最終話 ただ隣に
放課後。
夕方。
光、斜め。
自販機前。
ふと止まる。
急にジュースが欲しくなる。
並んだ缶を眺める。
少し考える。
ガコン。
結局、いつもの。
青木、少し笑う。
顔を上げる。
鞄を持った雨宮が通りかかる。
青木
「……今帰り?」
雨宮
「うん」
自然に隣。
いつもの距離。
青木、缶を見る。
今、自販機で止まらなかったら。
たぶん、
会ってなかった。
青木
「……最初さ」
雨宮
「うん」
青木
「こんなの、
ただの偶然だと思ってた」
雨宮
「偶然ではあると思うよ」
青木
「でもお前、
“寄る”って言ったじゃん」
雨宮、少し考える。
雨宮
「……うん」
缶、軽く回す。
青木
「最近さ」
青木
「分かるんだよ」
雨宮
「何が」
青木
「欲しいって思うと」
青木
「そっち行く」
小さく笑う。
青木
「自分で」
風。
静か。
雨宮
「……うん」
青木
「で、行くと」
青木
「たまに、寄る」
雨宮、視線を落とす。
少し遅れて、
瞬きをする。
青木
「……だからさ」
雨宮、青木をチラッと見る。
目が合う。
距離が少しだけ近い。
青木、少し笑う。
青木
「俺、
ここまで来るの結構頑張った」
雨宮
「うん」
即答。
青木
「そこ即答なんだ」
雨宮
「ちゃんと寄せに来てたから」
青木、少し止まる。
少しだけ照れる。
青木
「……それ、
言い方ちょっと恥ずい」
雨宮
「そう?」
青木
「そう」
風。
髪が揺れる。
沈黙。
でも、
もう困る沈黙じゃなかった。
青木、ジュースを開ける。
一口飲む。
青木
「で」
雨宮
「うん」
青木
「お前は?」
雨宮
「何が」
青木
「寄せてたのか」
雨宮、少し考える。
いつものみたいに、
順番に整理する。
きっかけ。
変化。
距離。
理由。
でも。
途中で止まる。
続きを探すみたいに、
雨宮の視線が少し揺れる。
雨宮
「……分からない」
青木
「ふーん」
責めない。
雨宮
「最初は、
見てただけだった」
青木
「うん」
雨宮
「でも」
間。
目が合う。
雨宮
「気づいたら、選んでた」
青木、止まる。
ほんの少しだけ。
雨宮、自分で言ってから、
少し遅れて黙る。
青木
「……それ」
雨宮
「まだ、いい」
青木
「何が」
雨宮
「そのままで」
青木、少し黙る。
青木
「……そっか」
青木、笑う。
遠くでチャイム。
いつもの音。
雨宮、空を見る。
青木、隣にいる。
何も確定していない。
でも。
ここまで来た流れを、
偶然だけとは思えなかった。
青木
「まぁ」
小さく笑う。
青木
「来る時は来るんだろ」
雨宮
「……」
少し遅れて、
雨宮が視線を落とす。
否定しない。
沈黙。
青木、
その反応を見る。
一瞬だけ、
息を止める。
それから。
口元が、
少しだけ緩む。
でも、
笑いすぎない。
缶を持ち直す。
指で少し回す。
落ち着かないみたいに。
青木
「……そっか」
歩き出す。
並ぶ。
同じ速度。
夕方の影が、
少しだけ近づく。
ー視線の重なりでできた日常・終ー
この二人「待つ時間」という作品(未投稿ですが)にちょこっとですが友情出演予定です(^^)
そちらもよろしくです




