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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第七十一節:力可扛猪思低调

月日つきひごとぎ、またた六月ろくがつ中旬ちゅうじゅんとなった。


なつよる金色きんいろ月輪げつりんたかそらかり、青々(あおあお)とした山々(やまやま)と大地だいちらしろしていた。


かぜ一陣いちじんごとにけ、木々(きぎ)の月光げっこうともらいでいる。セミのこえとカエルの合唱がっしょうひびわたり、時折ときおりとおくからおおかみ遠吠とおぼえが青山せいざんにこだましていた。


川原かわら一隅ひとすみで、小川おがわあらしたまるみをびたしろ岩肌いわはだひろがっている。そのかたわらで、たたかいがひろげられていた。


全身ぜんしん細長ほそながふかきずった山猪やまぶたが、四肢ししはげしくうごかしながらふたた方源ほうげん突進とっしんする。傷口きずぐちからしぶきをばしながら、あざやかなみちのこした。


方源ほうげん冷静れいせいまわり、微動びどうだにしない。


この山猪やまぶた重傷じゅうしょう瀕死ひんし状態じょうたいだったが、まさにそんなけものもっと危険きけんだ。かれらはいのちのこがらせ、狂気きょうきし、えなくなる。油断ゆだんすれば足元あしもとをすくわれ、きば内臓ないぞうえぐされる。


方源ほうげん表情ひょうじょう平然へいぜんとしており、月光げっこうびた漆黒しっこくひとみつめたいかがやきをはなっていた。五百年ごひゃくねんぶん経験けいけん蓄積ちくせきされたかれは、ひと戦闘せんとう没頭ぼっとうしながらも、もうひとつの意識いしきつね周囲しゅうい気配けはい神経しんけいとがらせていた。


これまで何度なんど山猪やまぶた狩猟しゅりょうするさいほか生物せいぶつ乱入らんにゅうしたことがある。べつ山猪やまぶた野良狼のらおおかみ流浪るろうとらさえあらわれたこともあった。


時間じかん経過けいかともに、山猪やまぶた攻勢こうせいついゆるはじめた。


「……いまだ!」

方源ほうげん両目りょうめするどひかりはなつ。力強ちからづよ足取あしどりで数歩すうほむと、瞬時またた山猪やまぶた肉薄にくはくこしとしてかたれ、グイッと山猪やまぶたかつげた。



「くっ!」

方源ほうげんひくうなり、かおめながら両手りょうて山猪やまぶたげた。


山猪やまぶたかすかに痙攣けいれんする。


からだがぐらつきながらも全身全霊ぜんしんぜんれいちからめ、方源ほうげん山猪やまぶたいきおいよくほうげた。


ドン!

川原かわら巨岩きょがんたたきつけられた山猪やまぶた悲鳴ひめいげ、肋骨あばらぼねれるパキリというおとひびく。


巨岩きょがんからころちた山猪やまぶたは、みみはなくちから滾々(こんこん)とした鮮血せんけつした。


数度すうど痙攣けいれんしたのちついいきった。


周囲しゅうい静寂せいじゃくもどる。かわのせせらぎが猩々(しょうじょう)とした猪血ちょけつはこり、とおくへながれてゆく。


いまおれちからならいのしし一頭いっとうかつげられる! 今晚こんやあの坑道こうどう巨石きょせきためしてみるぞ」方源ほうげんあらいききながら立ちくし、ひとみおく興奮こうふんひそませた。


連日れんじつ白豕蛊はくしこ肉体にくたいきたつづけ、あきらかにちから増大ぞうだいしているのをかんじていた。以前いぜん月刃げつじん遊撃戦ゆうげきせんするしかなかったが、いまいのしし自体じたいかつげられるまでに成長せいちょうした。


無論もちろん白豕蛊はくしこ強化効果きょうかこうかには限界げんかいがある。最大さいだいで「一猪いっしょちから」までが限度げんどで、それ以上いじょう筋力増強きんりょくぞうきょう不可能ふかのうだ。


いのししかつげても、こうから力比ちからくらべできるわけじゃない。巨漢きょかんおな巨漢きょかんかかげられるとしても、両者りょうしゃ実力差じつりょくさがあるとはかぎらんのと同じだ。まだ成長せいちょう余地よちはある」


いのししにくを全て白豕蛊はくしこあたえ、狩猟刀しゅりょうとうきばり、すできずだらけのかわ細切こまぎれにしたのち石裂いわさけの秘洞ひどうかった。


のこされたいのしし死骸しがい処理しょりする必要ひつようがない。なつよる野獣やじゅう頻繁ひんぱん活動かつどうするため、もなくにおいをけたけもの掃除係そうじがかりをしてくれるだろう。


たと人間にんげん発見はっけんされても問題もんだいない。月刃げつじん痕跡こんせきすため、刃物はものきず加工かこうしてある。


あかひかりつつまれた秘洞ひどうもどると、方源ほうげん猪牙いのししば二本にほん片隅かたすみほうげた。


カチン!

きばたがいにたってこうおとてる。そのすみには最近さいきん狩猟成果しゅりょうせいかである小さなきばやま形成けいせいされていた。


方源ほうげんまよわず坑道こうどうもぐみ、ふたた最深部さいしんぶ到達とうたつした。


足音あしおと坑道内こうどうないにブンブンと反響はんきょうする。視界しかいあかにぶひかり支配しはいされていた。


なにわっていない。巨石きょせき相変あいかわらず前方ぜんぽうふさぎ、地蔵花じぞうかしたあなすでもどされていた。



「へェ!」


方源ほうげん巨石きょせきまえち、両手りょうててて全身ぜんしんちからめた。


かお真赤まっかにしながら乳飲ちちのころ以来いらいちからしぼったが、巨石きょせき微動びどうだにしない。


いまおれ精一杯せいいっぱいでやっといのしし一頭いっとうかつげる程度ていど。このいわすくなくとも五、六頭ごろくとうぶんおもさだ。うごかせぬのも当然とうぜん花酒行者かしゅぎょうじゃちから継承けいしょう容易よういでない証拠しょうこだ」ひからせながら心算しんさんめぐらせる。


くじけることなく坑道こうどうけ、うえ密室みっしつもどった。


壁際かべぎわてかけた竹筒たけづつし、地面じめん胡坐あぐらむ。ふたいて獣皮地図じゅうひちず竹紙たけがみゆかひろげた。


地図ちずひろなおすと、ふたた暗記あんき開始かいし時折ときおり指先ゆびさき地面じめんうすあとえがきながら記憶きおく補強ほきょうする。


この地図ちずにしたから、かれ毎日まいにちこの作業さぎょうつづけていた。


収納用しゅうのうようがない以上いじょう地図ちず常時携帯じょうじけいたいできん」竹筒たけづつ背負せおったまま戦闘せんとうするのは邪魔じゃまでしかない。だからこそ地図ちず脳裏のうりけるべく、にじ努力どりょくかさねているのだ。


面倒めんどうでもやる価値かちのあることは、最優先さいゆうせん片付かたづける」前世ぜんせまなんだ教訓きょうくんかれてる。人生じんせい困難こんなん回避かいひつづけるものほど、最終的さいしゅうてきおおきなかべたることを、骨身ほねみみてっていた。


わかころ記憶力きおくりょくいもんだ。いまでは地図ちず大半たいはんあたまたたんだ。年取としとってからこんなもん暗記あんきしようとしても、おぼえるそばからわすれちまうだろうな。ははは……まあ書虫しょちゅうさえってりゃ、この獣皮じゅうひ地図ちずわせてやれば、永遠えいえん鮮明せんめいおぼえてられるんだけど」


方源ほうげん酒虫さけむし白豕蛊はくしこにしたあとさら書虫しょちゅうまで欲張ほっかはじめていた。


書虫しょちゅう価値かち酒虫さけむし白豕蛊はくしこ同格どうかくで、一転蠱虫いってんこちゅうなかでも貴重きちょう品種ひんしゅ市場価格しじょうかかく高騰こうとうしており、つね品切しなぎ状態じょうたいだった。


前世ぜんせでは酒虫さけむし白豕蛊はくしこられなかったが、偶然ぐうぜん書虫しょちゅうにした。その書虫しょちゅう六十年間ろくじゅうねんかんかれとも成長せいちょうつづけた。


「まあいいか。書虫しょちゅうは元々(もともと)かずすくない。いま空想くうそうしてても仕方しかたない」実際じっさい転生てんせい後の現状げんじょう前世ぜんせ同時期どうじきよりはるかにめぐまれている。「前世ぜんせ今頃いまごろおれはまだ一転初階いってんしょかいだった。方正ほうせい赤城あかぎ漠北ばくほくなんかはもう高階こうかいたっしてて、完璧かんぺきいてかれてたんだからな」


方源ほうげんこまかいこと拘泥こうでいする性格せいかくではなかった。現状げんじょう進捗しんちょく満足まんぞくしていた。


中階ちゅうかい同世代どうせだいかたならべてる。丙等へいとう素質そしつ甲等こうとう乙等おつとう連中れんちゅうけてるんだ。酒虫さけむし効果こうかおおきいのは当然とうぜんとして、おれ豊富ほうふ修行経験しゅぎょうけいけんいてる」


さらえば、かれ同級生どうきゅうせい全員ぜんいんから恐喝きょうかつした影響えいきょうもあった。被害者ひがいしゃたちは親族しんぞく指導しどう武術ぶじゅつ鍛錬たんれん時間じかんかれ、空竅くうこう温養おんようおろそかになっていた。結果けっか前世ぜんせより修行度合しゅぎょうどあいひくくなっていたのだ。


「それでもやつらが高階こうかいたっするとおくない」



蠱師こし初期修行しょきしゅぎょう比較的ひかくてき容易よういで、短期間たんきかん効果こうかあらわれる。特に古月方正こげつ ほうせい古月漠塵こげつ ばくじん古月赤城こげつ あかぎ三人さんにんは、すで方源ほうげん逆転ぎゃくてんしそうないきおいだ。


修行しゅぎょうかさねるうちに、かれらの素質そしつ背後はいご強力きょうりょく支援しえんあきらかな優位性ゆういせいとしてあらわれてきた。酒虫さけむし苦労くろうしてきずげた方源ほうげんのリードは、もはやえかかっている。


白豕蛊はくしこちから増強ぞうきょうするのに時間じかんられてるのが原因げんいんだな」方源ほうげん冷静れいせい分析ぶんせきしていた。


「この調子ちょうしなら、すぐだれかが高階こうかいたっするだろう。最初さいしょ達成者たっせいしゃには三十さんじゅう元石げんせき褒賞ほうしょうがあるが……」かれすで決断けつだんくだしていた。「いま白豕蛊はくしこめて高階こうかい目指めざせばてるかもしれんが、三十元石さんじゅうげんせきなんていま必要ひつようない」


さら重要じゅうよう理由りゆうがあった。「注目ちゅうもくあつめず花酒行者かしゅぎょうじゃちから継承けいしょうするためには、目立めだたないようにしなきゃならん」


学舎がくしゃ褒賞制度ほうしょうせいどなんて、家族かぞく若者わかものあやつあめだ。賢者けんじゃならこんな小利しょうりとらわれん」


視線しせん獣皮地図じゅうひちずもどす。地図ちず表裏ひょうりあり、ひるよる状況じょうきょう色分いろわけされたせんえがかれている。


あかいバツは危険区域きけんくいきか」方源ほうげんあかしるされた場所ばしょ指差ゆびさす。「猪群いのししぐんかこまれたこのエリアは、猪王いのししおう縄張なわばりだ。いまおれ遭遇そうぐうすれば即死そくしだ」


王老爺おうろうやおも冷笑れいしょうする。竹紙たけがみには記載きさいされていなかったこの情報じょうほう。もししんじていたら、猪王いのししおうきばいのちとすところだった。「息子むすこあだいのししらせようとしたんだ。自分じぶんよごさずに」


最後さいごなぞ三箇所さんかしょ赤丸あかまる。「安全あんぜんなエリアになんしるし王老爺おうろうやにとって重要じゅうよう場所ばしょだろうが……」距離きょりとおすぎるため調査ちょうさできず、まゆをひそめる。

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