『必然に決まっているでしょう』13
――話題。とにかく話題を変えよう。
急いで双子への贈り物を取り出す。
「これね、ナユタ君とセツナちゃんに渡したくて」
「……僕達、に?」
「花音、から?」
二人は顔を見合わせて、一瞬戸惑った。
私も戸惑う。
これはまさか、ナースステーションにお菓子を持っていったら「規則があるので……お気持ちだけ」的な流れなの!?
「もしかして、結城さんに駄目って言われてる?」
「え!?」
「ここのオーナーって、結城さんなんでしょ? 前から、そうなのかな~って思ってたけど聞くタイミング無くて。さっきのナユタ君の言葉でハッキリしたよ」
「紡ってば意地悪ね。そんなコトまで内緒にしてたの?」
「多分、言わなくても分かるだろうって思ってるんだと思います。私の事よく知ってる人だから……」
「アラ! ご馳走さま」
はい? 何がです?
「その通り。花音さんも私のコト分かってるじゃないですか」
「ひぇっ!?」
前触れもなく背後に現れた結城さんの声に、私は文字通り飛び上がった。
ドアベルは鳴らなかった。ドアが開いた気配も、人が近付いてきた感じも無かったのに。
結城さんは一体どこから……?
「知りませんっ。まだ全部教えて貰ってないです!」
語尾強めで言っても、結城さんはニコニコ笑ってるだけだ。ダメージ与えるどころか、これ、絶対喜ばせてる――。
「受け取っては駄目というルールはありません。二人とも、花音さんにお礼は?」
(あ。しかも話そらされちゃった)
「ありがとうです! 花音さん!」
「ありがとう。嬉しい」
パッと笑顔になった二人に安心する。どうぞと目配せすると、同じタイミング同じ動作で開け始めて、双子のシンクロ率にちょっと感動した。
星の形がナユタ君、月の形がセツナちゃん。小さなアメジストが一つはめ込まれたシルバーのピンバッチ。
高い物ではない。野口英世のお札を二枚出したら三種類の硬貨数枚になって戻ってくる、私のお財布に優しいお値段の品。
それなのに、四人の顔は何カラットもあるダイヤでも見た様な表情になった。
「あの、そんなビックリされると私も反応に困る」
「凄いわね! 花音ちゃん」
「はい?」
「何故これを二人に?」
「なんで? いや、可愛いからナユタ君とセツナちゃんに似合うだろうなって思っただけで」
「それだけで選べるって……。ちょっと紡! この子やっぱり凄いわ」
凄いと言われ、ここまで驚かれる意味が分からない。「それだけで選べる」とはどう捉えれば良いんだろう?
「嗚呼……まったく貴女という人は……。予想もつかない事をする天才ですね」
結城さんには溜息まで吐かれてしまった。
「私は何かやらかしてしまった、と?」
「褒めてるんですよ」
ナユタ君とセツナちゃんは、お互い手伝い合いながら襟にバッチをつけていた。控えめながらもはしゃいでいる様子に、プレゼントした事は、間違っていないんだと感じる。
「ナユタとセツナに石を与えられる者は、極僅か、限られた人数しかいません」
「スワロフスキー使ったアクセサリーなんてどこにでもありますけど……。この子達はあまり人付き合いが無いんですか?」
「花音さん、本当に何も考えず手に入れたのですねぇ。アレは本物の天然石ですよ」
「まさか。お店の人はスワロフスキーって言って……」
「アレを作った奴も気になるけど~……とりあえず今は、花音ちゃんがどんなコなのか知りたいわぁ。教えて?」
「?」
フワッと花の香りが舞い上がった。
それがミツキさんの香水だと気付いた時には、目の前に美人顔。
彼女は、ねっとりと私の唇を舐めた――。




