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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第四十三節:最後の第六塊紫金石

青銅せいどう元海げんかい波濤はとう生滅しょうめつし、うしおち引きする。

海面かいめん上空じょうくうで、酒虫さけむしまるくなり、ただよ酒気しゅき白霧はくむのようにひろがっていた。


一筋ひとすじ真元しんげんがザァっと逆流ぎゃくりゅうし、酒霧しゅむなかすすんだ。落下らっかするときにはすで半減はんげんし、いろくなっていた。初階しょかい翠緑すいりょくから中階ちゅうかい蒼緑そうりょくへと変貌へんぼうした。


中階ちゅうかい真元しんげん元海げんかいちても初階しょかい真元しんげんざりわず、おもみをしたように下層かそうしずんでいった。

こうして元海げんかい上層じょうそう初階真元しょかいしんげんみず下層かそう中階真元ちゅうかいしんげんという構図こうず形成けいせいした。


ときつにつれ、空竅くうこうなか酒霧しゅむが立ちつづけた。酒虫さけむしによる精錬せいれん次第しだい初階真元しょかいしんげんり、中階真元ちゅうかいしんげんえていった。

下層かそう中階真元水位ちゅうかいしんげんすいいが徐々(じょじょ)に上昇じょうしょうし、上層じょうそう初階水位しょかいすいいくだってはのぼりをかえ様子ようす明瞭めいりょうれた。


方源ほうげん真元しんげん精錬せいれんしつつ、外部がいぶから元石げんせき天然真元てんねんしんげん吸収きゅうしゅうして空竅くうこうない補充ほじゅうした。

最終的さいしゅうてき空竅くうこう四割半よんわりはんめる元海げんかいふたたすべ中階真元ちゅうかいしんげんへと精錬せいれんされた。


中階ちゅうかい真元しんげんがなければ、賭石場とせきじょう五回ごかい解石かいせきできなかっただろう」宿舎しゅくしゃ寝台しんだい結跏趺坐けっかふざする方源ほうげんおもむろにひらいた。


すで深夜しんやとなっていた。

賭石場とせきじょうあとかれほかみせまわることなくただちに学舎がくしゃもどっていた。


古月山寨こげつさんさい周辺しゅうへんとはえ、一転初階いってんしょかい蠱師こし五百三十八塊元石ごひゃくさんじゅうはちかいげんせき所持しょじするのはあきらかに多過おおすぎた。

重量じゅうりょう問題もんだいだけでなく、悪意あくいいだものいのちねらわれる危険性きけんせいもあった。


一転高階いってんこうかい二転にてん蠱師こし邪心じゃしんこせば、現在げんざい方源ほうげんでは対抗たいこうできない。


ざいほかかねぬほどおろかなことはない。可笑おかしなことに、世間せけん大半たいはんがこの道理どうり見抜みぬけない」方源ほうげんつめたいわらみをかべ、ひら灰白色かいはくしょく元石げんせき見下みおろした。


完全かんぜん元石げんせき鴨卵かもらんだいだが、このいし真元しんげん半吸収はんきゅうしゅうされたため、あきらかに一廻ひとまわちいさくなっていた。


方源ほうげんまった心痛しんつうしなかった。

るものあればかならうしなうものあり」丙等へいとう資質ししつでありながら酒虫さけむし真元しんげん精錬せいれんするため、元石げんせき消費量しょうひりょう同世代どうせだい数倍すうばいおよぶ。だがぎゃくに、このおかげ資質ししつ不足ふそくおぎない、しん修行速度しゅぎょうそくどでは上位三傑じょういさんけつんでいた。


方源ほうげん元石げんせき財布さいふもどし、最後さいご紫金化石しきんかせきを取りとりだした。


賭石場とせきじょう購入こうにゅうした六個ろっこのうち、五個ごこ現地げんち解石かいせきし、のこ一個いっこ携帯けいたいしてここまでかえっていた。


かれするどひかり、ふたた月光蠱げっこうこ発動はつどう五指ごしくだきながら解石かいせきすすめた。あおひかりなか紫金化石しきんかせき急速きゅうそく縮小しゅくしょうし、ついゆかうえちいさな石粉いしこやまだけをのこした。


方源ほうげんおどろかなかった。賭石とせきとは十賭九輸じゅうとかちゅうしゅ――十回賭じゅっかいかけても九回きゅうかいけるものだ。


五百年ごひゃくねん経験けいけんゆうするかれでも、最善さいぜんくせば十賭八輸じゅうとはちしゅせきやまのこ二割にわり勝率しょうりつなかでも、死蠱しこ生蠱せいこ存在そんざいする。


死蠱しこほとん価値かちい。生蠱せいこでも珍種ちんしゅとはかぎらない。かり高価こうか生蠱せいこてれば、かえって殺身さっしんわざわいをまねく。


現在げんざい方源ほうげん実力じつりょく最底層さいていそう蛊師こしぎず、瘡土蝦蟇そうどがま解石かいせきしたさい古月山寨こげつさんさい周辺しゅうへんければ賈金生かきんせい強奪ごうだつされていただろう。


賭博とばくけっしてとみきずみちではく、家財かざいうしなもの大半たいはんだ。これは方源ほうげん進路しんろではい。


最後さいご紫金化石しきんかせきから蠱虫こちゅうなかったにもかんわらず、方源ほうげん失望しつぼうせず、ぎゃくゆか石粉いしこつめて微笑ほほえんだ。


かれ賭石場とせきじょうおもむいたしん目的もくてきは、この石粉いしこにあった。瘡土蝦蟇そうどがまたんなる副産物ふくさんぶつぎない。


ひそかに解石かいせきしたため、真実しんじつものかれ以外いがい存在そんざいしない。今後こんご、「酒虫さけむしはこの紫金化石しきんかせきからた」と主張しゅちょうできる。


この思惑おもわく巧妙こうみょうだ:


化石かせきふうじられた蠱虫こちゅう特定とくてい不可能ふかのう――だれ酒虫さけむし紫金化石しきんかせき存在そんざいないとは断言だんげんできない


賭石場とせきじょう目撃者もくげきしゃ瘡土蝦蟇そうどがま解石かいせき事実じじつ証拠しょうことして機能きのうする


追及ついきゅうされても「うん」で片付かたづけられる――「花酒行者かしゅぎょうじゃ酒虫さけむし疑惑ぎわくたいしても有効ゆうこう防御ぼうぎょとなる


暗闇くらやみ部屋へやで、方源ほうげんかすかにひかる。


隠蔽いんぺいのみにたよるのはかみつつむようなもの――かなら露見ろけんするときる。


酒虫さけむしという不安要素ふあんようそ処理しょりするには、先手せんてつべきだ。これが方源流ほうげんりゅうふうである。


さらに、今後の修行しゅぎょう過程かてい酒虫さけむし公表こうひょうする必要性ひつようせい計算けいさんみだった。


一転蛊いってんこである酒虫さけむしは、一転蛊師いってんこしには貴重きちょうだが、二転にてんになれば不要ふようになる。露見ろけんしても重大じゅうだい影響えいきょうい。春秋蝉しゅんじゅうせみように、ただちにいのちねらわれる危険性きけんせい皆無かいむだ」


五百年ごひゃくねん処世術しょせいじゅつが、方源ほうげん人間心理にんげんしんり看破かんぱする洞察力どうさつりょくあたえていた。


花酒行者かしゅぎょうじゃ遺産いさん瘡土蝦蟇そうどがま――記憶きおくにあるふたつの手近てぢか利益りえきすでものとなった。これからはおのれあし一歩いっぽずつ修行しゅぎょうするしかあるまい」方源ほうげんはためいきをつき、からだばすとはげしい疲労ひろうかんじた。


蠱師こし元海修行げんかいしゅぎょう睡眠すいみんわりにはならない。


布団ふとんした方源ほうげん寝床ねどこよこたわり、半眼はんがんのまま周囲しゅういうかがっていた。


枕元まくらもと五百ごひゃく以上の元石げんせきかくされ、床下ゆかしたには青竹酒あおたけざけつぼ複数ふくすう保管ほかんされているが、かれこころには漠然ばくぜんとした危機感ききかん巣食すくっていた。


五百塊元石ごひゃっかいげんせきという数字すうじすで限界げんかい――盛者必衰せいしゃひっすいごとく、今後こんご元石消費げんせきしょうひさらふくらむことをかれさとっていた。


収入源しゅうにゅうげん大部分だいぶぶん同窓生どうそうせいからの強要きょうよう依存いぞんしている。


最近さいきん強要きょうよう行動こうどうで、古月漠北こげつばくほく赤城せきじょう、そしておとうと古月方正こげつほうせい拳脚けんきゃく上達じょうたつ顕著けんちょだと痛感つうかんしていた。以前いぜんなら一両招いちりょうしょうせいした相手あいてに、いまでは五、六招ごろくしょうようする。


「あと三、四回かい強要きょうようすれば、彼等かれら戦闘技術せんとうぎじゅつ完成形かんせいけいたっするだろう。連戦れんせんいどまれれば、現状げんじょう体力たいりょくではえられぬ」


青茅山せいぼうざん周辺しゅうへんにはたからきたが、近隣きんりん白骨山はっこつざん正派せいは四転蛊師よんてんこしのこしたちから継承けいしょう存在そんざいする。ただし、その取得しゅとくには二人ふたり協力きょうりょく必須ひっす関門かんもんがある」


「そもそも花酒行者かしゅぎょうじゃ遺産いさんすくぎた――酒虫さけむしひとつだけとは。あの影壁えいへき商隊しょうたい商人しょうにんはらもあるか……」


思考しこうふかまるにつれ、方源ほうげんまぶたおもくなり、ついふかねむりにちていった。

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