336.拾った装備について話し合いました
ギルドでの清算を終えた俺たちは早々に帰宅し、時間も時間だったのでその日はそのまま解散になった。
あまりの疲労感に早く寝たかったのもあるので非常にありがたい、桜さんたちもそうなるのを見越して夕食などの準備はしていなかったようだ。
この辺りの読みというか気遣いはさすがだなぁと感じながらベッドに飛び込んだ数十秒後には意識を手放し夢の彼方へと旅立っていた。
翌日起き出したのは昼過ぎ、まだ寝ていられそうな感じだっけど空腹には逆らえずベッドを抜け出してリビングへと移動した。
「あ、和人さん!おはようございます」
「おはようっていうかおそようだけどね、どう?よく寝れた?」
「おかげさまでぐっすりだ」
「ドラゴンと戦ったんですからそれは疲れたと思いますよ」
それを言われると確かにそうなんだが、戦えたのもリルとルナがいてくれたから・・・って、あれ?
二人の姿が見えないんだが。
「リル達は?」
「リルちゃんとルナちゃんは二人揃って散歩に行っちゃったよ」
「散歩に?」
「何やら楽しそうな感じでしたけど、何かあったんでしょうか」
ルナが肉体を取り戻してから頻繁に外出しているのは知ってるけど、リルと一緒ってのは珍しい。
どっちかっていうとリルはめんどくさがりなのでできればゴロゴロしていたいタイプ。
特に昨日の今日で疲れているのなら尚の事俺の足元で寝てそうなもんなんだがなぁ。
「まぁ一緒に戦う仲だし何かあるんじゃない?」
「そうかもなぁ」
「和人さんご飯はどうしますか?もう少し後にします?」
「いや、腹が減って起きてきたから食べる」
「じゃあたっくさん作りますね!」
「ほどほど、ほどほどでいいから」
気合い十分の桜さんだが、前に作ってもらったらとんでもない量が出てきたことがある。
本人的にはそこまでの量じゃなかったみたいだけど、いくら空腹とは言え3合のお米を食べることはできない。
程々と言いながらもでてきたのは中々の量、それらを美味しくいただいているとリルとルナが大きな何かを持って帰ってきた。
持ち帰った四角い箱の中に入っていたのは沢山のケーキ、これを食べたくて朝から出かけていたらしい。
宝物庫走破のお祝い、粋なことしてくれるじゃないか。
そんなこともありながらお腹もしっかり満たされたので、お待ちかねの分配タイムと行こうじゃないか。
「とりあえず昨日持ち帰った装備はこれで全部、棒は俺が使うとしてクロスボウは七扇さんでいいよな?」
「今回何もしてないんですけど、貰ってしまっていいんでしょうか」
「装備が良くなればこの先ダンジョンに潜った時により効率的に戦えるわけだし、命の危険も少なくなる。先行投資だと思って使ってほしいんだが、もしタダなのが気になるなら相場の半値でどうだ?」
「それでしたら是非、ありがとうございます」
七扇さんのことだから遠慮するのはわかっていたので事前に対応策も検討済み、4分の1とかでもよかったんだけどわかりやすく半値で引き取ってもらうことにした。
同じ流れでチェインメイルを須磨寺さんに使ってもらおうと思ったんだが運搬人が装備するレベルじゃないってことで辞退、桜さんも今の鎧があるので結果俺が装備することになってしまった。
素早さの効果がついたコバルティウムのチェインメイルは一般相場で約600万、続いて途中で装備していたネックレスは引き続きルナが装備する事で決定。
雪盲ならではの装備で、雪と氷の影響を受けなくなるお守りらしい。
なるほど、ドラゴンのブレスを真正面から受け止められたのもこのネックレスのおかげだったのか。
普通に考えて大楯一つでどうにかなるもんじゃないもんなぁ、偶然とはいえ装備してくれたおかげで倒せたと言っても過言ではないだろう。
「そんでもってこれが1番の問題なんだが・・・マジックバッグはギルドの共有財産にするのはどうだろう。別に俺だけが使うものでもないし、資産にすれば色々と便利だろ?」
「和人君の気持ちもわかるし僕達からすればありがたい話だけど、これこそ和人君のもののするべきだよ」
「なんでだ?」
「価値がありすぎるんです。共有するってことは誰でも持ち出せるって事ですし、今後誰かが旅団に入った時に持っていかれる可能性もあります。あくまでも和人さんのものとして私たちが使わせてもらう方が今後色々と便利かなと思います」
「確かに人が増えた時にややこしいのか」
「なんせ3000万クラスの道具だからね、それを共有で使うにはちょっと無理がありすぎるよ」
なるほどなぁ、便利なものだから共有でって思ったけど、それが不要な争いを生むならとりあえず私物にしておいて皆で使う感じが良さそうだ。
「そういう事だね」
「そう考えると人を増やすのも考えものだなぁ」
「あぁいうのはリーダーシップがないとすぐ破綻するからねぇ」
「俺には向いてないやつだ」
「そうですか?和人さんはしっかりあると思いますけど」
さくらさんはそう言ってくれるけど昔からそんなに人と群れないタイプだったので多くなりすぎるとちょっとめんどくさい感じはある。
まぁ当分増やすつもりもないし、今は問題ないだろう。
残りはドラゴンのマントだが、防御力の兼ね合いから桜さんに使ってもらう事で決定した。
俺が装備してホワイトベアを桜さんにという意見もあったけど、ちょーっとゴワゴワなんだよなぁ。
その点ドラゴンのは軽くて動きやすいので桜さんの動きを阻害しないし、かなりの防刃能力なので背後からとか矢が降ってきてとかそういうのにもしっかりと対応できる。
とりあえずこれで分配は終了か。
「残りはローブだけど・・・前に泉ダンジョンで拾った杖があるからサポーターに使ってもらえたら完璧なんだけどねぇ」
「確かに回復とか支援の面では今後必要になるよなぁ。とはいえ不用意に人を増やすと取り分も減るわけだし難しいところだ」
「それでもうちは多い方ですよ?本当はリルちゃん分も分配しなきゃいけないのに浮かしてますから」
「お金も大事ですけど命には代えられませんし、いい人がいたら考えてもいいかもしれませんね」
確かにそれはあるんだよなぁ。
命あっての探索者、無理するぐらいなら一人増やしてでも安定を取るのが基本だ。
収入に関しても難易度が上がるにつれ素材の値段も上がっているから人が増えて減るわけじゃない。
じゃあ今のままで難易度の低いところを安全に回ればいいじゃないかと考えることもできるけど、この辺は今一度みんなの考えを聞いた方がいいかもしれない。
上を目指し続けるのか、それとも安定を取るのか。
俺の今の夢を考えたら安定一択、でもそれで満足していない自分がいるのもまた事実。
この辺は早めに決めておかないとなぁ。
「わふ?」
「ん?」
その時だ、俺の足元で話を聞いていたリルが急に移動したかと思ったら、その拍子に装備品が入っていたリュックを倒してしまった。
全部取り出したと思っていたのに中から白いボールが転がり出てくる。
ちがう、ボールじゃない。
「あ、そういやこいつを忘れてた」
転がり出てきたのはドラゴンを倒した時に回収したオーブ、アイスドラゴンの魔力というかそんな感じの冷気を纏っているのか持つとかなり冷たかったりする。
これを売るかはたまた何かに使うのか。
どうしたもんかと思っていたら、転がったオーブを追いかけていたリルがまさかの行動に出た。
「あ!」
ふざけて噛みついた次の瞬間。
勢いよく口の中に吸い込まれていくオーブ。
あまりに突然の展開に全員の目が点になってしまった。




