1-13.西方首都、到着
「いやー、ホントに助かったよ。この恩は一生掛けても返すからいつでもどこでも、ドンと頼ってね。」
つい先程目を覚ました少女は自分が負ったはずの傷もなぜかほとんど回復しておりすでに背から居りて元気に自分の横をちょこちょこと歩いている。
自分の胸ほどの背しか無いこの子はフタバ・サクラというらしい。
名前は日本人っぽいがアメリカ人びっくりの綺麗な金髪ブロンドに翡翠色の瞳をしているためとても違和感がある。
逆にサクラから言うと一部を覗いて俺みたいな黒い髪に黒い瞳をした人間は珍しく、彼女も長の一族以外には見たことがなかったらしい。
だが話はそれだけで彼女も素性については聞いてくることはなかった。
先頭を行くローグ同様冒険者はこういった人らなのだろうか。だとすれば助かるんだが。
「あ、そうだ。シュウくん、キミは人間なのに魔物使いなの?」
「サモナー?」
「獣じゃなくて魔物を使う人達の事だよ。ちなみに獣使いはテイマーって言うんだ。」
文字通りというか、意味どおりのようだ。
確かに話を聞くとその通りではあるが認めていいものなのだろうか。
一応、魔王になったらしいしあんまりそういうバレそうな話をするのはいかん気がするのだが。
「…まぁ、いっか。それじゃああの妖狐さんがあっちに残った理由も聞かない方が良さそうだねー。」
下からジッとこちらの瞳を見定めるように、見透かすように見つめて来る。
確かに彼女は自分より小さく幼いように見えるがなぜか彼女に見つめられていると首の後ろがゾワゾワする、なぜか言い知れぬ不安が襲ってくる。
だがそれもすぐ無くなった。
興味を無くした猫のようにスッとこちらを見つめる瞳は外れてしまう。
彼女もあんな場所に魔物を引き連れて現れた自分になにか思う所はあるのだろうが言及はこれ以上することはなかった。
様子から見るに意識的にこちらへの疑問なんかを気にしないようにも見える。
しまいには自分から離れて傷ついた冒険者たちを励ましに先頭の集団の中へと消えてしまった。
ふらふらとしている姿は先程洞窟で見た気迫とは全然同じように見えないが、やはり彼女は見た目よりも気をつけて当たった方がいいのかも知れない。
一応自分はもうあちら側とは敵である以上、必要以上に関わる事もしない方が良いだろうしこれはこれで助かった事になるのだろうか。
そんなこれからの不安なども考えながら集団から少し外れつつ見失わないよう、ゆっくりと冒険者たちの後を歩いてく。
……しばらくして街へ着いた。
「ようこそ! ヴァンブレイスレンへ!!」
陽気なテンションをさらに陽気に楽しそうにサクラは街の入り口で、まるで自分の家に友達を初めて連れ込んだ時のように俺を出迎えた。
西方首都【ヴァンブレイスレン】
そう呼ばれているこの街は四大都市で唯一レイクラフト側に繋がっており貿易などを主とした沿岸都市。
街の中央から西側は商業などが盛んでそちらには冒険者が使うギルドなどもあり、情報や宿に鍛冶屋、日用品など生活に欠かせない物はだいたい西側に揃っているらしい。
逆に東側はレイクラフトから来た住民たちが多く、一部だけではあるが貧民街や闇市など、そしてそれだけでなくレイクラフト独自の魔法を研究する施設などがあるらしい。
らしいというのは全てサクラから説明を受けたばかりでまだ街を見て回ってすらいないからである。
街並みは見ている感じだとよくあるRPGなんかで見る中世西洋辺りの街並み、なんかよくゲームで見る風景過ぎて若干残念ではある。
だが街の入り口からでも東側にある異様な建物は目に着いた。
東の端っこの一角、ここからでも見える程大きく西洋風な街並みに不釣合いな現代風建築。見たままを伝えるならあれは多少知ってるものと違う雰囲気はするがビルじゃないだろうか。
街の一角を占拠するように建つ幾つかのビル、周りの建物が低いせいか高く感じはするが普通の5~6階建てくらいだろうか。
場所が場所なだけになぜあれがこんな場所に在るのかも不明ではあるが、それより俺以外にもこの世界に人間が、しかも同じような時代に生まれた人間が来ているということだろうか
「やっぱりキミも気になる? でもあそこには近付かない方が良いよ。危ないから、」
ジッと見つめ考えているとふと、サクラから声が掛けられた。
見慣れているのかビルには目もやらず負傷者たちが搬送されている所を眺めている。
「そりゃあ。なにかあるのか?」
「あの建物、レイクラフト側の魔術研究のための施設だからね。他はそうでも無いんだけど、あの辺は変な人も多くて街の人ともよくモメてるしなにかと物騒なんだ。」
そういえば東側はレイクラフトの人間が多く移り住んでる区域が多いんだっけ。
つまりは一部のレイクラフトの人間と一部の街の人間は折り合いが悪くていざこざを起こしてるって事か。
気にはなるがしばらくはあちらにも関わることはないだろうと、とりあえず結論付け意識的に視界から外し見るのを止めた。
「みんなもう大丈夫みたいだし、それじゃボク達は行こっか。」
そんなことをしている間に負傷者たちはみんな何処かに運ばれていて、後には誰も残っていなかった。
サクラもこれ以上残る必要もないと思ったのか、こちらに声を掛け先に進んでしまう。
俺もそれを追って足を進める。
異世界初めての街というのはいったいどういうものなのだろうか。
少し街を歩いている感じ意外だと思ったのは獣人や亜人が多い事だ。
レーラの説明を聞いていたときは差別なんかはされてないがあまりよく思わない人も多いって話だけど。
「あっちとよく交易もあるしこの街、獣人さんたちとはけっこう仲良しなんだよ。」
なるほど、異文化交流も多いからここはあんまりそういうの気にしないのか。
「って、あれ…?」
「キミの視線を見てればわかるよ。まったく、こんな可愛い子が目の前にいるのに失礼しちゃうな。」
そういうアナタはぷりぷりとかわいく怒っている様子が後ろから伺えるが、俺を先導するために前にいてまったくこっちを見てないのになぜわかるのか。
「ふふふ…コツがあるのだよ。ってわけで着いたよ、ここがこの街の統括ギルドだよ。」
思考を読むのは止めていただきたい。
あれか、冒険者って実はエスパー集団だったりでもするのか…。
意味深な笑みを浮かべながら一つ大きな建物の前で足を止める。
「じゃあ、ボクはダンジョンのこと報告しなくちゃだからちょっと待っててね。奢ってあげるから適当に飲み食いしててもいーよ。」
ようやく着いたらしい彼女はようやくこちらを振り向き笑みを浮かべると中へと案内してくれる。
彼女はまぁ、今しがたダンジョンであったことは人間側でもけっこうな事件なんだろう。
受付横にいる中々に重装甲な人たちと一言二言交わして奥の方へと消えていってしまった。
ギルドの内装も建物の大きさに合わせて中々豪華じゃないだろうか。
ギルドとしての受付だけじゃなく見たところ一緒に宿や定食屋なんかも営業しているのがわか…る……??
「……あれ、よく見たら全部英語だ。」
ゲームなんかもそんなもんだったから違和感とか忘れてたけど道中あった店の名前もほとんど英語だったな、なんでだ。
そう思った所で誰も答えてくれるはずもないし聞くわけにも行かないか。
今はわざわざ新しく勉強しなくてラッキーくらいに思っておこう。
さて、手持ち無沙汰になったわけだしなにか食べながらサクラを待っているとするか……。




