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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第四十五節: 洞心機、すでに甕中にありて自覚せず

「こんにちは、わか蛊師こしさん。なに問題もんだいが?」賈富かふ人垣ひとがき中心ちゅうしんすす)て、おだやかにいかけた。


青年蛊師せいねんこしかしこまりつつ再度さいどれいをし、周囲しゅういぞくびと見渡みわたして覚悟かくごめ、こと顛末てんまつ詳細しょうさい説明せつめいした。


「なるほど、そういうことか」賈富かふうなずき、おとうと賈金生かきんせい視線しせんけた。「おとうと、これが事実じじつか?」


賈金生かきんせいかおそむけ、はなわらった。


沈黙ちんもく数秒すうびょうつづいたあと賈富かふくちひらいた:「このけん完全かんぜんおとうと過失かしつだ。きみ迷惑めいわくをかけ、もうわけない」


賈富様かふさま四転よんてん御身おんみ二転にてんわたしに…!」青年蛊師せいねんこしあわてて辞退じたいする。


賈富かふせいし、「修爲しゅうい無関係むかんけいだ。あやまちはあやまち」と宣言せんげん側近そっきん指示しじして五袋ごふくろ元石げんせき青年せいねん手渡てわたした。


「だが小兄弟しょうきょうだい忠告ちゅうこくしておくが」賈富かふいつくしむようにつづけた,「黒豕蠱こくしこ六百塊元石ろっぴゃっかいげんせき相場そうばだ。安物やすものいのぜにうしないにならぬよう」


つつしんでうけたまわります!」青年蛊師せいねんこしふかあたまげた。


賈富様万歳かふさまばんざい!」

ただしく正道せいどうかがみ!」

周囲しゅういから歓声かんせいがる。


賈富かふ四方しほう拱手きょうしゅれいをしながら,「賈家かけ誠実せいじつむねとします。おとうと不始末ふしまつ大目おおめてくだされ」と笑顔えがおうったえた。


賈金生かきんせい青筋あおすじててテントをやぶり、うしぐちからえていくのを、方源ほうげんつめたい見届みとどけた。


花酒行者かしゅぎょうじゃのこした影壁えいへきわた時機じきたようだ)


花酒行者かしゅぎょうじゃ留影存声蠱りゅうえいそんせいこ使つかい、古月一族こげついちぞく四代よだいわた族長ぞくちょう醜態しゅうたい記録きろくしていた。


目前まのあたりにしたかれ憤懣ふんまんじょうられ、この岩壁がんぺきけて影壁えいへき形成けいせいした。


影壁えいへきには当時とうじ真実しんじつがループ再生さいせいされ、後世こうせいへとつたえられていた。


方源ほうげん利益りえき最大化さいだいか原則げんそくしたがい、はやくからこの影壁えいへき売却ばいきゃくする腹積はらづもりだった。青茅山せいぼうざんほか二大勢力にだいせいりょく――白家寨はくかさい熊家寨ゆうかさいかなら興味きょうみしめすと確信かくしんしていた。


しかし自身じしん直接ちょくせつむのは危険きけんきわまりない。ひく修爲しゅういでは他寨たさいおもむ途中とちゅう暗殺あんさつされる可能性かのうせいたかい。


たと取引とりひき成功せいこうしても、古月こげつ本家ほんけ情報じょうほうれれば最軽さいけいでも追放ついほうまぬがれない。現段階げんだんかい古月一族こげついちぞく利用りようする必要ひつようがある方源ほうげんにとって、最善策さいぜんさく商隊しょうたい商人しょうにんへの売却ばいきゃくだった。


明日あすあさには商隊しょうたい熊家寨ゆうかさいかう。影壁えいへきわたすならいま最後さいご機会きかいだ」


外部勢力がいぶせいりょくである商人しょうにんたちは青茅山せいぼうざん勢力争せいりょくあらそいにまれない。危険きけん最小限さいしょうげんおさえつつ最大さいだい利益りえきげられる完璧かんぺき選択肢せんたくしだった。


……


「もう一杯いっぱいってこい!」

さけはどこだ!?」

はやせ! かねはらえないとでもおもうのか!」


賈金生かきんせいきのこのテーブルをバンバンたたきながら怒鳴どならす。


賈公子かこうしさま、おさけでございます」店員てんいんいそいで竹筒たけづつさかずきはこんだ。


賈金生かきんせいさかずきうばり、喉元のどもとらして一気飲いっきのみ。「うまいぞ!」と甲高かんだかわらこえれていた。


さかずきをテーブルにたたけ、「もう一杯いっぱい! いや、あるだけ全部ぜんぶってこい!」


酒場さかば店員てんいんさからえず、われたとおりにした。


店内てんないひとあふかえっており、通路つうろすら身動みうごきできない状態じょうたい賈金生かきんせいれた怒鳴どなごえも、喧噪けんそうされていた。


さかずきかさねるうち、賈金生かきんせいほおなみだつたちた。だれづかない背中せなかしの慟哭どうこく


あにたちのなか最年少さいねんしょうちち寵愛ちょうあいされた美貌びぼう末子まっし――だがてんかれ丁等ていとう資質ししつしかあたえなかった。


賈富かふめ…!」あいからしぼ憎悪ぞうお商隊しょうたいでの立場たちば利用りようされ、あに栄光えいこうだいにされた無念むねんむねいた。


兄貴あにき仕返しかえしがしたいか? 手伝てつだってやるよ」


不意ふい耳元みみもとひびこえ賈金生かきんせいくと――いつのにかとなりすわっている少年しょうねん姿すがたが。


まぶたこすり、らめく視界しかいこうには、昨夜さくや賭石場とせきじょうった方源ほうげんがいた。


「おまえか!」賈金生かきんせい方源ほうげんにらみつけ、幾分いくぶんいかりをめてった。「おぼえてるぞ! 幸運こううん小僧こぞうおれ賭石場とせきじょう瘡土蝦蟇そうどがまてやがった! おれ愚弄ぐろうしにたのか?」


方源ほうげん賈金生かきんせいつめたいみずのようなった:「おおきな商談しょうだんがある。もっと良い成績せいせきおさめて家産かさんまえしたければ、はなしいてみるといい」


賈金生かきんせいかおおどろきとうたがいのいろかび、背筋せすじばしてぐにすわなおした:「どうして家産かさんけんってるんだ?」


このけん極秘ごくひ外部がいぶにはられていないはずなのに、方源ほうげん一言ひとこと看破かんぱした。


賈家寨かかさいのどうでもいいことなんて、世間せけん注意深ちゅういぶかひとにはかくせないさ」方源ほうげん冷笑れいしょうし、記憶きおくなか前世ぜんせ出来事できごとおもした。


賈家かけ当主とうしゅ伝説的でんせつてき人物じんぶつで、裸一貫はだかいっかんから商隊しょうたい成功せいこうし、賈家寨かかさい再興さいこうした。かれいて死期しきかんじ、どもたちに二人一組ふたりひとくみ商隊しょうたいひきいさせ、成績せいせきおうじて家産かさん分配ぶんぱいすると約束やくそくした。


しかし長男ちょうなん賈富かふ次男じなん賈貴かきは非常に優秀ゆうしゅうで、六、七年ろくしちねんきそっても勝敗しょうはいかず、賈家かけ当主とうしゅくなるまで決着けっちゃくかなかった。


賈家かけ当主とうしゅ死後しご莫大ばくだい家産かさんのこされた。賈富かふ賈貴かき家産かさんあらそい、兄弟きょうだいげんかを激化げきかさせ、外部がいぶ勢力せいりょくれて大規模だいきぼ斗蠱大会とこたいかい開催かいさいし、最終的さいしゅうてきには相討あいうちで死亡しぼうした。賈家寨かかさい一時的いちじてき繁栄はんえいしたが、すぐに衰退すいたいし、世間せけんなげかせた。


賈金生かきんせいほそめ、方源ほうげん説明せつめい同意どうい否定ひていもせず、内心ないしんおもめぐらせた:「去年きょねんちち家産分配かさんぶんぱい規則きそく発表はっぴょうしてから、もう二年目にねんめだ。世間せけん筒抜つつぬけなのも当然とうぜんだ。本当ほんとう心配しんぱいなのは、これが賈富かふのまたべつわなかどうかだ。だがとにかく、はなしだけいてもそんはない」


方源ほうげんはすぐにくちひらかず、周囲しゅうい見回みまわした。この酒屋さかやかれ昼間ひるまおとずれたところで、店主てんしゅ経営けいえい手腕しゅわんすぐれており、よる商売しょうばいはほぼ満員まんいんだった。テントない騒音そうおんひどく、ひとあふかえっていた。


ここではなしをすることは、かえってしずかな場所ばしょより安全あんぜんで、蠱虫こちゅうによる盗聴とうちょう回避かいひできる。


かれ賈金生かきんせいまねきした:「みみせ」


賈金生かきんせい不愉快ふゆかいそうにはなわらったが、上体じょうたいかたむけてちかづいた。


方源ほうげんはなしいたあと賈金生かきんせいまゆひそめ、方源ほうげんつめたいひかり宿やどった:「この商談しょうだん青茅山せいぼうざん三大山寨さんだいさんさいむ。商人しょうにん地域勢力ちいきせいりょく内紛ないふんくびむなんて最大さいだい禁忌きんきだ。…おまえ賈富かふ仕向しむけた刺客しきゃくだろう!」



方源ほうげんはこのうたがいを予期よきしており、一切いっさい説明せつめいせずにがった:「フフ、それなら兄貴あにきはなすまでだ」


賈金生かきんせい細目ほそめ方源ほうげん凝視ぎょうしつづけた。方源ほうげん酒屋さかや入口いりぐちたっしたときつい我慢がまんできずし、テントそといついた:「て! 再考さいこう余地よちはあるはずだ」


方源ほうげん背中せなかまわし、横目よこめ賈金生かきんせいつめたくった:「うたがいは承知しょうちしている。だがいま貴方あなたあに完全かんぜんさえまれ、ほぼ敗北はいぼく寸前すんぜんだ。わたししんじればわずかな希望きぼうが、しんじなければ絶望ぜつぼうしかない。ける覚悟かくごがあるかどうかだ」


賈金生かきんせい顔色かおいろえて訂正ていせいした:「賈富かふたん年上としうえなだけ! あにだとみとめたおぼえはない! だが…けてやる」


方源ほうげんきびしい表情ひょうじょうう:「二千塊元石にせんかいげんせき値引ねびきなし」


賈金生かきんせい苦笑にがわらい:「高値たかねぎる。リスク(りすく)のたか取引とりひきだ」


「リスク(りすく)がたかければ利益りえきおおきい」方源ほうげんくび態度たいどくずさない。「白家寨はくかさい熊家寨ゆうかさいれば、倍以上ばいいじょう利益りえき確実かくじつだ」


賈金生かきんせい真剣しんけん面持おももちでうなずく:「白家寨はくかさい甲等こうとう天才てんさい白凝冰はくぎょうひょう台頭たいとう勢力図せいりょくず変動へんどうしている。古月こげつ覇権はけんらいでいる。さき間違まちがえなければ倍益ばいえき約束やくそくできる」


方源ほうげん賈金生かきんせいあらためて見詰みつめた。(さすが商家しょうか情勢分析じょうせいぶんせき的確てきかくだ)


賈金生かきんせい嘆息たんそく:「わなだろうがむ。二千塊元石にせんかいげんせき取引とりひき成立せいりつだ。ただし――」ひからせてつづけた:「まず現物げんぶつ確認かくにんさせろ」


当然とうぜんこと方源ほうげんわらいながらあるした。賈金生かきんせい完全かんぜんわなかっている。

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