5 皇帝と合わせて教皇にもなりました
僕は、水沢くんとの相談を始めた。
この会議に臨んで決めていたことがあったのである。
宗教、である。
「ねえ、水沢くん」
「はっ」
「君のお父さんが教祖をしている、あの宗教のことなんだけど」
「・・・」
「この世界で最も権威ある宗教ということにするから」
「はあ?」
僕は、考えてみた。水沢くんのお父さんが唱えていた教義。
粗雑だ。
前の世界で、多くの人の信仰を集め大きく教勢を伸ばすとは、とても思えない。
でも言っていることには一理ある。
多くの人びとをひとつにまとめるのに、宗教ほど便利なものはない。
宗教は、そのひとの価値観をまるごと支配する。いったん信じさせることができれば、あとは、言いなりだ。
この僕が独裁者となる世界においても、指導的な立場となる宗教を作りたい。
でもキリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教、その他、既存のどの宗教であっても、
「この世界ではこれが、人びとを指導する宗教だからね」
と、言っても他の宗教の信者が、それを認める訳がない。
もちろん、僕は、全知全能の神様。
僕が、そうする、と決めたら、それで世界は成り立ってしまうのだけど、できるだけ、前の世界の基本構造は変えない、というのは、僕の神様としてのポリシーだから、人びとの信仰を強制的に変えることはしたくない。信仰の自由は守りたい。
で、既存の宗教はそのままに、そのすべての既存宗教の上に存在する宗教を新たに創造する。
信仰の対象となるのは、既存の宗教における最高存在。
神、仏・・・。それらを超えた存在。
超神(スーパーゴッド:SG)。
その宗教の名は、シンプルにしよう。
超神教。
僕は、以上のことを水沢くんに説明した。
「君のお父さんには悪いのだけど、その社会で最も権威ある宗教におけるトップというのは、皇帝という立場よりも上とされることが多い。この超神教の教皇には僕がなる」
「はっ、承知いたしました。陛下」
「うん。あっ、教皇に対しては、陛下ではなく、猊下だから。覚えてね」
「はい」
「お父さんは、超神教の最高顧問ということにするから」
「はい、父は感涙にむせぶでありましょう。感謝いたします、陛下。いえ、猊下」
「で、水沢くんには、超神教の事務総長と、宗教院総裁をお願いします。称号は、大宗教公ということで、よろしく」
で、僕は、渡部くんとの相談に移った。
「そういう訳で渡部くん。この世界には超神教教会というものがたくさん必要になるんだ。」
「はい」
「で、大芸術公である君との相談なんだけど、この教会、それぞれの地域で、その地域を代表する建築物となります。
統一されたテーマを持った建物にしたいのです。キリスト教の教会とも、寺院とも神社とも異なる形式の建物。それでいて、宗教的権威と崇高さを併せ持つ建築物が必要です。」
渡部くんと相談した。
結論は、特に変わったものではなかった。
塔。過剰な装飾はなし。すっきりしたデザイン。そして、その塔は、厳かで神秘的な光に包まれる。
そしてその塔の周りを、その塔に合った、統一されたイメージのデザインの建築物で囲む。
僕は、この時は、神様としての能力をたっぷり使った。
歴史上におけるどんな芸術家も叶わない、そんなデザインの塔と建築物を創造できた。




