏たそがれ)ひび)いた。


「またこの)か!」擂臺らいだい)した)漠北ばくほく)歯軋はぎし)りした。今夜こんや)から猛特訓もうとっくん)決意けつい)今日きょう)屈辱くつじょく)十倍返じゅうばいがえ)しするとこころ)ちか)う。


方源ほうげん))わりだな。龍丸蛐蛐蠱りゅうがんしゅしゅこ))たないんだから」赤城せきじょう)腕組うでぐ)みしてわら)う。他人たにん)不幸ふこう)よろこ)様子ようす)だ。


方正ほうせい)たけ)くる)うように突進とっしん)瞬時しゅんじ)間合まあ)いを)める。てのひら)月光げっこう)きら)めいた。


方源ほうげん)表情ひょうじょう)てつ)のようにつめ)たく、微動びどう)だにしない。接近せっきん)するおとうと)静観せいかん)しつつ、右掌みぎてのひら)みず)のようなあお)月華げっか)にじ))す。


突然とつぜん)


方源ほうげん)地面じめん))り、数歩すうほ)))す。退しりぞ)くどころかぎゃく)おそ))かる。


「っ!」予想外よそうがい)反撃はんげき)方正ほうせい)動揺どうよう)あせ)って月刃げつじん)はな)つ。


無言むごん)のまま蛇行だこう)する方源ほうげん)月刃げつじん)肩先かたさき)かす)める。咆哮ほうこう)雄叫おたけ)びもないが、沈黙ちんもく)なか)はがね)覚悟かくご)凝縮ぎょうしゅく)されている。


方正ほうせい)本能ほんのう)的に後退こうたい)はじ)めた。6メートルが限界げんかい)戦距せんきょ)いま)や5メートル未満みまん)今度こんど)自分じぶん)間合まあ)いを)ばん)だ。


シュッ!シュッ!シュッ!


後退こうたい)しつつてのひら)ひるがえ)連続れんぞく)月刃げつじん)))方正ほうせい)必死ひっし)距離きょり)たも)とうとする。


方源ほうげん)寸止すんど)めの軌道修正きどうしゅうせい))かえ)し、蜘蛛くも)のような身軽みがる)さで月刃げつじん)回避かいひ)一糸乱いとみだ)れぬ歩幅ほはば)せま)つづ)ける。


「この方源ほうげん)度胸どきょう))わってやがる!」薬紅やくこう)こえ))げた。


生死せいし)度外視どがいし)したたたか)いだ」青書せいしょ)こえ))ころ)せない。


「また戦闘狂せんとうきょう)かよ!」漠顔ばくがん)))いしばり、赤山せきざん)横目よこめ)うかが)う。


赤山せきざん)相変あいか)わらず無表情むひょうじょう)だが、眼球がんきゅう)不規則ふきそく)ふる)えていた。


観衆かんしゅう)喧騒けんそう))み、擂臺らいだい)攻防こうぼう)くぎ)付けになる。


月刃げつじん)方源ほうげん)顔面がんめん)をかすめるたび)青白あおじろ)ひかり)横顔よこがお))める。冷徹れいてつ)表情ひょうじょう)微動びどう)だにせず、危険きけん)余裕よゆう)同居どうきょ)する回避かいひ)動作どうさ)に、戦闘せんとう)才能さいのう)露呈ろてい)していた。


観戦席かんせんせき)族長ぞくちょう)家老かろう)たちがけわ)しい面持おもも)ちに。


赤城せきじょう)漠北ばくほく)くち))けたまま、月刃げつじん)を次々(つぎつぎ)かわ)方源ほうげん)凝視ぎょうし)


「どうやっているんだ?」生徒せいと)たちの脳裏のうり)疑問符ぎもんふ)渦巻うずま)く。


――五百年ごひゃくねん)戦歴せんれき)を持つ方源ほうげん)に、たかだか一年いちねん)指導しどう))けた方正ほうせい)およ)ぶはずがない。


方源ほうげん)ひとみ)うつ)おとうと))とお)った小川おがわ)ごと)し。水流すいりゅう)方向ほうこう)岩場いわば)での屈折くっせつ)も、水底すいてい)まで見透みす)かされていた。


月刃げつじん)発射はっしゃ)にはかなら)てのひら)反転はんてん)ともな)う。かた)ふる)え、足運あしゅば)みのみだ)れ――あらゆる体術たいじゅつ)兆候ちょうこう)が、攻撃意図こうげきいと)筒抜つつぬ)けにしていた。方正ほうせい)思考しこう)さえも、方源ほうげん)脳裏のうり)再構築さいこうちく)されていく。


方正ほうせい)あたま))しろ)になっていた。


十数年間じゅうすうねんかん)こころ)しば)つづ)けてきたあに)かげ)が、いま)奈落ならく)へ引き))むほどのやみ)へと膨張ぼうちょう)していた。


混乱こんらん)から玉皮蠱ぎょくひこ)存在そんざい)すらわす)れ、あに)猛攻もうこう)呼吸こきゅう)みだ)思考しこう)停止ていし)


これが「経験差けいけんさ)」だ。


方源ほうげん)にとって五百年ごひゃくねん)戦歴せんれき)こそが春秋蝉しゅんじゅうせみ)よりとうと)財産ざいさん)族長ぞくちょう)にも、家老かろう)にも、家族かぞく)にも、とも)にも、蛊虫こちゅう)にもたよ)らない。


おのれ)のみが絶対ぜったい))どころ)だ――この)信頼しんらい)できるのは自分じぶん)実力じつりょく)だけだとさと)っていた。


間合まあ)いが)まった瞬間しゅんかん)方源ほうげん)隱密おんみつ)一撃いちげき)はな)つ。


ドスン!


はら)))んだこぶし)方正ほうせい)こし)))げる。))もよお)しながらも、基礎訓練きそくんれん)成果せいか)両腕りょううで)頭部とうぶ)防護ぼうご)大股おおまた)後退こうたい)


「どこ……⁉」うで)隙間すきま)から眼球がんきゅう)はげ)しくうご)かす方正ほうせい)


後方うしろ)だ!」直感ちょっかん)はし)った刹那せつな)こし)衝撃しょうげき)炸裂さくれつ)


バランスをうしな)地面じめん)たお)れかかるが、訓練くんれん)身体からだ)反応はんのう)たお))いきお)いを利用りよう)して宙返ちゅうがえ)りしつつ、てのひら)から月刃げつじん)後方こうほう))はな)った。


――これこそ族長ぞくちょう)からさず)かった戦闘せんとう)知恵ちえ)だ。



普通ふつう)相手あいて)なら、この月刃げつじん)直撃ちょくげき)するか、すく)なくとも後退こうたい)余儀よぎ)なくされていただろう。


だが方源ほうげん)ちが)う。族長ぞくちょう)古月博こげつ ひろし)でさえ、かれ)戦歴せんれき)にはとお)およ)ばない。


方源ほうげん))えが)くように迂回うかい)し、月刃げつじん)を易々(やすやす)とかわして方正ほうせい)接近せっきん)


間合まあ))れた……?」立ち)がりかけた方正ほうせい)みみ)に、風切かざき)おと)とどろ)いた。


こぶし)風圧ふうあつ)⁉」認識にんしき)するよりはや)く、側頭部そくとうぶ)衝撃しょうげき)はし)る。


ゴン!


視界しかい))くら)くなり、はげ)しい眩暈めまい)おそ)われる方正ほうせい)地面じめん)くず))ち、二呼吸にこきゅう)ぶん)うご)けなかった。


視力しりょく)もど)ると、目前もくぜん)方源ほうげん)足元あしもと)うつ)る。いぬ)のように)つくば)自分じぶん)と、高見たかみ)から見下みお)ろすあに)との対比たいひ)に、かお)火照ほて)った。


「くそっ……!」恥辱ちじょく)ふる)える)地面じめん))方正ほうせい)


大勢おおぜい))まえ)で、方源ほうげん)右足みぎあし)を高々(たかだか)とかか)げた――


ゴン!


かれ即座そくざ視界しかいくらになるのをかんじ、はげしい眩暈めまいによって平衡感覚へいこうかんかくうしない、完全かんぜん地面じめんたおんだ。


二呼吸にこきゅうぶんしたあと、徐々(じょじょ)に視界しかい回復かいふくすると、方正ほうせい方源ほうげん両足りょうあしまえっているのをた。


その瞬間しゅんかんみずからの姿すがた如何いかみじめかをさとった。いぬのようにい、方源ほうげんたかみから見下みおろしている。


「くそっ!」方正ほうせい羞恥心しゅうちしんいかりで全身ぜんしんあつくなり、がろうとした。


大勢おおぜい視線しせんそそ)がれるなか方源ほうげん右足みぎあしたかかかげ、つよろした。


ドスン!


方正ほうせいあたま石球いしだまのように擂臺らいだいたたきつけられ、甲高かんだか衝撃音しょうげきおんはっした。


「ふざけるな……!」方正ほうせいくるったように再起さいきはかろうとする。


方源ほうげん冷然れいぜんとそれを見詰みつめ、ふたたあしろす。


ゴン!


あたまはげしく擂臺らいだいちつけられ、頭皮とうひけてまらなくなる。


「ちくしょう!ちくしょうォォ!」方正ほうせいはがねめ、全身ぜんしんえるようないかりをかんじながら、ふたたあたまげようとした。


ガン!


方源ほうげん三度目さんどめみ、今度こんどあしはなさずあたまさえつけた。巨大きょだいちからかお擂臺らいだいつぶされ、頬骨きょうこつきしおとがした。


かお変形へんけいしそうな圧力あつりょくなか方正ほうせいあらいきりながら身動みうごきできなかった。あたま巨石きょせきっているかのような重圧じゅうあつかんじ、如何いかあばれても微動びどうだにしなかった。


「そうだ!月光蠱げっこうこがあるじゃないか!」絶体絶命ぜったいぜつめい状況じょうきょうひらめいた方正ほうせい右掌みぎてのひらが、突然とつぜん青白あおじろかがやした。


だが方源ほうげん気付きづかないはずがない。


スッ!


月刃げつじん正確せいかく右掌みぎてのひらつらぬいた。


「ぎゃああああっ!」

激痛げきつう電撃でんげきのように全身ぜんしんめぐり、身体からだ痙攣けいれんした。てのひらほとん)貫通かんつうされ、白骨はっこつあら)わに。月光蠱げっこうこ致命傷ちめいしょう))い、瀕死ひんし)状態じょうたい)(おとしい)れた。

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