第1話 森を歩く男と森にいた悪魔
登場悪魔&天使紹介
スウェーデン。ノールボッテンの白樺の森。
人が全く入ることのない場所。空は薄い色で、地面は真緑。
夏になるともう緑が一面を覆いつくす。
苔、地衣類、シダ類。折れた白樺の木を土台に緑の葉が乱雑に芽吹いている。
夏と言っても平均気温は16度。涼しい。快適と言っていい。
だが、歩く道は全く快適じゃない。
人が通らないということは、人が通らないような土地だからという理由がある。
ではなぜそんな場所を一人で歩いてるかというと、
悪魔に会うためだ。
その悪魔は、あらゆる病を治す薬を持っているという。
図書館で読んでいた薬の本に書いてあった。古文書のような全く古い本に。
普通なら、そんなものは信じない。普通ならそんなものを真に受けない。
しかし、俺の娘の病は普通じゃなかった。医者も学者も匙を投げた。俺も聞いたことが無いし見たことが無い。どれだけ本を調べても、全くわからない。
そして、私はこのような暴挙に出たわけだ。
歩く。
森を。あるかもわからない悪魔の住処を探しながら。
ここに来るまでに、幾つかの小屋を見つけた。
しかし、それは大昔に人間が使っていたらしきものだ。
地面に半分埋まって、苔に覆われた小屋。
私はその中に入ってみたが、植物に埋め尽くされ、何も見つけることはできなかった。
本当にあるのかどうかわからない。しかし、もうこれぐらいしかできることは無い。
日が沈まない。ここは白夜だ。いつまでも夜にならない。
いつまで歩いても永遠に時間が進んでいない感覚に陥る。
だが不思議と帰ろうという気持ちにはならなかった。
帰ったとて、何も変わらないからだ。
一休みしようかと思い、ちょうどいい石を椅子に座ろうとすると、葡萄の香りがした。
森のさわやかな青い葉の香りとは全く違う、香水のような甘ったるい匂い。
私は休むことを止め、再び歩き出す。
すると、谷の奥、地面には異質な丸い楕円の石が敷き詰められたように散らばっている場所に出た。
その先には、四角い形状、自然には無い形の印象。人工物。崖を背にし、
妙にこぎれいな、石造りの小屋があった。
当たりは草が刈り取られており、薪が積み上げられ、格子状の骨組みに葡萄の蔓が巻いていた。
明らかに生活の痕跡がある。が、ここに来るまで、全く誰かが歩いた痕跡が無い。
奇妙な雰囲気。疑問はいくつもあるが、考えてもしょうがない。
俺は何も考えず、戸を叩くことにした。
「すみません。誰かいませんか。」
「はいはい、今出ますよ。」
ドキッとした。まさかこんな山奥に誰かいるとは、いや、それを探しに来たのだが、
中から出てきたのは、女だった。灰色の歪んだ髪。赤い目。真っ白い肌。バーテンダーのような服。
何もかもがこの場所に不釣り合い。美しい女だが、不気味だ。
「ここに、悪魔が住んでいると聞いて、探しに来たのですが、貴方は悪魔ですか?」
単刀直入。細かい駆け引きをやってる時間は無い。私の目標をそのままを聞いた。
「私の名はレキエス。酒の悪魔だ。何の用だい?」
あっさりと悪魔だと言われてしまった。
自分から聞いといてなんだが、貴方は悪魔ですか?そうです悪魔です。と言われると、
そうなんですね。とは言い難いものがあるが、話を進めるためにそこはもう疑問に思わないことにした。




