484.順調に勝ち上がりました
「ルナ!」
「は、い!」
猛前と突っ込んでくる大斧使いの前にルナが飛び出し、大楯を構えてその攻撃を受け止める。
強烈な突進、からの振り降ろし。
それを完璧に防いだところで今度はシールドバッシュを繰り出し相手を吹き飛ばす。
「よし!」
その隙を逃さず尻餅をついたところへ棒を突き出し、喉元へと突き付けてやると戦意を失った相手は静かに武器を落とし両手を上にあげた。
「おーーーっと!ここにきてまさかのギブアップ!強い!強すぎる!」
「アイアンゴーレムでさえ吹き飛ばすあの突進を軽々と受け止めるだけでなく、更に吹き飛ばしてしまうなんて・・・一体どんなマッチョが隠れているんでしょう」
「いやいや、案外細身の美人だったりするんですよ。ネット投稿によればものすごい美人という話もあります、うらやましい!」
実況中継は試合会場にも響き渡り、それを聞いていた観客からも笑い声が聞こえてくる。
まったく、こっちはある意味命がけだってのにのんきなもんだ。
「っと、そんなことをしている間に向こうも決着がつきそうですね」
「桜色のお姫様が不釣り合いなメイスを振りまわしています!強い!強すぎる!」
「あのマチェット使いもすごいですね、素早い動きで翻弄しつつ確実に相手を追い込んでいきます。あの小柄な体でよくあのサイズの武器を振り回せるものです」
「それよりもすごいのはあの運搬人でしょう、見事な指揮に的確な狙撃。動きは地味ですがこの試合の隠れたMVPは間違いなくあの子ですよ」
気づけばそれぞれが確実に相手を追いつめ、無事にノルマを達成したらしい。
しかし、なんで俺の話が出てこないかなぁ。
ちゃんとルナと一緒に二人倒したのに、あの実況の二人には全く相手にされなかった。
あれか?俺が男だからか?
そりゃ月城さんみたいにイケメンじゃないけどさぁ。
なんて言っている間に七扇さんが最後の一人が降参し試合終了の笛が鳴る。
「試合終了!第三ブロック第一回戦は白狼の盾が勝利しました!皆様盛大な拍手をお願いします!」
大歓声に包まれながら観客に向かって手を上げ試合会場になっている巨大な石製のコートを後にする。
真っ白い石のコートは魔法で作られいるようで、派手な戦闘などで壊れてもすぐに復活できるのだとか。
壊れにくい素材で作ればいいのにと思ったこともあるのだが、なるほど即時復活させるのであれば魔法で作った方が早いもんなぁ。
このために何十男百と言う探索者が大会運営に参加しているのだとか。
確か、氷室さんの所の魔術師の皆様が大勢参加しているってのは月城さんから聞いた話だ。
大会に参加しない団員達には連盟から声がかかり手伝いに回るらしい。
一応報酬は出るけれどほぼほぼボランティアみたいなもの、それでも快く引き受けてくれるのはそれだけこの大会の事を盛り上げようと思ってくれているからだろう。
それに応えるためにも俺達は負けられない。
「みんなお疲れ、ケガはないか?」
「僕は後ろで指示を出していただけだし。綾乃ちゃんと桜ちゃんは?」
「私は大丈夫です」
「私もです、見た目は強そうでしたけど・・・正直そこまででしたね」
用意された個室に戻りそれぞれの状態を確認、桜さんの言うように同じCランクながらそこまで強くはなかったようだ。
あの禿げ頭を見るとなんかすごいのかと思ったが、見た目に騙されちゃいけないよな、うん。
「初日に出てくるのはほとんどがCランク、僕達は表向きCだけどBランクと同じぐらいの実力だから当然と言えば当然だよね。むしろここで苦戦しているようじゃ上には行けないってことだよ」
「須磨寺さんの言うとおりだ、油断せず確実に倒していこう。次はどのぐらい後になる?」
「んー、このペースで行けば二時間後かな。今日は後三戦あるから長丁場になるよ」
「しかもトーナメントなので上に行けば行くほど試合間隔が短くなりますのでご注意ください」
「了解、とりあえず今は二時間あるみたいだし・・・飯にするか!」
「「「やったぁ!」」」
「わふ!」
ケガをしたりかなりの接戦だったら休養に時間を割かないといけないけれども、さっきの試合ぐらいなら特にその必要もない。
武器を置いてリルに留守を任せつつ部屋の外に出た、その時だ。
「出てきた!」
「すみません!中央新聞です、インタビューお願いします!」
「すごい試合でしたね!あのサンライズをほぼ完封、その強さはどこからきているんですか!」
「大道寺選手!目線ください!」
「七扇選手!一言お願いします!」
「須磨寺選手!運搬人でありながら試合に出る事の意気込みをどうぞ!」
「あの美人は誰だ?まさかあの大楯使いか!」
「ビッグニュースだ!明日の一面これで行くぞ!」
外に出るや否や大勢の人間に囲まれてしまい身動きが取れなくなってしまった。
一瞬にして女性陣が囲まれ、俺は外へとはじき出されてしまう。
そこらじゅうでフラッシュがたかれ、皆何が起きているかわからない様子。
次も試合があるっていうのに流石にこれはやばすぎるだろう。
とはいえ周りにいるのは一般人、ここでスキルを使用しようものなら大変なことになってしまうわけで。
ならば、やることは一つ。
俺は大きく深呼吸をして腹筋に手を当てる。
「失礼します!!!」
そして出せる限りの大声を出すと、突然の事にそこにいた全員が耳をふさぎしゃがみ込んでしまった。
その隙をつき、桜さん達が慌てて部屋に戻ってくる。
彼女達を部屋に押し込み、そのまま扉を閉めた。
俺はと言うと、扉の前で仁王立ちになり彼らがドアに近づくのを防ぐ。
「俺達は試合が終わったばかりで疲れているんだ、静かにしてくれ」
「白狼の盾のリーダー新明さんですね、この快進撃について一言お願いします!」
「あの子たちはどこで知り合ったんですか!」
「あのタンクは一体何者ですか!どういうご関係で!」
「おねがいします!答えてください!」
桜さん達に話しかけられないと思ったら今度は俺への集中砲火、これが記者と言うやつなのか。
前に城崎で囲まれたこともあったけれど、あの時よりかはまだ怖くはない。
いくら質問してこようが無視すればいいだけの事、それにこれだけの騒ぎを起こせば・・・。
「君達いったい何をしているんだ!」
「木之本さん!」
「新明君、疲れているところ大変申し訳ない。予選大会でここまで騒ぎになることは無かったんだが、僕たち運営の見込みが甘かったようだ。ここは選手の控室、部外者はさっさとここを出て行ってくれ」
「何を偉そうに、俺達には報道する権利が・・・」
「その権利すら奪ってもかまわないんですよ、中央新聞さん。ここは貴方達がいていい場所じゃない、直ぐに立ち去らないというのであれば金輪際全国探索者覇勇戦での取材を拒否します。他の皆さんも同様です、選手が安心して休憩出来ないようにするのであれば、全員の取材権をはく奪します。これは脅しではありません、我々運営は選手を守る義務があります。取材がしたいのであれば正しい方法かつ正しい場所で行ってください。わかりましたね?わかったなら四十秒以内に移動しなさい」
騒ぎを聞きつけやってきたのはまさかの木之本さん。
てっきり警備が来てくれるかと思ったのだが、思わぬ大物がやってきてくれた。
なんせこの大会運営のトップファイブに君臨する偉いさん、おそらくは別の会場で業務にあたっていたのを騒ぎを聞きつけて飛んできてくれたんだろう。
流石に出禁になるのは困るとすごすごと離れていく記者たち。
やれやれ、初戦から面倒なことになったもんだ。
「申し訳ない、おかげで助かった」
「いや、謝らないといけないのはこっちの方だよ。君達のような探索者を守るための運営なのにこんなことになってしまい誠に申し訳ない。早急に対策を取ってもう二度と勝手に取材などはさせないようにするから。どうか許してくれ」
「許すも何も引き続きよろしく頼む。とりあえず今日は予選突破が目標だから、明日を楽しみにしておいてくれ」
「君達なら余裕で突破できると思うよ。それじゃあ、僕はこの件をすぐに処理してくるから」
そういうと木之本さんは忙しそうに元の場所へと戻っていった。
急に静かになった休憩室前、この出来事がこの後思わぬことにつながるのを俺達はまだ知らなかった。




