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視線の重なりでできた日常  作者: ゆら。


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第五話 見え方


帰り道。


河川敷。


風。


草、揺れる。


青木、歩く。


少し先。


しゃがんでる。


雨宮。


動かない。


青木「……?」


青木、近づく。


青木「何してんの?」


雨宮、視線そのまま。


雨宮「……苔」


青木、覗く。


地面。


緑。


小さい。


青木……ただの


青木「……苔じゃん」


雨宮「……なにに見える?」


青木「は?」


一拍。


青木「苔は苔だろ」


雨宮「……もっとよく見て」


雨宮「……決めたなら……変わんないけど」


言ってる意味がわからない。


……けど


しゃがむ。


顔、近づける。


見る。


青木(……よく見ろって言われても)


青木(……ただの苔だろ)


青木(……どこを見ればいいんだよ)


角度、変える。


光、当たる。


影、揺れる。


青木……


青木……うーん


もう一度。


少しだけ近づいてみる。


細い葉。


茎。


立ってる。


何本も。


重なってる。


奥。


さらに奥。


青木、少しだけ止まる。


青木「…………」


青木「……森」


雨宮、少し目を見開く。


雨宮「…………」


雨宮「……見えたんだ」


雨宮手をクッと握る。


雨宮「……いいね」


青木、雨宮の方は見ない。


苔を見てる。


さっきより。


森に見える。


そっと触れる。


指先。


湿ってる。


土。


青木(……同じなのに)


青木「……」


青木「……雨宮は?」


雨宮「……」


雨宮、視線を落としたまま。


雨宮「……胞子が光に反射してる」


指先。


ほんの少し奥。


雨宮「……星みたいだなって」


青木、苔を見る。


青木……どこだよ


もう一度。


見る。


角度、変える。


光。


ちら。


青木……


青木……あった


さっきの光が、残る。


点。


点。


点。


増える。


奥に。


さらに奥に。


青木……


青木……これか


森。


そのまま。


でも。


点。


広がる。


暗さ。


奥行き。


青木(……宇宙、か)


同じ場所。


同じ苔。


森。


消えない。


宇宙。


増える。


青木、少しだけ手を引く。


指先。


土の感触。


戻る。


青木、目を閉じて一呼吸。


もう一度雨宮と同じ方向を見る。


青木……


青木(見ようとすると)


青木(……見える)


青木(角度、変えたら)


青木(⋯苔の姿は変わってないのに)


青木(変わったのは)


青木……


顔を上げる。


雨宮を見る。


雨宮も、見る。


少しだけ、間。


青木「……今の」


青木「……すごかった」


雨宮、何も言わない。


でも。


ほんの少しだけ。


口角が上がる。


二人共、視線戻す。


足元。


今は、ただの苔。


でも。


青木……


青木(……他も、見えるのか)


また少しだけ、雨宮を見る。


雨宮は伏せ目がちに、苔を見続けている。


その横顔だけが、そこにあった。


風が抜ける。


終わり


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