奥へ進むほど錦繍繁華となる。
露店は少なくなり、大きな天幕が多くなる。
赤・青・黄・緑の様々(さまざま)な天幕――四角い形、円筒形、入口に柱が立つもの、赤い提灯が掛かるもの。内部が明るい天幕もあれば、暗い天幕もある。
方源は歩きながら見て回り、灰色の天幕の前で足を止めた。
「ここだ」
天幕の入口には二本の柱が立ち、陰刻の対聯が彫られていた。
左:「小さな勇気で春夏秋冬の福を得よ」
右:「大きな腕前で東西南北の財を獲れ」
中央に横批:「時来運転」
間違いない、ここは賭場。
敷地一畝を占める大きな天幕だ。
方源が中に入ると、天幕の縁に沿って三列の棚が並び、琥珀や化石が置かれていた。小さいものは手の平大、大きいものは洗面器サイズ。更に人の背丈ほどもあるものは直接地面に立てられていた。
他の店の賑わいとは違い、ここは静かだった。
数人の蠱師が棚の前に立ち――石を凝視する者、手の平で化石を転がす者、仲間と小声で話す者、店員と値段交渉する者。
全て(すべて)の会話は息を殺したように低く、他を妨げないよう注意されていた。
ここは賭石場。
蠱の世界には多種多様な蠱虫が存在し、餌が無ければ一定期間で死ぬ。
自然は生命に対し冷酷かつ慈悲深い。
餌が無くなった蠱虫は最後の手段として休眠し、自己封印する。
例えば月光蠱が月蘭花弁を失うと――青白い光が消え、透明な水晶から灰石に変わり、石の殻に覆われる。長い年月を経て殻が厚くなり、岩となる。
酒虫の場合は白い繭を作り、その中で眠る。
但し全て(すべて)の蠱虫がこの能力を持つ訳ではなく、発生確率は極めて低い。通常は餓死し、特定の状況下でのみ稀に休眠する。
蠱師が偶然これらの岩や繭を手にし、中の蠱虫を目覚めさせ――小銭を稼ぐ者、人生が一変する者が現れる。真偽入り混じった噂が絶えず、人々(ひとびと)の想像を掻き立てる。
この賭石場の岩石の由来はここにある。もちろんこれらの石は外見が似ているだけで、割ってみなければ中に蠱虫が隠れているか分からない。
「この小規模な賭石場では、十個の岩石のうち**個は中身が詰まっており、蠱虫は入っていない。仮に蠱虫が入っている石でも、十中八九は死んだ蠱だ。だが生きている蠱を当てれば大抵大儲けできる。もし珍しい蠱虫なら、一攫千金か、命を狙われるかの二択だ」
方源は心中明らかだった。彼はこの業界の裏事情を熟知していた。前世では商隊に加わり、賭石場で働いた経験もある。後には中規模の賭石場を経営し、数多の賭博者を騙し、逆に高価な蠱虫を掘り出されることもあった。
入口で暫らく立ち、周囲を見渡した方源は左側の櫃台へゆっくり歩き寄った。
櫃台の裏には数メートル間隔で店員が立ち、男女共に青色の腰帯を締めていた――凡人ではなく、皆一転蛊師。大半が初階、一部が中階だ。
方源が櫃台前に近づくと、最寄りの女性蛊師が笑顔で近寄り、小声で言った:「お客様、どのような蠱虫をお探しですか?こちらの櫃台の岩石は一個十塊元石です。初めてなら右側の五塊元石コーナーがお勧めです。ハイリスクを求めるなら正面の高級櫃台が二十塊元石ですよ」
経験豊かな女性蛊師――方源の外見・年齢・身長から「学員」と見抜いた。
賭石場に来るのは蛊師のみ。学員は蛊虫の餌代で手一杯のはずで、賭博に回せる余裕などあるはずがない。
こんな学員は大抵見物だけ――金持ちの子供でもない限り、最安値の化石を一つ買う程度だ。
彼女は方源が多く購入するとは全く期待していなかった。
く組まれたもの、円筒形のもの、入口に柱を二本立てたもの、大きな赤い提灯を掛けたもの。中が明るく輝いている天幕もあれば、暗い天幕もある。
方源は歩きながら見て回わり、最終的に灰色の天幕の前で止まった。
「ここだ」
天幕の入口には二本の柱が立ち、陰刻の手法で対聯が彫られていた。
左側:「小施勇气,得春夏秋冬禄。」
右側:「大展身手,获东南西北财。」
中央に横書き:「时来运转」
間違いない、ここは賭場だ。
この賭場は一畝の土地を占め、大型の天幕に分類される。
方源が中に入ると、天幕の縁沿いに三列のカウンターが並んでいた。カウンターの上には琥珀や化石が置かれており、小さいものは手の平大、大きいものは洗面器ほどのサイズ。更に大きな一人丈のものはカウンターに載らず、直接地面に立てられていた。
他の天幕店舗の賑わいとは異なり、内部は静かだった。
数人組の蠱師がカウンター前に立ち――石を細かく観察する者、化石を手の平で転がして感触を確かめる者、仲間と小声で話し合う者、店員と値段交渉する者。
しかし誰もが声を押し殺し、他を邪魔しないよう気を配っていた。
ここは賭石場――蠱の世界では多種多様で数え切れない程の蠱虫が存在する。各々(おのおの)の蠱虫は特定の餌を必要とし、餌が無ければ一定期間しか生存できず死んでしまう。
しかし自然は生命に対し冷酷であると同時に慈悲深い。
餌が不足した場合、蠱虫は最後の手段として休眠状態に入り自己封印する。
例えば月光蠱が月蘭花弁を失うと、自己封印を開始する。力を極限まで収縮させ、冬眠のような深い眠りに就く。この時、体は青白い光を失い、透明な水晶状から灰色の石へ変質し、石殻に覆われる。長い時間が経つと石殻は厚くなり、頑石となる。
また酒虫の場合、自己封印すると白い繭を形成する。体を丸めて繭の中で眠り続ける。
当然、この休眠現象は全て(すべて)の蠱虫に起きる訳ではない。発生確率は低く、通常は餓死する。特定の状況下で稀に発生する現象だ。
蠱師たちが偶然これらの封印蠱虫を含む頑石や繭を手に入れ、休眠中の蠱虫を目覚めさせる――
小銭を稼ぐ者、人生が一変する者。
真実か虚偽か分からない噂話が絶えず、人々(ひとびと)の想像を掻き立てている。
蠱虫が封印され形成した化石は完全に一体となり、世間の探知手段を遮断する。残った数少ない方法も強引で、使用すれば衰弱した蠱虫を確実に殺してしまう。
だからこそ蠱師たちは推測・経験・運・閃きに頼るしかない。これが「賭場」たる所以だ。
大千世界には稀に穏和な探知法が存在するとの噂もあったが、方源の前世での検証で全て(すべて)虚偽と判明した。
「仮し本物の探知法があっても」方源は思う。「秘密裏に継承され、一部の者だけが掌握しているはずだ。大局に影響は無い」
青茅山周辺はまだ良い方で、東方に行くほど賭場が蔓延る。白頭山地域では全山寨に賭場が存在し、三大山寨――磐石寨・古墓寨・蒼鯨寨には千年の歴史を誇る超大型賭石場が営業を続けている。
今方源が立つ天幕は小規模に過ぎない。
普通の十五歳なら化石の群れに目を眩まされ、適当に選ぶところだろう。だが方源は違う。
第一に「瘡土蝦蟇」が紫金色化石に隠れているという情報がある。選択肢は三十個未満に絞られた。
二十数個の化石から正解を選ぶのは困難だが、五百年の経験を武器に観察を続け、六個の候補を厳選した。
「八割の確率で――瘡土蝦蟇はこの中に眠っている!」
彼の視線が紫金色の石を灼く。
・扁平過ぎる石⇒ 形状不適
・拳大の小石⇒ 容量不足
・表面が滑らか⇒ 瘡土蝦蟇の凹凸特徴と不一致
九十八塊元石所持の身で、生活費と蠱虫の餌代を差し引けば最大七個購入可能だ。
「運や直感に頼る愚か者は、大抵運命に弄ばれる」
かつて賭石場を経営した者としての確信が瞳の奥で光る。