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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第七十三節:紅の円環は輪廻を刻む

方源ほうげん今回こんかい生徒せいとおどったが、方正ほうせい赤城あかぎ漠北ばくほく三人さんにんかしながら元石げんせきらなかっただと?」侍従じじゅう報告ほうこくいて学堂長老がくどうちょうろうはややおどろいた表情ひょうじょうかべた。


けっしていつわりはございません。事実じじつそのとおりでございます」ゆかひざまずいていた侍従じじゅう即座そくざこたえた。


「ふむ」長老ちょうろう肯定こうてい否定ひていもせずった。「退いてよろしい」


「はっ」


侍従じじゅう退出たいしゅつするや、学堂家老がくどうかろうふか思案しあんしずんだ。元々(もともと)心配しんぱいしていたのは、方正ほうせいった三十元石さんじゅうげんせき方源ほうげんうばわれる事態じたいだった。もしそうなれば学舎がくしゃ褒賞制度ほうしょうせいど形骸化けいがいかするため、厳罰げんばつ準備じゅんびしていたのである。


「だが予想よそうはんし、方源ほうげん三人さんにん見逃みのがしたとは……数百元石ひゃくげんせき所持しょじしているから三十元石さんじゅうげんせきがくらまないのは理解りかいできる。だが何故なぜあえて三人さんにん解放かいほうしたのだ?」


長老ちょうろうしわくちゃなまゆが徐々(じょじょ)にびていくように、表情ひょうじょうゆるんでいった。


かれは徐々(じょじょ)に理解りかいしてきた。


漠北ばくほく赤城あかぎ方正ほうせい三人さんにんは、家族かぞく三大勢力さんだいせいりょく象徴しょうちょうする存在そんざいだ。方源ほうげん彼等かれら見逃みのがした行為こういは、あきらかに三大勢力さんだいせいりょくへの接近せっきんしめすもの。これは方源ほうげん心変こころがわりし、家族かぞく屈服くっぷくするきざしと解釈かいしゃくできる。


「もっともなことだ」学堂家老がくどうかろう独白どくはくした。「酒虫さけむしっていようと、丙等へいとう素質そしつ不足ふそく自覚じかくしたのだろう。何度なんど反抗はんこうして不満ふまんらしたあといま落胆らくたんしているにちがいない」


族長ぞくちょうとおりだ。15じゅうごさい少年しょうねん家族制度かぞくせいどへの挑戦ちょうせんなど不可能ふかのうだった。現実げんじつを受け(うけ)入れ(いれ)はじめたいま自分じぶん居場所いばしょつけ、家族かぞくむのは必然ひつぜんきだ」


そうかんがいたると、学堂家老がくどうかろう安堵あんどいきをつき、おもわず表情ひょうじょうゆるんだ。



三日みっか時間じかんが、あっという間にった。


やがて年中考査ねんちゅうこうさおとずれた。


はやはやく!山猪やまいのししせたぞ!」少年しょうねんくるったようにはしりながらあせじりにさけんだ。


両足りょうあしはぎ淡緑色たんりょくしょく旋風せんぷういている。これが普通ふつう人間にんげん超越ちょうえつした走力そうりょくしていた。


しかし背後はいごからせま山猪やまいのしし速度そくどすばかりで、距離きょりちぢまってていた。


炎天えんてんが木々(きぎ)のあいだからみ、山猪やまいのししきばしろかがやかせていた。


山猪やまいのしした!なわれ!」草叢くさむらひそんでいた四人よにん少年しょうねんふと麻縄あさなわげ、瞬時しゅんじ障害しょうがいつくした。


ける少年しょうねんかろやかに跳躍ちょうやくしてなわえ、そのままはしつづけた。


後続こうぞく山猪やまいのししはまともになわかり、地面じめんたたきつけられて五、六(ご、ろく)メートルもすべった。


「いてっ!」四人よにん少年しょうねんなわきずられ、山猪やまいのしし同様どうよう転倒てんとうした。


くぞ!」さきはししていた少年しょうねんもどり、怒鳴どなるようにさけんだ。


たおれたものたちはあわててがり、山猪やまいのしし包囲網ほういもうちぢめていった。


……


シュシュシュ!


月刃げつじん空中くうちゅうい、山猪やまいのししからださり、次々(つぎつぎ)と細長ほそなが傷口きずぐちつくしていく。


古月漠塵こげつ ばくじん興奮こうふんかお紅潮こうちょうさせ、ひとみは爛々(らんらん)とかがやき、完全かんぜん戦闘せんとう没頭ぼっとうしていた。


30分後さんじゅっぷんご出血多量しゅっけつたりょう山猪やまいのししがついにたおした。


漠塵ばくじんは大きくいきき、地面じめんにどっかりとすわんだ。全身ぜんしんどろ青草あおくさしまみれで、たきのようなあせながちている。


きた山猪やまいのししとのたたかいは、木人形きにんぎょう藁人形わらにんぎょうとの練習れんしゅうとはやはりまったちがうな。一頭いっとう仕留しとめるのに30さんじゅっぷんもかかるとは……ほか連中れんちゅうはどうなっているんだろう?」


……



ひっそりとした小高いおかうえに、仮設かせつ小屋こやてられていた。小屋こや灼熱しゃくねつ日差ひざしを必死ひっしさえぎり、かろうじて日陰ひかげ提供ていきょうしていた。


小屋こやしたには数脚すうきゃく椅子いすならび、学堂家老がくどうかろう主座しゅざおごそかにすわっていた。そのそばには他の家老かろうたちが同席どうせきし、背後はいご数人すうにん蠱師こしひかえている。


周囲しゅういはやしにも複数ふくすう蠱師こしひそんでいた。


そのとき前方ぜんぽうはやし不自然ふしぜんにざわめきした。


サッ。


かげのような蠱師こし林中りんちゅうからし、小走こばしりにちかづくと小屋こやまえひざまずいた。


状況じょうきょうはどうなっておる?」学堂家老がくどうかろういかける。


家老様かろうさま現時点げんじてん生徒せいと死傷者ししょうしゃておりません」蠱師こしあわててこたえた。



結構けっこうなことだ」

年中考査ねんちゅうこうさ半日はんにち経過けいかしても負傷者ふしょうしゃなしとは、往年おうねんではあまりられない状況じょうきょうだ」

学堂家老がくどうかろう殿どの指導力しどうりょく賜物たまものであろう」


他の家老かろうたちが満足まんぞくそうにうなずき、口々(くちぐち)に称賛しょうさんした。


学堂家老がくどうかろうかすかにくびよこった。方源ほうげん同級生どうきゅうせい強請ゆすった結果けっか生徒せいとたちが基礎拳脚きそけんきゃくきたえ上げ(あげ)た事実じじつっていた。


ひざまずいている蠱師こしただす:「現時点げんじてん成績せいせき優秀ゆうしゅうものは?」


もうげます。古月方源こげつ ほうげん方正ほうせい漠北ばくほく赤城あかぎ四名よんめい上位じょういです。赤城あかぎ三頭さんとう方正ほうせい漠北ばくほく五頭ごとう方源ほうげん八頭はっとう討伐とうばつしております」


「ほう……方源ほうげん暫定ざんてい首位しゅいとは!」

甲等こうとう乙等おつとう生徒せいと丙等へいとうされるとは、まれなケースだ」

酒虫さけむし青銅真元せいどうしんげんゆうするのだから、この程度ていど当然とうぜんだろう」

「だが真元しんげん回復速度かいふくそくどでは甲等こうとう乙等おつとう到底とうていおよばぬ。おそかれはやかれ三人さんにんかれるはずだ」


家老かろうたちの議論ぎろんなか学堂家老がくどうかろう蠱師こしめいじた:「退け。方正ほうせい赤城あかぎ漠北ばくほく三人さんにん安全あんぜん特段とくだん監視かんしようすることをつたえよ」


「かしこまりました」蠱師こしが深々(ふかぶか)とあたまげて退しりぞいた。



このような野外戦闘やがいせんとうは、大多数だいたすう生徒せいとにとってはじめての経験けいけんだ。危険きけんともなうため、家族かぞく事前じぜん手配てはいととのえていた。数十人すうじゅうにん二転蛊師にてんこし山中さんちゅうひそみ、考核こうかく安全あんぜん監視かんし。さらに三転さんてん家老かろうたちも待機たいきし、緊急事態きんきゅうじたいそなえていた。


灼熱しゃくねつ太陽たいよう天頂てんちょうから西にし山脈さんみゃくかたむき、夕焼ゆうやけがくもほのおのようにげていた。


夕日ゆうひはやしらすなか、また一頭いっとう山猪やまいのしし地面じめんたおれた。


二十三頭目にじゅうさんとうめか」方源ほうげんこころかぞえながらしゃがみみ、れた手付てつきできばった。


背中せなかふくろにはすで多数たすう猪牙いのししのきばはいっている。


さらにべつふくろには事前じぜんひそかにったぶんきばはいっていた。これらはいわかくあな保管ほかんされ、前々ぜんぜんじつよるひそかに回収かいしゅうして地中ちちゅうめてあったものだ。


地形ちけい山猪やまいのしし生息域せいそくいき熟知じゅくちし、高階真元こうかいしんげん月光蛊げっこうこ駆動くどうさら小光蛊しょうこうこ併用へいようしている。ほか連中れんちゅう狩猟効率しゅりょうこうりつなどおよばぬ。このふくろだけでも首位しゅい確実かくじつだが……もうひとつのふくろせば、やつらどんなかおをするだろうな? フフ」


空模様そらもようたしかめた方源ほうげんは、かくぶくろ回収かいしゅうかおうとあしすすめた。



そうかんがえると、かれ脳裏のうりにパッと地図ちずかびがった。


ここ数日すうじつ獣皮じゅうひ地図ちず完全かんぜん記憶きおく)していた方源ほうげんは、現在地げんざいち正確せいかく把握はあくしている。左折させつして山渓さんけい沿いに15じゅうごふんほどすす)めば、ふくろ)めた地点ちてん到達とうたつできる。


しかしあし))そうとした瞬間しゅんかん、ふとまよ)いがしょう)じた。


いま)位置いち)から最寄もよ)りの赤丸あかまる)マークまでは500~600メートル。この機会きかい)のが)すべきじゃないか?」


その思考しこう)あたま)はな)れなくなる。


)ちは確定かくてい)してるし、時間じかん)てき)にも余裕よゆう)がある。獣皮地図じゅうひちず)三箇所さんかしょ)赤丸あかまる)——王老爺おうろうや)にとってきわ)めて重要じゅうよう)場所ばしょ)で、唯一ゆいいつ)意味いみ)推測すいそく)できないしるし)だ。確認かくにん)しに)くべきだ」


監視かんし)している蠱師こし)がいることを承知しょうち)うえ)で、方源ほうげん))えて証人しょうにん)必要ひつよう)としていた。


即座そくざ)山猪狩やまいのししが)りの続行ぞっこう)よそお)い、密林みつりん)奥深おくふか)くへ)かった。


15分後じゅうごふんご)地図ちず)赤丸あかまる)地点ちてん)到着とうちゃく)


巨樹きょじゅ)しげ)った枝葉えだは)かく)れるように)てられた樹上小屋じゅじょうごや)——注意深ちゅういぶか)観察かんさつ)しなければ気付きづ)かないつく)りだ。


王老爺おうろうや)狩猟用しゅりょうよう)仮設小屋かせつごや)か……?」まゆ))せた方源ほうげん)むね)疑念ぎねん)渦巻うずま)く。


梯子はしご)のぼ)小屋こや)はい)った瞬間しゅんかん)かれ)表情ひょうじょう)一変いっぺん)した。

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