331.氷と炎がぶつかり合いました
目の前に立ちふさがるのは真っ白いドラゴン。
事前情報がないだけにスノードラゴンなのかホワイトドラゴンなのかアイスドラゴンなのか、ぶっちゃけどれかはよくわからないけど白くてデカいのだけは分かる。
物凄い咆哮に耳が潰されそうになるのを感じながらも心を奮い立たせて中央に立つドラゴンの所へ、俺達が臆することなく突っ込んでくるのを見て早速相手も動き出した。
「ブレス来るぞ!」
大きく首を伸ばして上を見上げるドラゴン、過去に見た資料の中でドラゴン種があの動きをする時は十中八九ブレスを吐く時だ。
即座に俺とルナは左へ、リルは右へ移動。
いくら冷気耐性があるとはいえブレスの直撃を耐えきれるものではない、首を振り下ろすと同時に吐き出された白いブレスが広範囲に拡散、着弾と同時にトゲのような氷がいくつも地面から生えてくる。
なんていう威力、あんなのを真正面からっていうのは流石に無理がありすぎる。
左右に逃げたはずなのに拡散する勢いが思ったよりも早い、正面を行くルナの右手にブレスがかかったかと思ったら即座に白く染まってしまった。
「大丈夫か!」
こくこく!
いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ・・・と思いきや、真っ白になった右手が氷が解けていくかのように元に戻っていく。
リルは速度があるので余裕で回避、ドラゴンは先に向かったリルの方を向いたので反対側から一気に接近する。
【エクスプロージョンのスキルを使用しました。ストックは後五つです】
氷か雪かはわからないけど間違いなく効くであろう炎、まっすぐに伸びる炎の渦が左の翼に命中すると同時に一気に燃え上がった。
「ギャォォォォ!」
「よし、効果あり!」
まぁ当然と言えば当然だけど、いきなり燃え上がった翼を必死にはためかせてドラゴンが叫び声をあげる。
そして怒りに燃える目をこちらに向け巨大な爪を振り下ろしてきた。
中々な勢いではあったが前にいたルナが大楯でしっかりとそれを防ぎきる。
【ボルケーノスライムのスキルを使用しました。ストックは後五つ半です】
物凄い衝撃音に耳がキーンとするけれど、その隙を逃さず大楯の横から飛び出して次の攻撃を仕掛ける。
狙うは足、いくら体が大きくともそれを支える足が崩れれば強力な攻撃はできなくなるはず。
溶岩弾を放出しつつ着弾と同時に巨大な脛に向かって棍を振り降ろし水晶に魔力を込めるて爆発させる。
「やっぱりそうだよな!」
ドラゴンの鱗は鉄よりも固いと聞いていたように、渾身の一撃のはずなのに少々の傷がつくだけで鱗をはがすことすらできなかった。
多少焦げ目はついたけれどもその程度、そのまま足元にいると踏みつぶされてしまうので走り抜けるように尻の方へと向かったのだが、待ってましたと言わんばかりに巨大な尻尾が俺の頭上に振り下ろされる。
しかも尻尾の周りは真っ白い靄に覆われていてただ避けるだけではすみそうもない。
【フレイムホースのスキルを使用しました。ストックは後四つです】
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
【コンビネーションが発動。火炎牙を使用しました。】
突進スキルに火纏いを加えることで全身を燃やしながら振り下ろされる尻尾を回避、尻尾の周りの靄が空気を凍らせるような冷気を纏っていたけれど火を纏っていたおかげで相殺することができたようだ。
氷の靄が炎とぶつかり真っ白い蒸気があたりにたちこめる。
一瞬視界が白に染まるけれども迷うことなく走り抜け尻尾の攻撃範囲内から脱出、即座に反転すると不意を突いたはずが獲物に逃げられ悔しそうにドラゴンが俺の方をにらみつけていた。
「さて、どうやってダメージを与えるか」
炎が効くのは確定として、そこそこの強さで攻撃したはずなのに固い鱗にはあまり傷をつけることはできなかった。
が、全くつかなかったわけではないので繰り返すことでいずれあの鱗を引っぺがすことができるだろう。
だがそのたびにあの尻尾とブレス、体当たりを避け続けなければならないので無限にできるというわけではない。
スキルにだって使用回数があるし、どこかで一気にダメージを与えなければジリ貧もいいところだ。
加えてドラゴン種には暴走ではなく狂化が必ず起きる。
攻撃力も動きも格段に上がり更には自己回復までするという探索者泣かせの第二形態、果たしてこれを超えられるのだろうか。
「大丈夫、俺一人じゃない」
また一人で落ち込んでしまいそうになるけれど、リルとルナが危険を顧みずドラゴンへと向かっている音がする。
鋭い爪で鱗を切り裂き相手の攻撃を大楯でしっかりと受け止める、二人がいる限り決してあきらめない、再び闘志を燃え上がらせ暴れまわるドラゴンへと向かっていった。
それからどれぐらいの時間が経っただろうか。
何度も繰り返される攻撃と回避。
リルの爪が脛につけた傷めがけて棍を振り下ろしつつその場を走り抜け、振り回される巨大な尻尾が頭の上を通り過ぎるのをスライディングで回避しつつ、尻尾の勢いと衝撃で体勢が崩れそうになるのをすぐに立て直して反転、さっき上を通り過ぎた尻尾の根本めがけて思いっきり棍を振り上げる。
【ミノタウロスのスキルを使用しました。ストックは後四つです】
剛腕スキルで強化された振り上げ、更に命中と同時に火水晶の魔力を爆発させることで鱗の下から一気に引っぺがす。
「よっしゃ!剥がれた!」
これまで何度同じ場所を攻撃し続けただろうか、鮮血をまき散らしながら宙を舞う白い鱗を目で追いながら思わずガッツポーズをする。
だがこれで終わりじゃない。
奴からすればかさぶたをぺりっとはがされた程度、このままじゃすぐに回復されてしまうのでそれが出来ないようすぐに焼く必要がある。
【フレアパペットのスキルを使用しました。ストックは後三つです】
【マグマウルフのスキルを使用しました。ストックは後五つです】
【コンビネーションが発動。バーニングファングを使用しました】
マグマウルフのウルフファングと炎上のスキルを組み合わせる事で燃え盛る見えない牙が剥がれた鱗部分に喰らいつき、地肌諸共一気に焼きつぶす。
「ギャォォォォ!」
肉の焦げる香ばしい匂い、流石のドラゴンも耳をつんざくような悲鳴を上げて尻尾を振り回し始めた。
慌てて回避するもわずかに尻尾がかすり、そのまま数m吹き飛ばされる。
凍った床をゴロゴロと転がり視界が回転、体中に痛みが走るけれど骨が折れている感じはなさそうだ。
【恒常スキルを使用しました。回復(小)、次回使用は三十分後です】
転がりながらも回復スキルを発動、完全に痛みが無くなるわけじゃないけれど少なくとも眩暈がスッと引いていくのがわかる。
即座に立ち上がり前を見ると、怒りに燃えるドラゴンが首を上に持ち上げたところだった。
「やっば!」
慌てて突進スキルを発動するもディレイ中のため発動しない。
仕方なくブレスの射線から逃げるべく横に走るけれど振り下ろされる方が早く、目の前に強力なブレスが迫っていた。
万事休す、と思いきやそれよりも先にルナが俺の前に立ちふさがり大楯を地面に突き立ててブレスを真正面から受け止めた。
凍てつくブレスがルナに直撃、彼女の後ろだけがブレスの安全地帯になるも見る見るうちに大楯を持つ手が白くなっていくのがわかった。
更には勢いに耐え切れずじりじりと後ろに下がってくる。
このままだとブレスの勢いに地面に刺した大楯が巻き上がり、二人とも直撃を喰らってしまう。
【ミノタウロスのスキルを使用しました。ストックは後四つです】
すぐに立ち上がり剛腕スキルで彼女の背中を押して一緒になってブレスを耐える。
余りの冷気に白くなるルナの腕、見る見るうちにそれが腕から肩そして背中へと広がっていくかに見えたその時だ。
彼女の胸元が白く光りそれと共に白くなっていた部分がスッと引いていくのがわかる。
胸元にあるのはさっき拾った例のネックレス、どんな効果が発動しているかはわからないけど少なくとも冷気に何らかの耐性があるのだけは分かった。
次第にブレスが弱まり彼女を支える力が弱くなっていく。
「悪い、助かった」
「ダイ・・・ジョウブ」
「ん、まさか肉体化してるのか?」
「ソ・・・ウ」
「体は?寒くないか?」
コクコク。
どうやら長時間はできないようだけど、さっきのブレスも肉体化したことで耐えきれたようだ。
冷気で凍傷とかになってなかったらいいんだけどこれもブレスレットのおかげだろうか。
なんにせよブレスの直撃を耐えられるのは非常にデカい、ブレスが吐き終わるよりも早くリルが先ほど焼いた尻尾へと攻撃を再開。
あそこを攻撃し続ければいずれ尻尾を切り落とすこともできるだろう。
大丈夫だ確実にダメージは与えられている、ルナの背中をポンポンと叩いて感謝を伝えつつリルの所へと走り出した。
初めてのドラゴン戦、巨大な相手を前にそれでも俺達は挑み続ける。




