『必然に決まっているでしょう』15
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「さて。何からお話しましょうか」
中庭に着くなり、結城さんが呟く。
椅子を引いて「どうぞ」と微笑むスマートさに、初めの頃は慣れずに戸惑ったものだ。それが今や「ありがとうございます」と自然に言え、スッと着席出来る。
慣れって……怖い。
「まずは花音さんの質問から?」
「えっと……」
「順序立てて話さなくては、という遠慮は無用です。聞きたいことをそのままに」
薄茶色の瞳が細まった。
そう言われても……。頭に浮かぶのは、ノートに箇条書きした様な文ばかりで。
二歳児のなぜなぜ期状態。本当にそれでも良いのだろうか……。
「えぇ。良いですよ」
私の心を見透かした結城さんの言葉。
いまさら驚くことではない。彼は前からこういう人だった――。
「それは“そういう性質”だから?」
「はい」
「結城さんも子供の頃……ありましたよね」
「はい、勿論」
「もしかして私達……会った事……あります? ずっと前に」
私の質問に結城さんは笑った。
「一度だけ」
ぶわっと鳥肌が立った。やっぱり夢じゃないんだ。
「私、死にそうでしたよね!? 事故で! バスが落ちちゃって……えっとそれで結城さんが出て来て、あんな所に! ミツキさんも!?」
言葉が先走り、声が上擦る。
些細な言葉一つでいい。あの日あの時、結城さんは他に何か言っていたかもしれない。自分が覚えてないだけで……もっと、何か――。
私は、二度と思い出したくない記憶の一部分を、砂場でトンネルを掘る時みたいにかき出そうとしていた。
でも思うようにいかなくて。高揚感が増すだけで、記憶の先は見えない。トンネルは開通せずに崩落した――。
「まさか、そんなに喜んでいただけるとは……。あの時は時間が無かった上に、私も未熟でしたからね。あれが精一杯だったんですよ」
結城さんは目を伏せ、困った様に笑う。
そして、私が覚えている事が全てなのだと教えてくれた。
穏やかな口調だけど、「その先は聞くな」と言われた気がする。
未熟だったと笑う結城さんが寂しそうに見えて、私は口を閉じた。
ナユタ君が苺とブルーベリーが入ったティーソーダを運んで来たのをきっかけに、結城さんは話を変えた。
「他には?」
「えっと……」
結城さんはホットティー。ナユタ君は私と目が合うと、自信有りげにニッコリする。リクエストした訳じゃなかったのに、アイス――それもティーソーダを持ってきてくれるとは……。
喉が乾いていたから冷たいものが飲みたかった。ソーダの軽い刺激は、心を一度落ち着けるにはピッタリだと思う。
小さな店長さんを侮ってはいけない……。
「何聞いてもビックリする答えしか返ってこない様な気がしちゃって」
「そうでしょうね」
「事故のショックで記憶を失ってたのは分かるけど……そこに結城さんが絡んでたなんて、なんかもう……不思議とかそういうの通り越してません?」
「……」
結城さんが紅茶を飲む姿はいつ見ても綺麗。所作の一つ一つに、つい見惚れてしまう。
私にガン見されているのに気付くと、結城さんは瞬きを数回。
先を促される。
「私、結城さんは超有能な霊能者なのかな? って思ったんですけど」
「霊能者。面白いですね。何故そうだと?」
「前に、結城さんが女の人と駅にいたのを見て……でもその人」
私は、ここに来る前に知った女性の話をした。




