アリッサの企み
街に入って1番に行ったのが冒険ギルドだ。
ララと2人で入った。数人は遅れてから入って俺らを見守る形だ。
やはり酒の腐った臭いがした。
「お!にいちゃん生きてたのか、てっきり死んだと思ってたよ。もう報酬の金は払えないぜ。魔術士が嫌々払った後だからな」
「ああ、死んではいないよ。それに金の事はいいよ。帰る途中で離れ離れになった仲間に会えて楽しくやってたよ。それであの時の魔術士たちはどうなったかな・・・」
「ドラゴンに食べられたよ。数日はてんやわんやでギルドの商売も出来ない状態だったな・・・忌々《いまいま》しい魔術士が・・・」
ララがテレパシーで知らせてきた。
『大丈夫です、嘘は言ってません。信用できる人物です』
「それで重要な話があるんだ。人が居ない所で話したい」
カウンターに金貨が詰まった袋を置いた。
中身を見て驚いている。
カウンターの上に【外出中】の立て札を立てて、こっちに来いと指で知らせてきた。
2人して黙って後に付いていった。
「それでどんな話なんだ」
「あのドラゴンを見て知っているから言うが、あれは俺らの仲間だ。おっと!ここを滅ぼそうなど考えてないぞ。ここよりいい暮らしが出来る領地へ誘いに来た。それは俺の領地だ」
「ただ者でない事は分かっていた。あのドラゴンの仲間だとは予想もしなかったなーー。ただ信用が無いのに、大事な一生を掛ける価値がどこにあるんだ」
「ならば、そっちの代表を俺の領地に招待しよう。その結果で考えてもらって結構だ」
「分かった。これでもギルドマスターだ。代表として今から行こう」
なんだ。今から行くのか・・・それにギルドマスターなのか・・・仕方ない。
「いいだろう。今から連れてゆくよ」
「少し待ってくれ。仕事の引継ぎを済まして来るから」
そう言って出て行った。
なんて行動力の早い男だ。
そして20分後には、ちょっとした装備でやって来た。
カウンター横を通った時には、女性職員らしい人が「いってらっしゃい」と声を掛けてきた。
外でメンバーと合流して話し合った。
「それじゃーミカエルが、連れて行ってやってくれ」
円盤型移動機を1機だけ手渡した。
薄くて軽くて丈夫に出来た乗り物だ。
横の取っ手を引張れば、ロープが伸びて肩に掛けて持ち運びもできる品物だ。
それを手渡した。
ミカエル「こんな仕掛けがあったのですか・・・」
肩から背負った感覚を、試すように振ってみせていた。
「まあな・・・門の外で人が見てない事を確認してから乗って行くといい」
「分かりました。じゃー行きましょうか」
ミカエルとギルドマスターは、2人して門へ向かって歩き出した。
「まあ、宿屋へ行ってから今後について話そうか・・・」
ララ「そうですね」
早い段階で来たせいか、俺ら12人で満員になった。
気さくなおばさんが対応してくれた。
「食事がまだなら食べて下さいな。中々の味で家庭料理ですが安く提供してます。食事は別料金ですが、いかがですか」
1階がレストランになっていて、昼前だから人はまばらだ。
2階に荷物を置いてから、早いが食事にする事にした。
おばさんにもそう言ってから、2階へ上がった。
「はい、領主さまの鍵です」
「ああ、ありがとう」
手に取った鍵は、木札に何本かの溝が入っていた。
番号は1番だ。一番奥がその部屋だった。
え、ここに差込むのか・・・刺したらカタンと外れる音がした。
なんだ。取っ手がないぞ。
ガタガタさせると少し横に開いた。
あっちこっちでも同じ音をさせている。
ああ、この凹みに指を入れて開くタイプなのか・・・
中は殺風景な部屋だ。
窓から大通りが見えた。そして町並みが見えた。
あの辺の建物は、相当に古いし壊れかけた建物まであった。
あれが迷い込んだスラムのようだ。
あ、ここにも犬がいるみたいだ。
凄いスピードで走っていた。
「領主さま、下で皆が待ってますよ」
「ああ、分かった。今行くよ」
食事中は、通訳機を切って話しあった。
「ここの料理、見た目は悪いが味はいいな」
「そうですね」
アンバー「お前ら、街の感想はどうだ」
「ちょっと聞いた話でも、暮らしぶりは大変だと分かります」
「そうですよ。わたしたちが着ている服装は、ここでは目立ち過ぎます。街の人たちは白一色なのには驚きました」
「その理由も分かってます。染色した布が高いのが原因です」
「え!そんなに高いのか?」
「染色した布には、税金が2重に掛けられるそうです」
「そんなバカな」
その話には、皆の顔にもさまざま表情で聞いていた。
驚く者や哀れむ者と、怒りのこもった表情でさまざまだ。
ララ「やはり領主さまが睨んだ通りに、ダメな国のようです。これならいい条件で安全に行けるなら、移住者が大勢集まるでしょう」
アリッサ「わたしも、その意見に賛成だわ。それにいい計画があるの聞いてみる気があるかしら・・・」
アリッサ、何を言ってるんだ。
何か悪い企みがありそうな顔をしている。
『領主さま、禍々《まがまが》しい企みがおぼろげにみえました』
ああ、ララのテレパシーだ。
アリッサは、企みに夢中になって心のスキができたようだ。
その結果、食事が終わりだした頃には、客が満員になったので2階廊下で話し合う事になった。
アリッサの企みは、上手くいくのだろうか・・・
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