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第三章:突入

息を殺し、低い姿勢で扉を押し開け、持っていた短剣を下から掬い上げるようにスナップを利かせた、高速の投射となる。

 聞こえたのは肉に突き刺さる柔らかな刺突音ではなく、硝子が飛び散る甲高い破砕音。瞬間、左右から挟み込むように短剣が首を狙って力任せに振り下ろされる。

「なっ……!!」

 一瞬の不意打ち。左手で持っていた短剣で、ギチリと互いに噛み合うように受け止めた後、振るわれた上からの力に抗うように、上に上に体を持ち上げ、壁側に無理矢理押し込んでいく。

「構うな!そのまま突っ込んで来い!!」

 武器を滑らせて弾き、左肘で鳩尾、がら空きになった顎に右掌底、自身を支える力すらも失って姿勢が崩れるところに、両手で頭を固定して躊躇なく顔面に膝蹴りを打ち込む。

 顔を隠していた仮面は粉々に割れ、露わになった男の顔は、血塗れで膝から音を立てて崩れていく。

「貴様!!よくも団長を……!!」

 後ろから激情を露わにした仮面を被った人物、声と体型からして女は我を忘れたのか、直線的な動きでこちらを仕留めようと、短剣を構えて突進してくる。

 直線的な動きは「私をどうにでもしてください」と言っているみたいで、哀れで、滑稽であった。

 突進してくる動きに合わせ、左足を軸に低い位置から胴体を穿つように放たれた回し蹴りは、容易に壁にまで届いた。

 受け身を取ることも出来ず、強かに打ちつけられた体は、その反動のまま壁にもたれかかるようにゆっくりと崩れていく。

 喧騒から静寂への移り変わり。あの不意打ちには驚いたが、蓋を開けてみれば左右から見え見えの不意打ち。こっちが本業の俺にこれは余りにもお粗末な計画ではないか?せめてやるならばもっと力のある奴がいてもおかしくはないと思っていたが。

 残りの部屋もある程度確認し、安全を確認したところで、窓から身を乗り出して階下に居るクリミナに合図を送る。既に気付いていたのか足取りは軽く、階段を上ってくる足音が聞こえてくる。

「あなたにしては少しばかり遅かったんじゃない?」

「放っておいてくれ。油断せず、安全にやること自体悪いことではないだろ。それよりもこいつらを一度縄で縛るぞ。大切な情報源だからな」

 来るなり槍を壁に立て掛けて、フラフラと部屋の中身を物色するように見始める。

「おい、聞いているのか?」

 つまらなそうな表情は変わらず、部屋の中央、窓側に位置する仕事用の大机に腰を掛け、脚を組み始める。

「聞いているわよ、あなたの言うことは、ね」

 口を開けば毎度皮肉が飛んでくるのもこれもまたいつも通り。戦闘技術は素晴らしいの一言だが、人間面がこれだ。俺も人のこと言えないがな。

 右から左に素通りしていく皮肉を涼しげに流し、改めて二階がどういう構造なのかを目を通す位に見ていくことにした。

「お前はその二人が起きないように見張りつつ、縄で縛っておいてくれ。俺は待ち伏せポイントの確認をしてくる」

「いつ戻ってくるのか私たちには分からないんだから、早く済ませてよね」



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