327.相手を燃やしながら戦いました
リルを追いかけてきたのは白い毛玉・・・いや、正確に言えば白い眼玉。
何やら怯えた感じで俺の後ろに隠れたリルだったが、その毛玉は俺の前で止まるとホバリングをするかのようにふわふわとその場で停止。
まっしろしろすけと言えばいいのだろうか、某アニメに出てきたやつの真逆かと思い指を出した次の瞬間。
毛玉のど真ん中が上下に分かれ中から目玉が出てきたときは思わずダンジョン中に響き渡る悲鳴を上げてしまった。
いや、マジであの距離で目玉はアカンて。
思わず棍ではなく拳で殴りかかろうとするも失敗、その後もふわふわと三つの目玉が俺の周りをぐるぐると回り絶妙な距離感で攻撃を避け続ける。
途中でルナが一匹を、更にリルがもう一匹をもっていってくれたとはいえ常に巨大な目に追いかけられるのは非常に気持ちが悪かった。
特に攻撃してくるわけでもなくふわふわと浮かび続ける目玉、そのまま奥に行こうかと思ったのだがまたあの地雷を踏むのが嫌で引き返そうとしたその時、突然奴の目が光り白いレーザーのようなものが俺の横を通り過ぎて行った。
あの時踵を返していなかったら背中に命中していたことだろう、外れたレーザーは壁に着弾。
すると、見る見るうちに壁が凍り付いてしまった。
「くそ、何もしないわけがなかったか!」
それからは連発してレーザーを発射、リルとルナの方も同時に攻撃が始まり慌てた様子で回避している。
まったく油断も隙もありゃしない。
「二人ともこっちだ!」
奥で戦い続けるのはあまりにも危険、ということで一度こちらへ呼び寄せると後ろの目玉も一緒になって追いかけてくる。
それはむしろ好都合、彼女たちが俺を追い抜いた瞬間を狙いスキルを発動させた。
【エクスプロ―ジョンのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
城崎ダンジョンで一番使い勝手がよさそうだと思って収奪したものの中々使わなかったこのスキル、この時のためにあるんじゃないかっていうぐらいのタイミングで発動したソレは、彼女たちを追いかける白い眼玉めがけてオレンジ色の翼を広げながら向かっていった。
火炎放射。
その四文字に集約された炎の動き、まっすぐに伸びた炎は周囲を焼きながら突っ込んできた目玉に襲い掛かった。
口がないのに悲鳴のような何かがあたりに響き目玉周りの毛を焼きながら落下、そのまま体を横に向けると俺を狙っていた奴にも炎が伸びていく。
流石に直撃とまではいかなかったけれどバランスを崩したところで突進スキルを発動させ、逃げ切られる前に叩き落とすことに成功した。
【シルヴリウムアイズのスキルを収奪しました。フロストビーム、ストックは後九つです。ストック上限はいっぱいです】
これもまたそのまんまのスキル、あの白熊同様にこのダンジョンではあまり使い道はなさそうだ。
他に魔物が出てきたときのことを考えるとどっちかをなくしたほうがよさそうだなぁ。
「やれやれ、油断も隙もありゃしない」
「わふぅ」
こくこく。
流石の二人も驚いたようで、いまだ燃え続ける毛玉もとい目玉を遠巻きに見つめていた。
とりあえずスキルがもったいないので残りを収奪、棍でしっかりとどめを刺すと目玉ではなくこれまた水色のビー玉のようなものをドロップした。
もしかしてここはこれしか落とさないのか?
とりあえず襲ってきたやつは倒したので引き続き奥へ・・・とも思ったのだが、地雷を避けつつあの目玉に追いかけまわされるのはしんどいので一度引き返すことにした。
入り口で少し休憩してから今度は右の道へ、最初から足元を警戒するも例の霜柱がいる気配はない。
もしかして通路ごとに魔物が違うのか?と思いながら先へ進むと、再び何かを踏む感触が。
またか、と思いながらもさっきとは明らかに感触が違いもっと粘っこいというか、足に張り付いてくるというかそんな感じがある。
恐る恐る足を上げると、糸を引くように白い物がくっついてくる。
氷と雪の環境では考えられない粘着力、よく見るそれは通路の奥の方へと続いているようだ。
とりもち・・・という感じでもないし、それでいて捕獲するための罠というわけではなく偶然そこにあったようにも見える。
例えるならそう、蜘蛛の糸みたいな感じ。
獲物を捕まえるのではなく獲物が来たことを知らせるために張り巡らされたそれは、確実に役目を果たしたと言えるだろう。
現にリルが俺の横で身構え、ルナが大楯を構えて待機している。
ほどなくして通路の奥から現れたのは見上げるほどに巨大な白い蜘蛛だった。
「どいつもこいつも白ばっかりだな!」
俺達を見るなりものすごい速度で突進してくる白蜘蛛、ルナが真正面から受け止めるも勢いを完全に殺すことはできずそのまま1m程後ろへ下がったが途中で何かに引っかかったように足が止まり上半身だけが後ろに倒れる。
バランスを崩しそのまま尻餅をつくルナ、これまでもっと巨大な魔物相手でもしっかりと受け止めていた彼女がまさかこんな姿をさらすとは。
「グァゥ!」
踏みつぶされる前にリルが横から体当たりしたことで鎧の横に鋭い足が突き刺さる程度で済んだが、もしそれが無かったら今頃鎧に大きな穴が開いていたことだろう。
白い体に真っ赤な瞳がいくつも並び、恨めしそうにこちらをにらんでくる。
リルも足元の糸が引っかかるのか非常に戦いにくそうな感じ、急ぎルナの手を引いて体を起こすも足元は糸だらけで非常に戦いにくい感じになっていた。
「くそ、めんどくさいな」
さっきの火炎放射で焼いてしまってもいいんだが、糸がまき散らされているのは足元。
折角なら直接ダメージを与えられればいいけれどそううまくはいかないようだ。
振り降ろされる無数の足を必死に避けつつ次の一手を考えるも中々いい作戦が浮かばない。
足が長いせいで胴体に棍が当たらないし、思った以上に足も硬い。
なにより足元の糸が邪魔で踏ん張りがきかないってのもある。
一度ブレスを使って凍らせてみようかとも思ったのだが、残念ながらそんな甘い相手ではなかったようだ。
とはいえ弱点は変わらないはず、それならもう一つ試してみよう。
【フレイムホースのスキルを使用しました。ストックは後七つ半です】
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
【コンビネーションを発動、火炎牙を使用しました】
火纏いで全身を燃やしつつ突進スキルを発動、予想通り新しいコンビネーションが発動した。
通常の火纏いよりも激しく体の周りが燃え上がり足元の糸を焼きながら蜘蛛に向かって突っ込んでいく。
そのままでは胴体には届かない、だが勢いをそのままに踏み台があれば話は別で勢いよく突っ込む俺の前にルナが割込みその場で片膝をつく。
その背中を強く踏み込み一気にジャンプ、さらに踏んだ瞬間にルナが勢いよく足を延ばすことで高さを増し届かなかった場所へと一気に近づいた。
流石にロケットスキルまではいかないまでもこれだけデカい魔物なら攻撃を当てることはできる、腹部に棍を叩きつけた瞬間に火水晶の魔力を爆破させてやると鼓膜が破れるほどの悲鳴を上げながら後ろへと倒れる巨大蜘蛛。
「リル!」
「グァゥ!」
背中から仰向けに倒れたのを逃さずリルの鋭い爪が足の付け根にめり込み、一瞬の間に二本の足を切り落とす。
俺も着地と同時に別の足へと殴り掛かり反対側の一本をへし折ることに成功、これで8本中3本は使えなくなったわけが、それでも立ち上がることはできるようで真っ赤な目を血走らせながら俺達をにらみつけてきた。
「せっかくの糸を燃やされたからってそんなに怒るなよ、こっちだって必死なんだ」
これは命の取り合いだ、向こうも必死こっちも必死。
何をしてもどちらか最後に立っていた奴の勝ち、そのためには手段なんて選んでいられない。
足元の糸が一緒に燃えたことで少しは動きやすくなっただろう。
やはり奴らの弱点は火、それを突き詰めていけば絶対に勝てる。
さぁ次はどこを燃やしてやろうか、この時のために準備してきたスキルを思い浮かべながら蜘蛛をにらみつけるのだった。




