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1-23.初ダンジョン攻略

延々と落ちていくような感覚にいつの間にか意識を失っていた。

ふと、その浮遊感が消え地面に衝突するような感覚がなくついに死んでもしたのかと思うと途端に意識が浮き上がってきた。


「あのメイドが、絶対に泣かしてやるからな!」


「まぁまぁ、押さえて押さえて。」


長く落下していたからなのか起き抜けだからなのかふわふわとした微睡みの中で身体を起こすと苛立たし気にポッカリと空いた天井を睨みながら唸るミズホとそれを苦笑し宥めるエミリーの姿を見つけた。


俺が起きたことに気付くとそれも止め軽く一言二言、何気なく身体の無事などを聞かれるも特に以上もないと、その程度の言葉をミズホと交わす。


「…んー、ダメです。念のためと屋敷に入ったときから種子を撒いて置いたのですが妨害されているのか除去されたのか反応なしです。」


そんなことをしている間、ミズホの代わりになるように空をボーッと見上げるエミリーから意外な言葉が飛び出る。

どうやら屋敷に入ってからなにかしていたらしいがそんなのいつの間にしていたんだ。


「なにそれ、エミリーってそんなこと出来たのか?」


「はい。ですがそうですね、私から聞くよりもそちらで確認してみてはどうでしょうか?」


驚きポツっと言葉が飛び出るもそんなこと気にしていない風に優しく微笑む姿は天使なのではないだろうか、この子。


徴を指されるとそういえばまだ見ていなかった事を思い出しエミリーのステータスを確認してみる。


名称:樹霊(エンシェントドリアード)

Level:48

Health:2856

mana:862

AD:98

AP:778

AR:89

MR:569


skill

passive skill:樹霊

[abilitypower(+0.72)の数値だけ元々のHealth regenに加えて毎分Healthを回復、状態異常の時間を短縮させる。高位の木霊が持つことが出来る。]


active skill:世界樹の祝福

[このスキルの保持者は魔力を持たない植物を支配、指揮する事が出来る。このskillは使用中はmana regen(-0.4)する。]


〈UNIQUE〉 passive skill:世界樹の巫女

[祝福により支配した植物を媒介に発生した種子、花粉などの視界を得る。また種子などが取り付いた対象のmagic Resist値が保持者のability power(+0.05)以下の場合、寄生させ種族に関わらず[世界樹の祝福]を付与することが出来る。

木属性の魔術、呪具の使用時本来の反映率に加えLevel(+0.8)%増加させる。]


「なんだこれ…。これでなんであんなのに捕まってたんだ。」


ミズホもこれから伸び代がある分控えめではあったがエミリーもレベル云々は抜きにしても中々におかしな能力をしているように見える。


若干魔法寄りなのはさておき、色々と数値がぶっ飛んでいるように見える。

冒険者も同等のステータスになるならまだわかるかもしれないが大半の冒険者は上限の関係でエミリーほどのレベルまで上がらないのもあるのだが。


それと初めて見るUNIQUEの文字、意味通りなら特殊な固有スキルって事になるがレアなんじゃなかっただろうか、こんな簡単に見つけてもいいのか?


「恥ずかしながら、何故か海の水を浴びた途端に体に力が入らなくなりまして…。」


そんなぶっ飛んだステータスしてるのになぜ港ではあんなのに捕まってるのかと思えば、そういえばだいたいの植物は塩とかに弱いんだっけ。


「あー、なるほど。そこら辺も植物なんだ。」


自分の特性というか、エミリーの身体について本人は自覚がないのかこちらの言葉に小首を傾げている。


樹霊って名前なくらいだしどういう要件であれ、こちらに出てくるまで自分の住んでいた土地から出たことがないんだろうな。


「なにを駄弁っておるか、この場に居ってもなにかあるでもないそろそろ行くぞ。」


「それにしてもなんか一昔前のRPGみたいなダンジョンだな。」


あまり喋りすぎていたためか、先程から苛ついているミズホは焦れてこの部屋から一本だけ伸びる道へ先に向かって行ってしまった。


俺もようやく覚めてきた頭をすっきりさせようと軽く振り、立ち上がるとミズホの後を追った。


通路の方へ出てもさっきいた部屋から想像した通り、このダンジョンの作りは昔のRPGゲームなんかでよく見た天井や壁、地面など全てレンガのような物で作られた一般的なもの見える。


「アヤツも言っておったが施設としての利用がメインなんじゃろう。ゴツゴツとした足場の悪い道よりも整地された道の方が良いんじゃろうて。」


ミズホも言うとおりレンガ同士しっかり組まれているのか歩くときに躓く事もなく明かりもまったく燃え尽きる気配のない松明がしっかりと先まで照らしていてマップさえわかっていれば通路としては便利そうである。


ちなみにミズホに預けていたマップはここが支配した領域で無いためか全体図を見ることは出来なかった。

ついでにオートマッピングなんかの機能もあったはずだが今はその機能も停止しており真っ白な紙切れになっている。


「それにしては雑魚ばかり配置しおって雑にも程があろう。」


しばらく進んでいたがほとんど一本道で所々に曲がる角や魔物の湧く部屋なんかはあったがコレも二人が強いせいもあるのかほとんど瞬殺に近い形でスルー。

あのメイドさんは意味ありげに攻略してくれとは言っていたがほとんど障害になっていない以上、若干の申し訳無さがある。


「…あれ、なんか此処通ったことあるな。」


「いつの間にか来た道を帰らされていたみたいですね。」


さらに歩いているとふと、一つの部屋に辿り着いた。

特に他の部屋と代わり映えもなく魔物も湧く様子がない。

というか、戦闘した痕跡が若干残っているのを見てようやく俺たちはいつの間にか来た道を引き返していた事に気がついた。


「まったく小癪な…、この程度印の一つでも付けておけばどうにでもなるというに。」


ミズホは相変わらずご機嫌斜めな様子で扇子の端を尖った犬歯で噛みつつ低く唸っている。


やることはやってくれるのであまり気にしてはいないが会ったばかりのメイドに対してなんであんなに怒っているのかが謎である。

だからといって聞ける雰囲気でもないため背後にグルグルとした殺気を感じつつ前に進むしかないわけで。


「この角だな。気付けば楽なもんなんだが実際にされるとめんどくさいな、これ。」


「認識阻害の一種じゃからな。一本道で無ければ延々と彷徨うこともあるからのぅ。」


ミズホが曲がり角などに簡単な爪痕を付けていると意外と簡単に問題の場所は見つかった。

同じような道の続くダンジョンだからこそなんだろうが方向転換させられても気づかないのはめんどくさいのに変わりないが意識して対策すれば特に問題はなさそうだ。


実際オートマッピングも使えないのは探索者を迷わせるためにわざとそういう術でも使って迷いやすくさせているんだろう。


「つまり、此処から先はもっと難易度が上がっていくと。」


罠を抜けてようやく少し進んだ先に待っていたのは本番はここからだと言わんばかりに分かれ道である。

もちろん、どっちに行けば正解なんてのも書いてあるはずもなく此処から先は迷わせますよと言っているようなもんである。


「では、分岐のある場所は私がチェックしておきますね。」


「頼む。じゃあとりあえず虱潰しに行くしかないか…。」


エミリーの植物はこういうときに便利でただ目印を付けるだけならミズホみたいに傷付けた方が速いのだが、器用に矢印なんかまで数分で形作れるので迷いそうなとこでは便利だ。


「でだ、明らかに物騒な設備を見つけたわけだがなにこの邪○の館。」


数分ほど歩いて辿り着いたのはなにやら雰囲気が一変しての薄暗い部屋。

あからさまに実験でもしてましたと言わんばかりに謎の養液で満たされたボトルや人一人入れそうなほど大きなカプセルがいくつかパイプやコードで繋がれている。


イメージはそのまんまどこかで見たことある邪○の館。

違うといえば電源が入っていないのか明かりが一つも付いておらず中央の制御盤らしきものをイジってもまったく反応がなかった。


「見ての通りであろうな。稼働はまだしておらんようじゃが」


「とりあえず、さっきの分かれ道まで戻るか…。」


見ている感じだけだと特に危なそうなものもなく隔離されるようにある照明の落とされたカプセルのいくつかは中身が入っているがただでさえ薄暗い部屋の隅に置かれているためなにか入っている程度で中身はよくわからなかった。


ここが罠というわけでも無さそうで探索もそこらに部屋を出ることにした。


「なんか思ってたより罠とかないんだな。もっと手が込んでるもんだと思ったけど」


「代わりに出現する魔物に混ざり物らしき姿がおったがの。配置にも粗が目立つ、遊んでおるようでよけと癪に触る。」


「そうですね。幾つか方向転換させられましたが直ぐにバレる程度の幼稚なモノですし。」


その後も分かれ道があったり気がついたら反転していたりと似たような罠が多くあるが一度あるとわかってしまえば似たように目印を付けつつ歩いていればどうということはなかった。


ただ魔物に関してはよく分からないものが増えた。

強さはまちまち、ミズホたちが苦戦するレベルの魔物がいたと思えばいきなり暴れだして同士討ちを始めたり、これまである程度の広さのある部屋にいたのが通路の途中で居座っていたりとまるで好き勝手に動き回っているみたいだ。


「んで、また分かれ道と。」


「ふむ…こちらじゃな。」


ミズホ、迷わず左を選択。

しばらく歩いても行き止まりはなくまた分かれ道に着いた。

その次、また次と道中には相変わらず魔物や見てわかるような罠があるがハズレの道に当たることはなく道がわかっているとでも言わんばかりに迷わず進んできている。


「お、まただ。なんか道わかってきてないか?」


あまりにも迷わず進むものだからとなぜわかっているのか聞いてみるとその場に屈み、いくつかのビー玉程の氷の球体を作り出して床に置いた。


最初は意味がわからなかったが置いた全ての氷の玉はバラバラに転がることはなく、その場で静止するか来た道の方向に向かって真っ直ぐ転がり始めた。


「ほれ、ダンジョンとしては簡単な部類じゃ。後は道に沿って上を目指すだけでええからの」


歩いているだけではよくわからないがどうやら坂道になっているようでずっと歩き詰めにも関わらず階段の一つもないのはどうやらこのまま道伝いに出口に繋がっている構造だからと、そういうことらしい。


まぁ、だからなんなんだと言わんばかりに先が見えないわけなのだが。たまに休憩しているとはいえ結構な時間歩いているはずなんだが。

これ、あなぬけのヒモとかキメラのつばさ使ってパーッと帰れたりしないんか。


「また大きな部屋に出たな。 魔物すらいないみたいだけどここは――っうわ?!」


これまでのこじんまりした部屋から一変、学校の運動場くらいの広さのある大きな部屋に出た。

あからさまになにかあるな、と思わせる部屋だとわかりつつもこれまでと違い魔物がいないこともあり足を踏み出した途端、ぐぉんと低い唸り声のような音とともに床が動き出した。


動こうにも魔術かなにかで足がまったく言うことを聞かないため移動する床から逃げることもできず無軌道にグルリと部屋を一周して元の場所についた。


「まためんどくさいものを…、」


移動する床なんて今どきのRPGでも中々見ないが実際されてみるとたまったもんじゃないのがよくわかるな。

いくら広いとはいえ出口はそこに見えているのに一向に辿り着かないのは疲れる。


「行く先が見えぬ以上、総当たりしかあるまいよ。」


「だよなぁー、」


愚痴を言ったところでしょうがないのだがこの距離を踏破しようと思ったらすごくめんどくさい。

ゲームなんかだと上から見れていたり移動する方向が書いてあったりで割りと逆算的に出来るんだがそれも出来ないのがとてもツラい。


幸いなのは床が大きめのブロック状になっていてこのブロックで進行方向が決まっているから選択肢がわかりやすいってくらいだろうか。


一応試しに跳んで一個飛ばしに乗ってみたり斜めに移動して見たりもしたのだがその場合は次の止まり地に行く途中のブロックであっても強制的に初期位置へ戻されるのはわかった、ズルは禁止と言うことらしい。


「ようやく終わったー!」


試行錯誤の必要もなくズルも駄目だというので後は試行回数しかなくほとんど直感で延々と移動する床に揺られながら数時間、ようやく出口まで着いた。


「残りは一本道だと良いのですが、」


「そんなに優しいヤツなら最初からこんな場所には落としたりはせんじゃろ。もう一、二つほどは覚悟しておいた方がよかろうよ。」


さすがの二人も体力が無尽蔵というわけではなく、若干披露の色を浮かべつつ後少しだろうと信じて進む。


「分かれ道か?でもこれってどっちも出口みたいな、」


ようやく出口らしき道に差し掛かった。

だが道は二股、どちらも罠の可能性もあるが見える先はどちらも同じ造りの扉が佇んでいる。


「ふむ、これが最後であろう。主殿が決めてくれるか?」


と、どちらに進むか。

決めかねているとこれまでずっと右へ左へと選んでいたミズホが最後の最後になって俺に選択肢を投げてきた。


「えぇ、なんで俺が。」


「深い意味は特にあらんよ。ワシが選ぼうが主殿が選ぼうが変わらんのであるなら、使い魔が主を差し置いて出しゃばるのもおかしな話である、というだけじゃ。」


当然の疑問ではあったのだがそういえば基本的にミズホやエミリーに丸投げで俺は何もしてなかった気もする。

つまり最後くらいは自分でなんとかしてみせろと、そういうことだ。


見ている感じ、どちらがなにか変わっている様子もなく何の変哲もない扉に見える。

あからさまにどちらかは罠だろうがここから扉までの距離も分かれ道からはっきり見える程度にはほとんど変わりがない。


本当にどちらを選んでも確率が二分の一なのに違いは無さそうなんで、適当に選んでみた。


「じゃあ、こっちで。」


選んで扉を開けてみるが先は真っ暗、何処に続いているかもわからないが扉の先には光が見える。


このまま行かずにもう一方も見るべきだろうかと思ったが残念なことにこちらの扉を開けると同時にもう一方の扉は消えてしまった辺り用意周到というか狡賢いというか。


どの道どうしようもないので明かりを目指して進んでみるしかなった。


「……ふむ、最初からのようじゃな。」


その結果である。

明かりを抜けた先にあったのは見覚えのある個室。

レンガ造りで囲われた小さな小部屋。

つまりは一番最初に俺たちが落ちてきた部屋に戻されていたのである。


マジかよ…。

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