326.白い魔物に包まれました
宝物庫【雪盲】二階層。
ここも上と同じく真っ白い吹雪の中を歩かされるのかと思いきや、洞窟風の光景が広がっていた。
一応フィールド型に属されるので完全な通路ではなく起伏の激しい感じ、一言に洞窟と言っても天井からは巨大鍾乳石のようなつららがいくつも垂れ下がっていて、どこを見ても白と水色に覆われている氷の洞窟。
その氷の壁にいくつか横穴が開いていてこのどこかに最下層への階段があるんだろう。
あの猛吹雪がなくなったとはいえ引き続き気温は低く、吐く息は真っ白で吐いたそばから雪というか氷のようになって散っていく。
それでも視界を白に染めるあれがないだけずっとマシだと思えてしまうのは寒くないからなんだろうなぁ。
「ルナ、大丈夫か?」
こくこく。
「これだけ冷たくなってると、下手に触ったらくっついて大変なことになるから絶対肉体化するなよわかったな?」
こくこくこく!
大昔それで痛い目を見たことがあるので特に素肌が触れてしまうルナは気を付けてもらわないと。
リルにとっては慣れたもので、むしろ心地いいと思っているんじゃないだろうか。
なんせフェンリルだからな、氷の狼としてこの程度の寒さで参ってもらっちゃ困るってもんだ。
「さて、この先も魔物だらけなんだろうけど・・・いったい何が出るのやら」
「グァゥ!」
「何が出てきても大丈夫だって?」
「わふ!」
「そりゃ心強い、引き続きよろしく頼むな二人とも」
こくこく!
一階層に四種類も魔物が出る中戦い抜いた俺達だ、ここでも十分戦える。
第一階層は氷や雪をイメージした感じの魔物だったように思う。
色は白であの吹雪に隠れられるような保護色、だがここは白いけれども岩のグレーなんかも交じっているので下手に白いと逆に目立つ感じだ。
とはいえ氷や雪系の魔物が出てくるのはこの宝物このコンセプトから考えても間違いない、はてさて何が出るのやら。
そんなわけで探索開始、まずは目の前にある三つのうち一番左の横穴を調査することにした。
横穴と言っても俺とリルが横並びに歩けるぐらい広く、天井も棍を振り回せるぐらいには高い。
まるでここで存分に戦ってくれと言わんばかりの環境、十中八九魔物の数は多いだろう。
「さて、何が出てくるのやら」
幸い横穴の中は明るいので明かりをつける心配はない、これで薄暗かったらたまったもんじゃなかったがこの辺は緩いんだな。
雪盲ってのはあくまでも一階層だけでニ階層はそうでもないってことだろうか。
んー、なんとなく違う気もするけれどとりあえず先に進もう。
引き続きリルに索敵を任せるフォーメーション、それでも左右から襲われる心配がないのは非常にありがたい。
ここでは初手を魔装銃に切り替え、弾丸に火の魔石を付与しておく。
右よし左よし、上よし。
特に魔物の気配もなく先を行くリルが戻ってくる気配もない。
うーむ、この横穴は外れだったのか?そんなことを思いながら歩いていたその時だ。
「ん?」
シャリと何かを踏みつぶしたような感触、それはまるでよく冷えた冬の朝にグラウンドに出来た霜柱を踏みつぶしたようなそんな感じ。
恐る恐る足を上げた次の瞬間、何かを察知したルナが俺を思い切り突き飛ばした。
それと同時に足元から白い吹雪・・・いや、マジでそんな感じで白い何かが爆発とともに噴き上がる。
加減する間もなかったのでかなりの距離を吹き飛ばされてしまったけれど、それよりも心配なのは彼女の方だ。
「ルナ!」
白煙のように噴き上がった何かがあたりに充満する。
今までの経験と第六感がこれを吸ってはいけないとすぐに判断し、マジックバッグから布を取り出して慌てて口元を覆った。
それと同時に白い何かが俺を包み込み第一階層の吹雪のように一気に周りが見えなくなる。
彼女の無事を確認したい、でも前がほとんど見えない。
さっきのは俺が何かを踏んだところから始まった、それが罠なのかそれとも別の何かなのかはわからないけれど不用意に進めばまた同じことになりかねない。
くそ、いったい何なんだよこれは。
煙のような何かは濛々と舞い上がり視界を奪うが足元はそこまで白くない、試しにうつぶせになると地面から50cmぐらいの空間は白くないことに気が付いた。
幸いなことに魔物の気配はない、ルナの足も見えるので一応立てるような状況ではあるようだ。
しかし、いったい何が爆発してこんなことになったんだ?
改めて目を凝らすように地面を確認、すると先程の感触を証明するかのようにところどころ盛り上がっているのに気が付いた。
霜柱、それがふさわしい見た目。
だがよく見ると霜柱よりも密度は濃いし、なんなら動いてる。
いや、マジで動いてるんだって。
丸で俺から逃げようとするように盛り上がった土と共にゆっくりと移動している。
ってことはもしかしてこれも魔物なのか?
また爆発するのも怖いので恐る恐る手を伸ばしつてみる。
【アイスモアのスキルを収奪しました。アイスボム、ストックはあと九つです】
予想通り魔物だったようでスキルを収奪、アイスモア・・・つまり地雷をもじった魔物なのか?
もしそうだとしたらこの白い床のどこかにこいつらが隠れているわけだろ?
一応多少は盛り上がっているら探そうと思ったら探せるけど、他の魔物と戦っている最中にこいつを避けながらってのは流石に無理があるだろう。
ともかくこいつをどうにかしないとまた踏みかねない、おそらく衝撃を加えると爆発するタイプだろうからもっと別の情報で倒す必要があるわけで。
ここは一つ撚りもなんにもないやり方でいこう。
取り出したるはいつも使っている携帯用コンロ、そいつを横に倒して霜柱の方へ向けて着火、青色の炎が一気に襲いみるみるうちに氷を溶かしてしまった。
全て溶けると水が地面に吸い込まれ代わりに飴玉のような青い結晶を残す。
何か魔力的なものがあるんだろうけどとりあえず上に戻って確認だな。
本当は火纏いとか炎上スキルでどうにかする手もあったけれど、スキルを使わずになんとかなればと思って成功だったようだ。
この先何が起きるかわからないだけにスキルはできるだけ温存したい。
しばらくすると白い靄が解けるように無くなり、何事もなかったかのようにルナが立っていた。
いや、足元がかなり白くなっているという事は一気に冷気が巻き上がった証拠。
動かなかったのではなく動けなかったんじゃないだろうか。
「ルナありがとな、おかげで助かった。動けそうか?」
こくこく!
「どうやらさっき踏んだやつも魔物らしい。素早くはないけどそこら中に隠れている可能性があるから気を付けて進もう。はぁ、冷気耐性があるからいい物のこんな場所俺以外には絶対に走破できないよな」
むしろ冷気耐性があったとしてもさっきみたいなのは危険だし、魔物もそこそこ強いから油断はできない。
こんなところで魔物が出てきたら・・・。
「ん?」
他に奴がいないかもう一度地面に伏せて確認していると、床が小刻みに震えていることに気が付いた。
しかもそれがだんだんと強くなっているのがわかる。
もしかしてリルが戻ってきたのか?
慌てて起き上がり奥を見つめると曲がった通路の先から彼女の姿が見えてきた。
明らかに何かに追われている。
先程の霜柱を踏みまくり、白煙を撒き散らしながら逃げるその背後にはまるで風船のような白い何かが浮かんでいた。




