344.観光ついでに情報を集めました
札幌ダンジョンを出た俺達は外で柊さんと合流。
結構な時間が経ったはずなのにギルドでずっと待っていてくれたらしい。
「お待たせして申し訳ない」
「いえ、こちらも皆様に合わせた情報を集めたかったので大丈夫です。それにしても皆さんすごいですね、結成してまだそんなに日も経ってないのにこれだけの実績を積まれるなんて。スポンサーもしっかりとついていますしうらやましい限りです」
「仲間に恵まれたおかげです」
「そういう謙虚なところもギルドでは話題ですよ」
謙虚でいることで話題になるのはちょっとアレだが、悪い噂でないのなら何よりだ。
先程の疲れもあるのでひとまずホテルへと移動した。
桜さん的には中心部の系列ホテルに宿泊したかったらしいが値段の兼ね合いもあり断念、流石にこの人数が一緒に泊まるになるとそれなりの大きさ必要なのであえて少し離れたホテルにしたらしい。
離れたと言っても中心部にはすぐに出られるし、円山ダンジョンもすぐ近くなので好都合と言えば好都合か。
こじんまりとした外観だが一部屋一部屋が広い探索者向けホテル、そのワンフロアを全て俺達で貸し切ってくれたので他の人が来ることもなく安心して過ごせそうだ。
とりあえず各々の部屋に荷物を置いて休憩もほどほどにお楽しみの食事タイム。
桜さん達の希望を聞きながら柊さんがセレクトしてくれたお店へと向かい、ジンギスカンだなんだと北の恵みをいただいたのだが想像以上の美味しさに全員が目を輝かせて欠食児童のように喰らい付く。
ラム肉って匂いが強いって聞いていたけどそんな感じは全くなくむしろほのかに甘い感じすらするし、肉だけでなく魚も美味ければ野菜も美味い、これが食の大地の本領か。
「美味いとは聞いていたけどこれほどとは・・・」
「美味しい!」
「喜んでいただいて何よりです、これで木之元に文句を言われなくて済みます」
大満足なんていう言葉では言い表せない充実感、これ以上はいらないと思いながらも出てくる料理が腹に消えていく。
因みに女性陣はこのあと〆パフェなるものを食べようとしているらしいけど、流石に俺は難しそうだ。
「そういえば、柊さんと主任は長い付き合いなのか?」
「長いと言えば長いですね、本当に色々ありました」
「良いことも悪いことも?」
「悪いことはもっぱら彼ですね」
「あはは、なるほどな」
あまり詳しく話したくないという感じなのでこれ以上は聞かないでおこう。
言いたくなったら向こうから言い出すだろうし、どうしても気になるのなら木之元さん本人から聞けばいい話だ。
しかし悪いのは主任の方・・・、まぁ予想通りだ。
「さて、腹も落ち着いたところで明日からの予定なんだが・・・、とりあえず円山ダンジョンでいいんだよな?」
「動物園じゃないんですか?」
「動物園も行くけどさぁ、とりあえず目標は必要だろ」
「円山ダンジョンと言えばD級、虫系の魔物が多いので有名ですね」
「え、虫!?」
「そこまでグロテスクなのは出ませんけどそっちが多い印象です。難易度はそこまで高くありませんし、出現する魔物の関係上人気もあまりないので素材はそこそこ高値で売買されています」
「つまり楽に稼ぎたい俺達にぴったりってわけだ。D級ってことは15階層まであるからとりあえず明日は階層主をこえて六階層まで行こうと思う。そのあとは難易度に応じていけそうなら一気に走破したいところだ」
柊さんからダンジョンの情報を聞きつつ七扇さんが素材関係を補足する。
円山ダンジョンのある円山公園は札幌市内の西側に位置していて大通公園の延長線上にあり、札幌市民の憩いの場として親しまれている。
観光資源としては動物園なんかも有名、桜さん的にはまずそこに行きたいようだけど個人的にはダンジョンメインで行きたいところだ。
とはいえダンジョンばかりだとモチベが下がるばっかりなのでとりあえず階層主を超えたら早々に地上に戻って観光を楽しむ、そんな感じでいいだろう。
「虫かぁ・・・僕は大丈夫だけど凜ちゃん大丈夫?」
「よほどの物じゃなければ、まぁ」
「桜ちゃんは?」
「私はあんまり好きじゃないです。我慢はできなくないですけど、例の黒いやつとかは絶対に無理です」
「例の黒いやつね、なるほどな」
桜さんの名前も出したくないという気持ちがよく伝わってくる。
流石に自分もあれは好きになれないが、駆除しろと言われたらできるぐらいだ。
「とりあえず円山ダンジョンの魔物については資料をまとめてあるから時間があったら読んでおいてくれるかな。素材に関してもギルドに売るよりも高く買ってくれる別の業者を知っているからそこで売るといいよ」
「わざわざ虫系の素材を?」
「案外日常生活で使われているんだけど、イメージがよくないから公表しているわけじゃないんだ。例えばヘルメットとかアクセサリー、案外医療用機器にも使われているんだよ。あとは服とか繊維もあるし意外なところでは照明系かな」
「結構あるんですね」
「とはいえそれを使っているっていうと色々と問題があるからあまり知名度はないんだ、結果取りに行ってくれる人が少なくて値段が高くなる。本当はもっと素材を持ち込んでくれると市場への供給も安定するんだけどね」
なるほどなぁ、確かに虫の素材と言われると嫌な感じがあるけど日常生活でも虫の特性を生かしたものって多いっていうしなぁ。
痛くない注射針とかは蚊の針をリスペクトしているって話だし、トンボの複眼なんかもカメラ技術に用いれているらしい。
まぁ単純にいえばすごいってことだな。
「俺達が素材を持ち帰ることで素材は高く買ってもらえるうえに人のためになる、やらない手はないだろ?」
「言いたいことは分かります」
「因みにその稼いだ金でみんなは好きなものが食べられると。美味い物はいくらでもあるからな、財布を気にせず食べられるのは幸せなことだ。加えて食べた分はしっかりと動いて消費、つまり?」
「ゼロカロリーですね!」
自信満々っていうかそれしかない!みたいな感じで答える桜さん。
実際ゼロかと聞かれると答えはもちろんノーだけど、女性にはこういう免罪符が必要なものだ。
そんなわけで明日は予定通り円山ダンジョンに決定、難易度はそこまで高くないし休憩をはさみながら潜れば1日で出てこれるだろう。
時間によってはそのまま遊びに出てもいいし、遅い時間なら翌日をオフにして堪能すればいい。
旅行じゃないんだし時間はいくらでもあるんだからのんびりと攻略していこう。
まぁ、俺は支払いがあるからのんびり過ぎても困るけど何とかなるだろう・・・知らんけど。
「さて、それではそろそろお開きにしましょうか」
「「「は~い」」」
「この後は・・・〆パフェだっけ?」
「そうだよ!もちろん和人君も行くよね」
「行かねぇよ」
「え~、こんなに可愛い女の子だけで行かせるの?」
確かにルナも含めて可愛い女の子ではある、一人を除いては。
ってか、これだけ喰って全員まだ入るのかよ。
「ルナも行くのか?」
「は、い!」
「甘いの好きだもんなぁ・・・リルはどうする?」
「わふぅ?」
「お前は甘いのより肉だもんな。しっかり食ったか?」
「グァゥ!」
俺達の二倍、いや三倍量ぐらいは食べてたんじゃないだろうか。
一応食べ放題プランだったので問題はなかったみたいだけど、お店的にはどうだったんだろうか。
まぁそれをわかって受け入れているから大丈夫だとは思うけど。
その後、パフェを食べに行く女性陣を柊さんにお願いして俺とリルは二人でホテルまで戻ることにした。
「たまにはこんな時間もいいもんだな」
「わふぅ」
「これから潜るところはそんなに難易度は高くないダンジョンなんだろうけど、それでも何があるかはわからない。引き続きよろしく頼むな」
「グァゥ!」
良い返事をするリルの頭をなでつつ冷たい空気を頬に感じながらのんびりとホテルまでの道を歩く。
初めての北の大地、はてさて何が待っているのやら。




