329.操っていた魔物諸共燃やし尽くしました
白い狼に追いかけられながら通路の奥へ。
実体がない相手と戦えるのは現状俺だけ、一匹一匹にスキルを使うとすぐにストックが切れてしまうので出来るだけまとめて倒したいところだ。
もちろん奥に行くと追加の狼が出てくる可能性もあるけれど、一網打尽にするのであれば多くても少なくても同じこと。
とりあえず今は走るしかない。
「ルナ、大丈夫か?」
こくこく。
「実体がない以上無理に戦う必要はないからな、とりあえず奥まで行って階段があればよしなければ行き止まりまで行って壁を背にして戦うだけだ」
肉体がない状態でどれだけ疲労がたまるかわからないけれど、あの鎧を着たまま走るのは中々に大変だ。
とはいえこの状況を乗り切るためには走ってもらうしかない。
「ぐぁぅ!」
「お、追加か?」
さっきまであんなに明るかった通路は目を凝らさないと奥が見えないぐらいに暗くなっている。
先を行くリルが合図を送ってくれるも魔物の姿はない、とりあえず奥まで進むと通路の途中でリルが止まっていた。
「ん?壁?」
目の前には巨大な壁、ここで行き止まりというにはあまりにも違和感がある感じだが押しても叩いても壁であることに間違いはない。
後ろからは確実に狼が迫ってきている、ならばこれを背にして戦うしか・・・。
「ぐるるるる」
「そこは、壁だぞ?」
「グァゥ!」
「何かいるのか?」
こくこく!
俺には壁にしか見えないけど二人には何か感じるんだろう、押しても引いてもだめなら別のスキルで対応するまでだ。
【ボルケーノタートルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
城崎ダンジョン十三階層、そこに出るボルケーノタートルのスキルと言えば背中のプチ火山から吹き出すプチ噴火、噴石は小さいながらも炎を纏い命中するとかなりの大ダメージになる。
ボルケーノスライムよりも広範囲に広がるため使うときは注意が必要だが目の前が壁ならそこまで気にする必要もない。
そんな噴石が目の前の壁に当たるけれども・・・変わりはない。
「クソ、暗くてよく見えない」
なにか解除するヒントがあるはずと懐中電灯を探すもすぐには出てこない。
それならばと先程拾った不思議なランタンを点灯すると、ぼんやりとした青白い光があたりを薄っすらと照らし出した。
中々幻想的な光景・・・って、あれ?
「壁が・・・ない?」
「わふ!」
「しかもあんなところに別の魔物、そうかあれを警戒していたのか」
青白い光に照らされた壁は半透明になり、押してもさっきのような抵抗はない。
どういう原理なのかはわからないけどこのまま挟撃されるぐらいなら一か八かにかけるしかないだろう。
意を決して壁の方へと走り出すと不思議な感覚の後、無事に向こう側へと抜けることができた。
「今だ!」
「グァゥ!」
まさか壁を抜けてくるとは思わなかったんだろう、慌てふためく壁の向こうにいた白い小人・・・いや、亜人めがけてリルが突進、すると突如何もいなかった場所からあの白い狼が姿を現した。
リルの爪を受けても効果はなくお返しとばかりにリルの首へ噛みついてくる。
こっちの攻撃は当たらないのに向こうのは当たるという理不尽は変わらない・・・っていうかこいつが召喚していたのか!
動揺している間に後ろの奴も追い付いてきたようでいつの間にか元に戻った壁の向こうでルナが襲われている。
前も後ろも白い狼だらけ、亜人を攻撃しようにもあの白い狼をどうにかしなければならないわけで・・・。
こんな時広範囲魔法でも使えたらと思うけれど魔法が使えない代わりに俺には収奪スキルがある。
桜さん達がいるとなかなか使えなかったあのスキルをついに使う時が来たようだ。
「二人とも戻れ!」
俺の合図にリルとルナが白い粒子になって戻ってくる。
残されたのは俺一人、ここぞとばかりに白い狼達が俺の首を狙って飛びついてきた。
だが味方がいないという事は流れ弾を気にしなくてもいいという事、奴らの牙が届くよりも早くスキルが発動する。
【ボルケーノタートルのスキルを使用しました。ストックは後八つ半です】
【ボルケーノスライムのスキルを使用しました。ストックは後六つ半です】
【コンビネーションを発動。バーストストライクを使用しました。】
まるで火山が噴火したような爆発音と衝撃が俺を中心に広がり、飛びかかっていた狼がなすすべもなく吹き飛ばされる。
更には溶岩のように真っ赤な噴石があたり一面に飛び散り亜人に命中するや否や真っ赤な炎を上げて燃え上がった。
実体のない狼は噴石の影響を受けなかったとしても召喚した本体はそういうわけにもいかない。
そして、本体が燃えれば召喚された方も燃えるのは必然。
かくして俺を中心として発動したコンビネーション技によって跡形もなく燃え尽きるのだった。
「はぁ、何とかなった」
余りの熱気に額に汗がにじんでくる、本来は凍えるような寒さのはずなのに今だけは常夏のような暑さだ。
冷気耐性はあっても熱気耐性は残念ながら切らしている、だがそれもすぐに収まることだろう。
燃え尽きた後に残されたのは複数のドロップ品、どうやら召喚された狼も素材をドロップするらしく大量の毛皮や牙などが転がっていた。
あの亜人が落としたのは何かのお札と・・・ローブ?
スキルを収奪できなかったのは残念だったけどとりあえず倒せたので良しとしよう。
「二人とも出てきていいぞ」
「わふ!」
「っと、大丈夫だって問題ない、だから落ち着け」
熱気が落ち着いたところで二人を呼び出すと、実体化すると同時にリルが勢いよくとびかかっていた。
余りの勢いにその場で尻餅をついてしまうが興奮冷めやらぬという感じでリルが顔を舐めてくる。
ルナも俺が無事なのを見てホッと胸をなでおろしていた。
二人からすればいきなり俺一人にさせたことが気になっていたんだろうけど、あの場にいたら逆に危なかったのでこうするしかなかったのは指輪やブレスレットの中からでも分かったはずだ。
「しっかし、あの壁が消えなかったら大変なことになっていたなぁ」
先程半透明になった壁はまた元に戻っていた。
あのランタンの光を浴びたからか、はたまた別の何かが影響したのかはわからないけどあれが無かったらいつまでもあの亜人に気づくことはできなかっただろう。
流石宝物庫産、鑑定しないとわからないけどきっとすごい力があるんだろう。
ぼんやりと青い光を放つランタン、光量が少なくて奥を照らすことはできないけれどどことなく不思議な雰囲気がある。
とりあえず素材と装備を回収してマジックバッグへ押し込みつつ、端の方に移動して座り込む。
この先に階段が無ければ例の地雷原を歩かないといけないので、できればこの奥にあってほしい所だ。
「ま、終わり良ければ全て良し、ってことで休憩したら奥に進もう」
「わふ!」
こくこく!
「階段があればいよいよ階層主、今までの感じだとかなり強敵だろうけど俺達なら何とかなるはずだ。最後までよろしくな」
ここを超えればいよいよ階層主、果たして宝物庫を守るのはどんな魔物なのだろうか。
期待と不安を感じながらしばしの休息をとるのだった。




