346.群れる魔物を蹴散らしました
「ま、こんなもんか」
向こうが反撃する間もなく三体を同時に撃破、C級ダンジョンだと三体同時に攻撃しても一体は残ってしまうけれどもD級だとこうも簡単に倒せてしまうのか。
ついこの間までD級ダンジョンでヒーヒー行っていたはずなのになぁ。
もちろん自分たちのレベルも上がっているし、装備も充実しているから当然と言えば当然なんだけどここまでの違いがあるのかと正直拍子抜けしてしまった。
「思ったよりも簡単に倒せましたね」
「俺も同じことを思ってたんだ。ついこの間までD級ダンジョンの階層主に悲鳴上げてたのになぁ」
「それだけみんなの実力が上がったてことなんだしもっと自信もっていいんじゃない?」
「私もそう思います。だってB級ダンジョンでも魔物を倒すことができたんですから、少なくともD級では苦戦しませんよ」
「そうだといいんだがなぁ」
そうやって油断して痛い目を見るのが俺なので、程よく気を抜きながら戦うとしよう。
因みに先程奴らが隠したのも最初に見つけたのと同じトリモチもどき、やはり七扇さんの罠発見スキルには反応しないので罠扱いではないんだろうけど、とりあえず使えそうなので回収しておこう。
かなりべたべたするけれど、不要な布で巻いておくとほかの物にくっつかないのでそれで様子を見ることにした。
武器をしまい再び森の中を進んでいくもまたあのトリモチがあるんじゃないかと思って中々速度が上がらない。
リルは特に気にすることなく進んでいくけれど、たくさん設置されているわけではないのだろうか。
「しかしこれを避けて歩くのって結構大変だな」
「罠発見で確認できないってことは桜ちゃんの直感だよりでしょ?戦ってる最中に踏んでも大変だけど、まぁ何とかなるよ」
「だといいんだが。いっそのこと外に出して置いたら取りに来てくれないかな」
「あれそのものを罠にするってことですか?」
「大事なものっぽいし、置いといたら取りにきそうじゃないか?」
「可能性はなくはないけど・・・やってみる?」
もしそれで魔物を倒せるのならあとはトリモチにさえ気を付ければいいだけなので進行速度も一気に上がることだろう。
物は試しとさっき拾ったやつを二つまとめてその場に放置、巨木の後ろに隠れて様子を見ることにした。
待つこと数分、ガサガサという音共に再びソルジャーアントが姿を現した。
やってきたのは全部で四人、そいつらはまっすぐトリモチに近づくとさっきと同様に周囲を警戒しながら一人が大事そうにそれを落ち葉の下に隠していく。
まさか本当におびき出せるとは思わなかったけど、向こうからきてくれるのならばありがたい話だ。
「いくぞ!」
「はい!」
俺達が飛び出すと同時に七扇さんのクロスボウが一人の頭を打ち抜き、残った三人をそれぞれが各個撃破。
例え群れで来たとしてもこのぐらいなら何の問題も・・・。
「和人君!左からも来たよ!」
「和人さん、右からも来てます!」
「グァゥ!」
「くそ、二方向ならともかく全方向はちょっと集まりすぎだろ」
木の槍を手にカチカチと顎を鳴らしながら集まってくるソルジャーアント、一体一体の強さはそこまででもないがやはり数で来られるとどうしても後手に回ってしまう。
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
それでも群がってくるのを突進スキルでなぎ倒しつつ残ったのを七扇さんが狙撃。
【ソルジャーアントのスキルを使用しました。ストックは後二つです】
さらに収奪したばかりのスキルを使用して相手の動きを阻害、収奪したのはさっきのトリモチのような白い物をばらまくスキルで、大きさはゴルフボールぐらいだけど一回で複数個まき散らせるので少しでも奴らの動きを止めることができた。
【ソルジャーアントのスキルを収奪しました。バインドボール、ストック上限は後三つです】
迫ってくる奴らにばらまいて動きを止めてはスキルを収奪して補充、それを繰り返して何とか同時に攻撃されないように時間を稼ぐ。
ルナは大楯を構え魔物を引き付けながらチクチクと攻撃、リルはブレスを振りまきながら相手の動きを遅くし白くなったやつを桜さんが叩き潰していく。
一体一体は弱くても恐れを知らない兵隊蟻は仲間の死骸を乗り越えて確実に俺達を追い詰めていた。
だれだよ苦戦しないって言ったやつ!
「くそ、多い!なんでこんなに来るんだよ!」
「知らないよ!」
「まるで餌におびき寄せられているみたい・・・って、それだ!」
「なにが!?」
「さっきのトリモチをマジックバッグへ!早く!」
なんで今の今まで気づかなかったんだよ。
最初からあれにおびき寄せられているってわかってたんだからさっさとしまえばいいじゃないか。
須磨寺さんが慌ててトリモチをマジックバッグへしまうと、途端に奴らの動きが変わった。
さっきまではまっすぐ向かってくる感じだったのに、明らかに殺意をもって俺達の方を見てくる。
あれ?もしかしてこれはこれでヤバい?
「全員警戒!さっきと違うぞ!」
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後八つです】
【コンビネーションが発動、拡散攻撃力アップ(小)を使用しました】
全員の攻撃力を底上げしつつモチベを上げて全員をサポート、本当は防御アップもしておきたいところだけど攻撃は最大の防御という事で蹴散らすほうを最優先にする。
自分にも攻撃力アップ(小)をかけて更に破壊力を増しつつ棍を振り回して一気に数を減らしていく。
突進スキルが無くても今の装備ならなぎ倒すことは可能、宝物庫で手に入れた新しい装備は伊達じゃない。
淡い青色を帯びた銀色の棒、青聖銀にも見えるそれはアズリウムとよばれ、冷気を帯びた非常に特殊な金属らしい。
非常に堅く、さらに高温にも強いまさに雪盲から出るにふさわしい武器。
冷気を帯びているけれども氷属性というわけでもないので、冷気系の魔物にも十分に効果を発する。
ダンジョンでも限られた数しか発見されていないそれは固い皮膚で覆われたソルジャーアントをいとも容易く薙ぎ払っていった。
【ソルジャーアントのスキルを使用しました。ストックはありません】
更に、近づいてくる奴らにトリモチを投げつけて行動を阻害すれば何とかなる・・・はずだ。
「これで、おわり!」
トリモチにおびき寄せられた大量の蟻兵士だが、最後は桜さんのメイスにより叩き潰されそのまま地面に吸い込まれていった。
まさに死闘、地面に転がる大量の素材がその数を物語っている。
確かにおびき寄せようとは言ったけれどもまさかこんなにおびき寄せることになるとは。
流石のリルたちも疲労困憊という感じで、最後のを倒したところでその場に座り込んでしまった。
「はぁ、おわった・・・」
「わふぅ」
「もう蟻は見たくないよ」
「私もです」
こくこく。
だれもが一階層からこんなに苦戦するとは思わなかっただろう。
アレを置けば奴らが取りに来る、その考えは間違いじゃなかったけれども流石に集まりすぎだろう。
なんだろうD級だからと甘く見ていた円山ダンジョンの洗礼を受けたような感じだ。
「さすがにもうこの階層に蟻はいないんじゃない?」
「時間が経てば復活するだろうけど、とりあえずそうだと信じたい」
「いったい何だったんでしょね、あの白いの」
「さぁなぁ、上に戻ればわかるんだろうけどとりあえず答え合わせは後回しだ。予定よりも時間がかかってるから早くしないと動物園の閉園時間になるぞ」
「・・・また今度でいいです」
敵が減った今なら二階層への道もすぐに見つかるはず、再び奴らと戦わない為にも重たい腰を上げて先へ進まなければ。
かくして群れる魔物を蹴散らすことには成功したものの、その代償としてかなりの体力を消耗したことになってしまった。
残りの階層は後五つ。
果たして無事に下りられるのだろうか。




