空が透き通るように青く、洗い清めたような純粋さを湛えていた。
太陽は黄金色に燦然と輝く。
白い雲がふんわりと浮かび、彩雀鸚鵡の群れが賑やかに鳴き交わしながら、青空の下で矢印の陣形を組み、羽を雄々(おお)しく羽ばたかせていた。
この彩雀鸚鵡は春にのみ大群で現れる。全身の羽根は七色に輝き、鷹ほどの巨躯を持つ(もつ)。頭部と嘴は鸚鵡そのものだが、尾は孔雀のように長く垂れ下がっている。
方源が本命蛊煉化の試験で首位を奪取してから、十日余りが経過していた。
春風が山肌を緑に染め、野花が競い合うように咲き誇る。蜂の群れと蝶の群れが入り乱れ舞い、生気漲る春の情景が広がっていた。
春の気配は濃厚で、演武場を囲む高い竹の壁さえも遮り切れないほどだった。
この演武場は三畝の広さを持ち、地面は分厚い青灰色の石で平らに舗装されている。周囲には青矛竹が移植され、碧玉のような緑色の竹竿が隙間なく立ち並び、真っ直ぐに伸びた姿で緑の高壁を形成していた。
壁の根元には石畳が敷かれているが、所々(ところどころ)で青草が叢って生え出ている。竹と竹の間からは野薔薇が外から這い入り、壁頭まで蔓を伸ばしていた。
十五歳の少年五十七名が、今演武場の中に半円を描き、中央に立つ学堂家老を注視していた。
これは月光蛊の使用方法を教える授業であった。
「月光蛊は我が古月一族の象徴たる蛊である。熊家の熊力蛊、白家の渓流蛊と同様だ。本命蛊として月光蛊を選んだ者は良く見ておけ。攻撃方法を実演する。他の蛊を使う者も注意せよ。この遠距離攻撃法は応用が利く」
学堂家老は右手を伸ばし、掌を生徒たちに見せた。
「まず念で月光蛊を掌中に移せ」 月牙の刻印が腕を伝って掌の中心に移動する。
「次に空竅の真元を注ぎ込む」 銀色に輝く真元の細い糸が体内から涌き出し、刻印に吸収される。三転蛊師特有の白銀真元だった。
月牙が昼間にも関わらず淡い青い光を放つ。「すごすぎる!」「きれい…」 少年たちから感嘆の声が漏れる。
家老は掌に宿った月光を掲げながら語る:「最後は発射だ」
五指を徐ろに閉じ、腕を水平に伸ばし、掌を切り落とす動作。
シュッ。
淡い光が掌から離れ、幽藍の月刃となって飛翔する。十米先の草人形の首を30センチの厚さごと切断。断面は鎌で刈ったように平滑だった。
月刃は更に六米飛び、空中に消える。少年たちは首筋を撫でながら驚愕し、興奮した私語きが広がった。
ただ一人、方源だけが人混みに紛れ、冷たい表情を浮かべていた。
前世で六転の境地に達し、中洲に血翼魔教を築いた彼にとって、三転蛊師の演示など児戯に等しかった。
「月光蛊を煉化した者は前へ出よ。草人形を使って月刃の練習をするがよい」
学堂家老の声に応じて三十五人の少年が列を作った。
今期の五十七名の生徒のうち、丁等資質の二十二名は場外で羨望の眼差しを向けるしかなかった。月光蛊は古月一族の栄光の象徴――彼らには手の届かぬ存在だった。
十メートル間隔に設置された草人形を目掛け、少年たちが掌を切り落とす。青銅真元が注がれた月牙の刻印が水色に輝き、七八の月刃が飛び出した。
しかしその大半が空中で散り散りに――二、三メートルで崩れるもの、方角を誤り天を衝くもの。草人形に命中するのは偶然の一撃のみだった。
「每年の光景よ」家老は苦笑いを浮かべた。
五分後、演武場は淡青の月刃が乱舞する空間と化す。空中衝突する刃、壁に突き刺さる刃――秩序なき飛翔が春の陽を切り裂いだ。
学堂家老は個別指導を開始した。
彼は方正、漠北、赤城といった資質に優れた生徒を重点的に指導し、姿勢の誤りを辛抱強く修正し、自身の心得を伝授した。一方、方源のような丙等の生徒には、わずか二言三言の助言を与えるだけだった。
方源は手のひらに青い光を凝集したまま、数回空しく掌を切り、発射せずに形だけを真似ていた。場の混乱を見計らい、月光蛊の制御を解、掌をわずかに傾けて斬撃の動作を行った。
目立たぬよう、自身の正面の草人形ではなく、左斜め前方の一つを狙った。
「シュッ」という音と共に月刃が放たれ、混乱した中央地域を直線的に貫き、正確に草人形の首に命中した。
草人形は震え、首の大半が切断されたが、緑の草茎が急速に再生し、傷口は元通り(どおり)に癒合した。
この草人形は普通の藁人形ではなく、一転の草人蛊であり、木草系の微弱な自己治癒能力を有していた。
首を完全に両断しない限り、傷は短時間で修復される仕様だった。
「わっ! 今の月牙見たか!?」
「すごい! 誰が放ったんだ?」
草人形に命中する月刃自体が稀だったため、方源の軽い一撃がこれまでで最も顕著な効果を生じさせ、場外の生徒たちから驚嘆の声が上がった。
学堂家老の注意も引かれ、問い掛けた:「今の月牙は良く出来ている。お前が発ったのか?」
彼は対応する草人形を管理する丙等の生徒を見ながら訊いた。
その男子生徒は瞬きを連らね、突然注視されるや当惑した様子を見せた。正直、混乱した状況で月刃が飛び交う中、自分が放ったかどうか確信が持てなかった。
「しかし、多分自分の仕業だろう…?」少年は思い込み、無意識に頷いた。
周囲の生徒たちは急に彼を見直した。
「彼は誰? 名前は?」女子生徒たちが周りに尋ね回った。
「奴でも出来るなら、俺は尚更負けられん!」古月漠北は目に決意の光を宿した。
「兄貴の仕業じゃなかったのか…」古月方正は理由も無く安堵の息を吐いた。伯父夫婦の慰めもあり、前回の衝撃から回復していた。
「兄貴、先回りの首位は意志薄弱な月光蛊を選んだ幸運に過ぎない。蛊師の修行は運だけでは続かん。今度こそ俺が勝つ」方正は心の内で自らを奮い立てた。
「良くやった。この感覚を忘れず、練習を続けろ」学堂家老は少年の肩を叩き、微笑みながら励ました。
少年は興奮して頷き続け、目に新たな輝きが宿った。
家老はこの機会を利用し、宣告した:「全員聴け。これが諸君の課題だ。三日後に成果を査定する。最優秀の者には元石十個を与える。聴こえたか!?」
「おおー!」生徒たちは元石の報酬に沸き立ち、大声で応答した。
しかし僅か三分後、空中を舞う月刃の数は激減した。
「ちくしょう…一発ごとに一割の真元を消費する」
「月刃は消耗が激しい。丙等の俺は空竅に三割八分の青銅真元しか蓄えられん。三発が限界だ」
手を止めた生徒たちは一様に嘆息した。
学堂家老はこの様子を無表情で見守りつつ、心の中で感慨に浸った:「これが優れた資質の利点よ。月刃の使用法は『熟能生巧』の四文字に尽きる。資質が高ければ空竅に蓄えられる真元も多く、回復速度も速い。練習機会も自然と増える。資質が低くても元石で補えば練習量を増やせる。しかし資質も元石も無ければ、意欲はあっても力が伴わん。蛊師の道とはこれほど残酷なものだ。やはり優れた資質の者を重点的に指導するべきだろう」