524 実りの収穫と、我が家への帰還
雨上がりの畑は、昨日よりも一層生命力に満ち溢れていた。
湿り気を帯びた黒土は柔らかく、俺とメセタの足跡を深く刻んでいく。
「まずは、収穫用の道具を揃えないとな」
俺は畑のすぐ横に建つ倉庫の重い扉を開けた。
中はひんやりとした空気が漂い、棚には俺が願って出した農具が整然と並んでいる。
俺は心の中で「手編みの収穫カゴと、切れ味のいい収穫バサミ」を思い浮かべた。
ぽんっ。
使い込まれたような風合いのカゴと、手に馴染むハサミが棚の上に現れる。
それらを手に取り、俺は再び外の眩しい光の中へと踏み出した。
「我が君、あちらのトマトが一番いい香りを放っています。今、まさに食べ頃かと」
メセタが鼻をヒクつかせ、赤い実が連なる一角を指し示した。
彼の鋭い嗅覚が、完熟した瞬間のわずかな香りの変化を捉えているのだ。
トマトの苗に近づくと、雨露に濡れた真っ赤な実が太陽の光を反射してキラキラと輝いている。
俺はハサミを入れ、一粒ずつ丁寧にカゴへと収めていった。
パチン、という軽い音と共に、ずっしりとした重みがカゴに加わっていく。
続いて、土の中から顔を出していた立派な大根や、瑞々しいナスも次々と収穫した。
「よし、これくらいあれば今日の昼飯は豪華になるな」
カゴ一杯になった野菜からは、大地の力強い匂いが立ち上っている。
メセタも満足そうに目を細め、俺の横を歩いて家へと向かった。
勝手口から家に入ると、キッチンの明るい光が俺たちを迎えてくれた。
カゴをシンクの横に置くと、野菜に付いた泥の匂いがリビングまで広がる。
「ただいま。いいもんが獲れたぞ」
俺の言葉に、奥の部屋から目を覚ましたリッカや子供たちの楽しげな声が聞こえてくる。
自分たちの手で育て、収穫したものを持ち帰る。
この当たり前のようでいて、最高に贅沢な営みが、俺の心を温かく満たしていった。




