330.宝物殿にふさわしい魔物でした
ありがたいことに通路の奥には階段があり、例の地雷原を歩く心配はなくなった。
一階層同様階段の横には輝く宝箱が二つ、残念ながら一つは銅色だったけど二つあるだけでもありがたい話だ。
念のため罠がないかを確認してから順番に開封、銅色の宝箱にはポーションとクリスタルといういつものセット、上で当たりを引いた銀色の箱には、雪の結晶のようなトップの付いたペンダントが入っていた。
個人的には階層主で使えそうな強力な武器が入っていてほしかったところなのだが、残念ながらそううまくはいかないようだ。
まぁ剣とか斧が入っていたところで使いこなせないし、装飾品なら邪魔にもならないのである意味当たりと考えるべきだろう。
鑑定できないので装備の内容は分からないし、呪われているかどうか定かではないけれど見た感じは雪とか氷を意味する奴なんだろうなぁ。
今までに出てきた魔物を考えるとそれらに対応するものと考えるべきか、仮に呪われていて凍ってしまうとしても冷気耐性があるから状態異常は防げるはず。
階層主戦でいきなりつけるよりも今つけて確認するべきだろうか。
「これ、つけた方がいいと思うか?」
こくこく!
「ん?自分につけさせろって?」
こくこくこく!
俺がつけるつもりで意見を求めたらまさかのルナが自分を指さしてアピールしてきた。
確かに呪われていたとしても直接的な被害はないかもしれないが、元魔物に装飾品をつけて効果があるのだろうか。
もしかすると直感的に何かを感じているかもしれないけど・・・どうしたもんか。
「本当につけるのか?」
こくこく。
「呪われているかもしれないんだぞ?それでもいいのか?」
グッ!
一体誰に教えてもらったのか気合の入ったサムズアップで返事をするルナ、まったく絶対須磨寺さんだろ。
ペンダントトップの模様から考えるともしかすると冷気耐性的なものがつく可能性もあるわけで、そうなると俺よりもルナがつけた方が確実に意味がある。
ゲームだったら手に入れた瞬間に装備の効果がわかるのに、こういう時不便だよなぁ。
使い捨ての上にかなり高いけど、やっぱり鑑定用の道具を導入するべきだろうか。
基本は手に入れても鑑定してから装備することにしているのでそこまで重要性を感じなかったけど、こういう少人数での探索になると、現地で有用な装備が手に入るのは非常にありがたい。
さっきのランタンだって偶然効果があったけれども事前にわかっていたらもっと有効な戦い方があったわけで。
ま、今更いったところでどうにもならないので彼女の言うとおりにしよう。
「何があるかわからないからな?」
こくこく。
もう一度確認してからお辞儀するように頭を下げるルナの首に先程のネックレスをかけてやる。
念のために持ち上げるとちゃんと外れたので呪われている感じはなさそうだ。
白いペンダントトップが鎧の上で光り輝いている。
それを手で持ち、どう?似合う?と言わんばかりに首をかしげてこちらを見るルナ、見えないはずなのにヘルムの下で満面の笑みを浮かべているように見えてしまった。
「とりあえずは大丈夫そうだな」
こくこく。
「効果は・・・まぁわからないけど、とりあえずないよりかはマシだろう。でも少しでも変な感じがあったら外すんだぞ、わかったな?」
こくこくこく!
そんな感じで開封式は無事終了、事前の休憩をしっかり取っていたのでその足で階段を降りるといつものような巨大な扉が待ち構えている。
雪盲の名前に相応しい真っ白い扉、よく見ると雪ではなく氷でできていて精巧な細工が施されていた。
宝物庫というだけあってかなりゴージャスな感じ、いよいよこの先に階層主が待ち構えているわけか。
C級ダンジョンとかならおおよその強さがわかるけれども宝物庫の場合魔物の強さは未知数、ものすごい強い部屋もあればE級程度だったという部屋もあるけれど、今走破されているところの平均を考えるとそこそこ強いという感じのようだ。
いつもなら桜さんと七扇さんがいるし困ったときにはベテラン探索者として須磨寺さんのアドバイスも聞きながら戦うことができるけど、このメンバーになるとそういうわけにもいかないわけで。
それでも俺達なら何とかなる、そんな根拠のない自信が俺達を先に進ませていた。
「いよいよ階層主、二人とも大丈夫か?」
「わふ!」
こくこく。
吐く息は白く天井へと登っていく。
冷気耐性があるのでどのぐらい寒いのかはわからないけど、呼気の感じだとここが1番寒そうだ。
はてさてどんな魔物が出てくるのやら。
ここまでは各階層に何種類もの魔物が出てきたけれども階層主はどうだろうか。
二体までなら何とか出来る気はする、でもそれ以上の場合は大人しく撤退するしかないだろう。
撤退もまた一つの選択肢、死にに行くわけではないのでそこはしっかりと判断しなければ。
「よっしゃ、行くか!」
冷たくなった頬を叩いて気合を入れ、いざ階層主戦へ。
ルナが扉を押すと氷の欠片をまき散らしながらゆっくりと開いていく。
キラキラと破片が光る中、目の前にははまるで氷の宮殿のような巨大な空間が広がっていた。
「おぉぉぉ~」
目を奪われるような光景におもわず感嘆の声が漏れてしまう。
流石ダンジョン、外の世界ではこんな光景お目にかかることができないだろう。
だが、感動の光景を目の当たりにしながらもその奥には現実に引き戻すような奴が待ち構えているわけで、いつもは空間のど真ん中で寝ていることが多い階層主だが今回の奴は初めての戦いが待ちきれないのか翼を広げた迫力満点のポーズで出迎えてくれた。
「あれがドラゴンか・・・想像以上にデカいな」
「わふぅ」
「なんだ、ビビってるのかって?」
「ぐぁぅ!」
「ビビるに決まってるだろ。あの雰囲気、噂では聞いていたけど本物はやっぱりヤバいな」
明らかに今までの魔物と違う雰囲気にやばいしか言葉が出てこない。
ドラゴン。
ゲームや漫画、様々な作品に登場する最強の魔物。
この間シードラゴンとは戦ったけれど、ドラゴンと名前はついていても全くの別物だったようだ。
羽を広げた大きさは10mぐらいはあるんじゃないだろうか、臨戦態勢という感じで一歩でも入れば戦いが始まるのは間違いない。
今からあいつと戦うとなるといくら気合が入っていても怖気づいてしまうもの、っていうかこれが普通の感覚だろう。
だってドラゴンだぞ?
火は噴・・・かないかもしれないけど、ブレス的なものはしてくるだろう。
あの巨体に体当たりされるとやばいだろうし、足元に入り込んで踏まれたら即死は免れない。
あの翼を使われたら余りの風圧に近づくこともできないんじゃないだろうか。
ってか自分の何倍もデカいアレをいったいどうやって倒せっていうんだ?
いくらなんでもあれは流石に・・・と思っていると、横に立つルナが俺の肩をツンツンとつついてきた。
「どうした?」
不安そうな俺を見てルナが気合を入れるように両手で力こぶを作る、そのしぐさがあまりにも似合ってなくて思わず笑いそうになってしまった。
彼女なりに俺を和ませようとしてくれたんだろう、そうだよなここでビビってたらここまで来た意味がないよな。
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後九つ半です】
【トイメディックのスキルを使用しました。ストックは後九つ半です】
【コンビネーションが発動。攻防アップ(小)を使用しました】
自バフをかけて気合を入れてから一歩前へ、氷の宮殿に足を踏み入れた次の瞬間、物凄い咆哮が響き渡った。
俺達が初めての侵入者、そりゃやる気も十分ってもんだろう。
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
思わず鼓舞スキルを使って自分の折れそうになる心を奮い立たせる。
俺はこいつを倒す、そしてそれに見合う報酬を手に入れるんだ。
そう気合を入れ直し、棍を手に走り出すのだった。




